第3話 女神さま登場の理由

 俺が生前病弱だったのは、神さまのミスだったらしい。

 そのお詫びとして、次の転生では、俺の望みを叶えてくれる事になった。

 転生先は、畜生道だった。



 ドラゴンへの転生を望む俺だが、俺が生きた世界にドラゴンは居なかった。

 だから神さまの管轄外らしく、神さまは管轄のクソビッチな女神を連れてきた。



「ほんと、いい加減にしてほしいわ。不慮の事故ってだけで、なんでうちに送りつけるのよ。」

 女神はくどくど文句をたれる。


「済まんの。なぜかみんな、冒険者とやらを希望しておっての。」

 神さまは女神をなだめてる。

「ほんと、どーなってんのよ、お父様の世界。普通は遣り残した事とか、憧れてた物とかそんな物でしょ。転生希望って。」

「さあ、それはワシにもさっぱり分からん。」


「まあ、いいわ。で、今度の転生者は、げ、」

 女神は俺に視線を向けると、露骨にやな顔をする。

 もっとも神さまとこの女神は、モヤっぽいシルエットで、その姿は分からない。

 だけど、この女神がやな顔してる事くらい、バカでも分かる。


「ちょっと、これをうちに転生させるの?冗談でしょ。」

「はあ?これってなんだよ、これってよ!」

 俺は思わず口をはさむ。


「うわ、やだこいつ、キモい。」

 女神は神さまの後ろに隠れる。

「なんだと、コラァ!」

 これには、温厚な俺もキレざるをえない。

 今の俺は人魂状態だが、もし身体があったら、普通にこの女神をひんむいてやる所だ!


「まあ、そう言うな。こいつは人道じゃなくて畜生道堕ちなのじゃ。」

 と神さまのジジイは説明する。

「畜生道?まあ、それが妥当よね。」

 女神はなぜか、普通に納得する。

 俺は普通にカチンとくる。


「で、畜生道堕ちが、なんでうちにくる訳?」

「いやこいつ、ドラゴンが希望での。」

「はあ?」


 俺の希望に、女神は素っ頓狂な声をあげる。

 ほんと、俺をムカつかせる女神だぜ。

 俺に動かせる身体があれば、普通に襲ってやる所だ。


「あっはっはっは。」

 そして女神は笑いだす。


「うっせーぞ、くそ女!」

 俺も思わずキレる。


「あーら、神に対して、随分な口の聞き方ね。あんたの今後の生きる道は、私の胸先三寸にかかってるのにね。」

 女神はニヤけながら、俺を挑発してくる。


「ぐ、」

 これには俺も、黙るしかない。

 くっそー、調子にのりやがって。

 こんな状態じゃなけりゃ、普通にひんむいて、ひーひー言わせてやるのに。


「こらこら、あまりこいつを責めるでない。」

 神さまのジジイが、小声で女神をたしなめる。


「こいつは、ほれ、例の天界堕落事件の被害者なのじゃ。」

「え、それって、お父様のミスで罪のない魂が、ひどい事になったと言う、あれ?」

「そうなのじゃ。だから畜生道とは言え、少しはマシな生きる道を選ばせてやりたいのじゃ。」

「ふーん、その結果がドラゴンなの?裕福な家庭の飼い猫辺りが、無難だと思うんだけど。」

「多分、最強種と言う名に、憧れがあるのじゃろ。出来る限り、こいつの希望にそってやりたいのじゃ。」

「でも、私の所のドラゴンでいいの?私の所のドラゴンはドラゴンでも、結構ハードモードよ?」

「いや、こんな事、おまえにしか頼めんじゃろ。」

「あはは、確かにそうね。」


 神さまのジジイと女神は、小声で何か話してる。

 俺にはさっぱり聞こえないが、単なる世間話だったら、俺はキレるぞ。


 って思ってたら、女神がずいっと近づいてくる。

「な、なんだよ。」

 くそ生意気な女神だが、こいつの機嫌を損ねたら、俺の来世にひびく。こいつを襲うのは、妄想だけにとどめておこう。


「ふーん、病気にならない丈夫な身体と、前世の記憶ね。」

 女神は、俺が転生する際に希望した事を、言い当てる。

 こいつも女神なら、それくらい出来て当然か。

 だけど、癪に触る。


「それに、飢えでは死なない、ってのも追加してあげよっか?」

 何と女神は、更に好条件を付けてくる。


「何?弱肉強食の畜生道で、生存競争に参加しなくていいって事か?」

「平たく言えば、そう言う事ね。」

 なんだこの女神。なんで俺に、こんな好条件付けてくるんだ?

「だけど、食わないで生きてられるって、どう言う事だ?」

 好条件とは言え、ここは疑問だ。


「私の世界では、生命活動に必要な魔素が、大気中に含まれているわ。だからその魔素を身体に取り込めるようにすれば、食わないで生きてられるって事よ。」

「おお、すげーな、それ。仙人は霞を食べるってヤツか。」

「ええ、その通りよ。」


 女神の提案に俺が歓喜してる裏で、神さまのジジイはオロオロしている。

 俺は気づいてないが。


「おいおい、それって餓鬼道の処遇じゃろ。こいつが堕ちるのは畜生道じゃ。」

「いいのよ。こいつは私を視姦した。これくらいしないと私の気が治らないわ。私の世界に転生させるなら、これが最低条件よ。」

「ま、まあ、それは仕方ないのう。」


 また神さまのジジイと女神が小声で何か、話してる。

 やっぱ機密事項みたいな物が、あるのかな。

 俺を別の世界に転生させる訳だし。


「じゃあ、早速私の世界のドラゴンに、転生させてあげるわね。」

 女神は何やらポーズをとる。

 くそ、無駄に色っぽいな。

 だけど、ちょっと待ってくれ。


「おい、転生する前に、知っとくべき予備知識とかないのか?」

 俺も出来れば、万全の状態で転生したい。


「あら、強欲ね。普通はそんなもん無しで転生するものよ。」

「いや、俺は特別だろ。」

 ほんと、このくそ女神ムカつくわ。


「はあ、確かにおまえは特別だ。」

 くそ女神が何か言う前に、神さまのジジイが口をはさむ。


「特別だからこそ、おまえの希望を聞いてやった。じゃが、特別扱いはそこまでじゃ。これ以上を望むなら、おまえの転生先を畜生道から地獄道に変更せねばならん。」

 神さまのジジイは、ここに来て威厳に満ちた声を出しやがる。


「わ、分かったよ。」

 これには俺も、折れるしかない。

「俺の希望を聞いてくれて、ありがとうな。」

 一応、お礼は言っておこう。


「ふふふ、いい心がけね。それじゃあ新しい人生、楽しんでらっしゃい。」


 こうして俺は、ドラゴンとしての人生を歩む事になった。

 この時くそ女神が、邪悪な笑みを浮かべた事に、俺は気がつかなかった。




後書き

ども(・ω・)ノ


いやー、やっと転生出来ました。かっこ笑い

本当はここまで1話に治めるべきですが、過去にも言ったとおり、私は1話三千文字が限界です。


あまりに長いんで、転生後からスタート、以降回想シーンで転生準備ってやってみました。

けど、そっちはしっくりこなかったので、戻しました。


ちなみに、ここまで書くのに三か月かかってます。

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