第9話 助かる口裂け
「えーラジオネーム。ポマードバスターさんからのお便りです」
男が一人マイクに向かって口を開く。
「最近悩みがあります。以前まではマスクをして厚着のままに徘徊すれば人の注目の的で半ばアイドルの様な気分だったのですが、コロナが流行ってからは皆マスクを着けているからか誰もが素通りするのです。それに相手の顔が分からないから誰を狙えばいいのかも分からず、そのせいで同業者と鉢合うか事も増えてしまいました。もし宜しければ何かしらの助言を頂けると助かります ps私きれい?」
読み終わると男は腕を組んだ。
「以上ポマードバスターさんでした。んー成程これは妖怪の方からのお便りですねぇアハハ。なら少し真面目に考えてみましょうか」
男はチクタクと言葉に出しながら、予め用意されている台本へ目を通す。
そしてチーンと鐘の音を高く言葉にする。
「逆転の発想というのは如何でしょうか。今までマスクをする人が少ないから目立っていたのなら、今度はその中でマスクを取れば逆に目立つ。大っぴらに解放してみましょう」
そして軽く雑談を混ぜつつ〆ろと指示が送られる。
「という訳で最後のお便り、こんな感じの回答となりましたが、中々ユニークな方ですので是非次回のご応募もお待ちしておりますー。結果の方も楽しみにしておりますので、はい」
声色高いトーンは変わらない。
「それでは今日はこの辺りで締めさせていただきます。明日も熱意に身を任せ、サラバンダー!」
そう締めて番組は終了する。
その後ある事件がニュース番組で報道された。
私きれい? と声を掛けるノーマスク派の女性が白昼堂々包丁を持ち出し危害を加えたとするもの。
捕まった女性は証言で「コロナなんてありません。それをこのポマード男に分からせたかった」。
そう語ったそうな。
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