馬車での談笑2
「あの、ベクトール様。我が家にはあなたを雇えるほどの資金はありません。」
とリアム父さんが言い切った。
「うん、僕は別にお金に困っている訳では無いから銅貨1枚でも構わないよ。」
それに対してベクトールさんは笑顔で言い返した。私は人を雇ったことも雇われたこともないからどのぐらいの金額が適切かはわからないけれども、子供が庭の草抜きのお手伝いをして、お駄賃としてもらえる金額が銅貨2枚から5枚だったはずだからとても少ないことはわかる。それなのにその金額でも構わないと言っている理由は何だろうか?
「それはさすがに少なすぎます。人を一人雇うには最低でも月に銀貨10枚はかかります。学園に同行させるほどの者となりますと最低でも月に金貨1枚です。」
どうしてだろうかと考えているとリアムお父さんが少なすぎるとベクト-ルさんに言った。
「別にいいのに。」
ベクト-ルさんはどこかしょんぼりとした雰囲気をまといながら言った。どうやら本当にお金はどうでもいいようだ。
「良くありません。ベクトール様はご自身の影響力をよく分かっておられないようですが…」
「あなた、詳細を詰めないといけないんだから後で話をしましょうよ。」
「そうだね。ベクトール様、後で細かいことを話し合いましょう。」
「うん、いいよ。ところで今日はどこで泊まる予定なの?王都までここから馬車で最低でも3日から4日はかかるよね?」
「今日はもう少し行った先にあるロアナの街に泊まる予定です。あの、ベクトール様お聞きしたいことがいくつかあるのですがよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。何?」
「なぜ、私たちが襲われていたあの場所におられたのですか?あの場所は町からも離れており、この道自体が王都とマリビス領の領都マリビアを繋ぐためだけに作られた道で王都かマリビアに行く以外に通りかかることはないと思うのですが。」
オリビア母さんは恐る恐るベクトールさんに聞いた。
「うん?なんでって言われても、緊急救援信号を送ってきたじゃん。だから発信元を逆探知してテレポートで飛んできたんだよ。」
「え、救援信号?そんなもの出した覚えがないのですが。あなた、何かした?」
オリビア母さんはポカンと口を大きく開けていたかとすぐにリアムお父さんに聞いた。
「いや、僕は何もしていないよ。」
リアム父さんも何も知らないようで首を振りながら答えた。
「あれ、もしかしてきちんと正確に伝わっていなかったの?この馬車についてなんて伝わっている?」
ベクトールさんが不思議そうな顔をしながら聞いてきた。どうやらリアム父さんやオリビア母さんも知らない秘密がこの馬車には隠されているようだ。
大魔導士への道 カエル @azumahikigaeru
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