馬車の外では
~リアム視点~
道が陥没していると聞いた時に盗賊が待ち伏せしているのではないかと考えてはいたが、まさか40人を超える盗賊団に遭遇するとは予想もしていなかった。これは死を覚悟しなければならないな。もし、僕が死んだとしても馬車の中にいる限りシャーロットとクレアに手を出すことはほぼ不可能であることが有意の救いかな。確実に最愛の妻と娘には生き残ってもらえるのだから。
「トーマス、悪いが付き合ってくれ!もし生き残れたら特別手当も出そう!」
「旦那様!それならば何としても生き残らねばなりませんね。」
トーマスはこの状況下で生き残れる可能性はほとんどないことを理解しながらも笑顔で返事をしてくれた。
「頼むぞ!馬車を守る必要はないから、盗賊をすべて殺すことだけ考えてくれ!」
「分かってますよ。右半分は私が片付けるので旦那様は左半分を任せてもいいですか?」
「ああ、問題ない!」
話し合いを終え、接近してくる盗賊に切りかかろうとした時、馬車の上から人の声が聞こえてきた。
「今回は間に合ったかな?とりあえずほいっとな!」
あまりにも気が抜ける掛け声をかけたかと思うと馬車を囲むようにいた盗賊が氷像になっていた。どうやら助かったようだ。
「あなたはどちら様ですか?」
馬車の上に立っている初老の男性に声をかけた。
「うん?君はアルミン兄さんのひ孫?玄孫?」
初老の老人は不思議そうな顔をしながら聞いてきた。だけど、アルミンという名前に聞き覚えはない。
「アルミン兄さんとはどちら様でしょうか?」
「あれ、知らない?アルミン・マリビス男爵。第21代目のマリビス男爵家の当主だった人なんだけど。」
「大変申し訳ありませんが、私は知らないです。」
「そっか。」
初老の男性はどこか寂しそうな顔をしていた。
「あの、お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「僕?僕はベクトール・マリビス。そういえば君は?」
ベクトール・マリビスと言えば様々なことで功績を挙げたご先祖様であり、領都にはベクトール様の像が至るところに建てられている。
「私はリアム・マリビスです。あなた様にお会いできて大変光栄にございます。」
「別にかしこまらなくてもいいよ。ところで、リアムは何代目?」
「私は第34代目です。」
「そっか…ねえ、どこに行くの?」
「王都です。娘が王都の学園に入学するので」
「僕もついて行っていい?」
「え!」
「もちろん、手間賃ぐらいは払うからさぁ。」
どうやら、乗せることを渋っていると感じられてしまったようだ。決して渋っているわけではなく様々なことで功績を挙げた憧れの人であるベクトール様が同行しようとしていることに驚いただけなのだが…。
「手間賃なんていりませんよ。どうぞお乗りください。」
こうして、クレアの王都の学園へ入学するための旅路に憧れのご先祖様であるベクトール様の同行が決まったのであった。
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