第6話 怒猫


 この地域にはとある言い伝えがある。

 赤毛の怒猫訪ねし所、人身御供を用意せよ。でなければ火による災が燃え広がらん。

 

 ある日一つの家宅に虎ほどの大きさの猫が訪ねてこう言った。

 「この家の幼子を食わせろ。でなければ全てを燃やし尽くす」

 その毛は伝承の通り燃える様な赤に包まれていた。

 応対した母親は悩みに悩んだ。そして一言。

 「猫缶じゃダメですか……?」

 そう言って山盛りの猫缶を差し出し怒猫は訝しむ様子で匂いを嗅ぐと、次の瞬間には全てくらい尽くしたそうだ。

 「……次からはこれを用意せよ」

 そう言い残して去って行った。


 その後言い伝えが少し変わり。

 赤毛の怒猫訪ねし所、猫缶を用意せよ。となったそうだ。

 

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