馬車での談笑1

「あの、リアムお父さん。聞きたいことがあるんだけれどよろしいでしょうか?」

「うん?何かな?」

「ベクトールさんって何者なんでしょうか?ベクトール・マリビスと名乗っていたから親戚だと思うのですが、今までの一度も親戚の集まりで見たことがありません。親戚は年に一度集まるのが恒例行事となっていて、絶対に全員が集まってくると小さいころにおじいさまから聞いたのですが…私が覚えている限り一度も見たことがないです。」

「クレアの言う通り、ベクトール様は私たちのご先祖様で様々な…「僕は大したものではないよ。ただ長く生きているというだけだよ。」」

馬車に備えつけっられている魔道具を見ていたベクトールさんがいきなり会話に割り込んできた。

「あの…ベクトール様。あなたはクレアにご自分のことを隠しておきたいようですが、王都につけばばれますよ。ベクトール様の演劇は大人気で毎日行われていますし、多くの書籍が出ていますのでクレアが調べようと思えばいくらでも調べることができます。なので隠そうとしても無駄かと思います。」

「そうか…。」

ベクトールさんはリアムお父さんの説明を受けて少し何か考えるような顔をした。

「まあいいか。それより、僕も聞きたいことがあるんだけれどいいかな?」

「あ、はい。私のお答えできることならなんでも答えますよ。」

「それじゃあ、まず1つ目はクレアさんは王都の学園に入学するんだよね?それなら何でお付きの人が一緒じゃないの?もしかしたら何かあって遅れて出発しているとかかなぁと思って周囲100㎞圏内を探ったけどお付きの人が乗っている馬車や馬を確認することはできなかったよ。」

「はい、ベクトール様の仰る通りクレアは王都の学園に今年の春から入学します。」

「それならなぜ?もしかして人を雇うことができないほどの財政難に陥っているの?もしそうなら僕が個人的に資金援助するよ。」

「いいえ。男爵家としては十分すぎるほどに貯蓄はあります。何なら伯爵家に匹敵するほどです。」

「ならなぜ?」

「それはですね…」

「私が必要ないと言ったからです。」

ベクトールさんの質問にタジタジになっているリアム父さんを見ていられなくてつい声を出してしまった。

「必要ないとは?」

「私は自分の身の回りのことは自分でできるので必要ないといったのです。」

「なるほど…分かった。それじゃあ、僕がお付きの人としてクレアさんについてあげる。」

ひとりでに何か納得するといきなり私の付き人になると言い切ってきた。

「私は必要ないのですが。」

「もちろん。分かっているよ。だから僕はあなたの身の回りの世話はしないよ。ただ、貴族にお付きの人を付けることが許可されている本当の理由のために就くだけだよ。」

「本当の理由ですか?」

「うん、本当の理由。自分で考えてみるといいよ。これに入学前に気が付ける子はあまり多くはないけど、卒業するまでには半数以上が気が付くんじゃないかな。このことに気が付いて行動ができるようになって初めて貴族として生きていけるようになるからね。」

ベクトールさんは温かい目で私に言った。

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