第22話 謎の少女に誘拐される

 イヴァンは走馬灯のように流れる自分の不甲斐なさに、みじめにも涙を流しながら刃を喉に当てる。


 そんな時だった。


「そんなはずがありません」


 聞き覚えのある優しくも凛々しい声がこの空間を切り裂いた。


 どこからともなく表れた赤いマントを着た彼女はイヴァンの手から槍を取ると、地面に捨て衛兵たちから身をかばう様に背を向ける。


「パッパ!」


 飛びついてくるリノをイヴァンは優しく抱きしめながら目の前の彼女をただ見つめた。


 初めてあったはずなのに、どこか前から知っている様で、どこか妻に似ていた。そのせいか、数人の衛兵を前に凛々しく立ちふさがる姿にかける声が見つからない。


 何してる!逃げろ!お前に何ができる!


 その言葉を押し黙らせる程のオーラを彼女から感じた。


 次の瞬間、赤いマントが消えると同時に姿を現した綺麗な銀色の鎧が彼女の気高さと地位を現している。


 正面で構える彼女はその刃を真っ赤に光らせる。剣を地面に刺すと、炎が衛兵を囲むように広がり周りの地面と建物が爆発する。


 立ち込める砂煙に、せき込むと耳元で彼女の声がささやかれる。


「逃げますよ」


 彼女の細い手がイヴァンのお腹に回されるといとも簡単に体が宙に浮く。そのまま

イヴァンは謎の少女に誘拐されていった。

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