第6話 おねがい、おっぱい社長!
「まぁ、小さくて可愛い気のあるお屋敷ですね」
「小…さい? 連合国内十指に入る
「嬢ちゃん…どんな大金持ちの娘だったんだよ!!」
「公国内では圧倒的に1番の資産家でしたわね、お父様は一国の主人でございましたし」
「スケールがデカ過ぎて逆にわかんねぇ…」
とはいえ、その内の半分は私が創設した蒸留所を通して築いた財産ではあるのですが。
S. C. 本社はプライム家本邸には大きさ・広さでは遠く及びませんけれど、整然と誂えられた庭や噴水が心を落ち着けてくださり、居心地の良さでは圧倒的に優っております。
プライム家は肥大化したあまり権謀術数なんでもござれの魔境と化しておりまして、8人兄弟の内半分は私が12を迎える前には亡くなっていらした。長男であるカレンドゥラ兄様のお顔に悪戯した異母弟のスペなどは、その翌日に自らの
「シャワーは何方に?」
楽しかった船旅で浴びた潮風も加わって、今の私は汗と砂と血と塩と灰に塗れた…シンデレラ? という風体なのです。人様と面談するのはいくら厚顔無恥な阿呆令嬢と陰でメイド達(後日ちゃんとお仕置き致しました)に呼ばれていた私にさえも憚られる。
「気持ちは分かるが、まだダメだ」
「」
「そんな ∵ という顔をするな」
∵という顔を浮かべてもモノム様は私にシャワーをまだ浴びさせては下さらない。
「今の姿の方がボスのお気に召すだろうからな、その後で幾らでも浴びてくるといい」
「え、そんなお方いるわけないでございましょう!!」
「まあまあ」
恐らく『社長室』と書かれたプレートの部屋につき、警護であろう出立の大きな殿方2人がモノム様を見る也綺麗な敬礼をなされ、モノム様が下ろす様に促されると「どうぞ」と両開きのドアが開かれた。
「…でー、ターゲットの小娘は見つかったのか?」
『いえ、潜伏先にはどれも罠が多量に仕掛けてあり痕跡も巧妙に消されています』
「その
『な! し、しかし…』
「あー?」
『…了解、直ちに撤収します』
遠くの書類や書物が堆く積まれたデスクに掛けられているお方はお一人なのに、もうお一方いて話をされていたように見えましたのですけど…紫の水晶玉? とお話をされているのが近付いて分かった。
「ボス」
「…んー?」
書類の山の向こうから若い女性の鋭いネオンブルーの双眸が此方を伺う。して、モノム様の仮面を見つけられると眼を見開かれてモノム様の真前へと姿をお見せになった。
「モー君じゃーん」
「戻ったぞ…くすぐったいのだが」
「イイ雄っぱいじゃーん、相変わらず」
「ッ…!」
シワシワのシャツを纏う胸元を大きく開けたギザギザの歯をされた女性は、突然モノム様の胸元をガバッと開かれて逞しい大胸筋を人差し指でなぞられる。
(大きい…御二方とも!)
モノム様の老齢に見合わぬ若々しい胸も勿論ですが、女性のお胸もシャツの中に窮屈に収まっており今すぐにでも飛び出したいと仰っている声が幻聴えてくる様です。不意に女性と目線が合った。
「んー? …知らねぇおっぱいがいるな」
「おっ…! こほん、初めまして。私、ロサリア・ヴァルプひゃあああああ!? いきなり何を!!」
「おっぱいだが?」
ドレスを超えて肌と肌が擦れ合う感触。なんと恐れ知らずな方なのでしょう!!絡みつく様に指先が私の胸を蹂躙しようと執拗に暴れ回る。
「おやめになってくださ…」
「やめた」
「な“っ“…!!」
「…イイおっぱいじゃん、モー君」
警告させて頂こうとした瞬間に手はひらりと私のドレスの中からいなくなられた。ペースを乱されて喉の奥から変な声が出てしまう。
「腕も確かだ」
「シドーよりもか?」
「鍛えればな」
「よし、採用ー」
「な“っ“…そんな容易に!?」
狼のように流れるふさふさチャコールグレーの髪を揺らされながら、女性はギザギザの歯を覗かせた笑顔と右手を私に差し出される。
「オエノ・ストリクタ、社長と呼べ」
「…よろしくお願い致します」
不敵なその微笑みは獰猛な野獣を思わせる。そこにギザギザの歯が相まって独特のオーラを感じさせるオーラが社長にはあった。
(なるほど、これが『サメ』なのですね)
口角を上げ社長の右手を握り返そうと手を差し出したが、社長の右手が私の胸元に滑り込む。
「にょわあああ!?」
「やっぱイイおっぱいしてんなー、ロゼ」
「くぅっ……なればこそ!!!」
「!?」
「嬢ちゃんもシャチョーのデカ乳に突っ込みやがった!! クソ、羨ましいぜ!!」
ホアンツァに続いてシェフ様も拳をグッと握りしめながらも叫ぶ。
「デカさは社長の方が上だが、柔らかさやバランスならロサリアも負けてねえ!! 勝てる、勝てるぜ!!」
「何をどうしたら勝ちになるんだい、シェフ」
「はぁ…頭痛が痛い」
バクラン様だけが冷静に事態を眺め、モノム様は急に知能が低下されている。
「さぁ社長! 如何されますの?」
「…」
岩の如く固まられていた社長は、不意に私の耳元で鼻先を動かした。
「臭うぞ、ロゼ」
「!!!!!!!」
「モー君、シャワーにロゼを連れてって」
「了解」
私は顔を両手で覆い隠し、どなた様にも見えない様にしながら一礼して社長室を後にした。
「この屈辱…倍にして返して差し上げますわよ、社長!」
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