竜武人

 ミハイル。本名、ミハイル・ブラウン。

 彼は2000年代に活動していたイングランドの科学者で、表向きには病気を予防するワクチンや、かつてヨーロッパで流行していたウイルスの研究など、様々な研究をしていた。

 しかし、彼は裏で人体実験をしており、その実験の際に研究対象が死んだときには隠蔽をするなど、血も涙もない人間であった。

 研究対象はホームレスや身寄りのない子供や老人であり、彼の実験がバレないのもそのせいであった。

 2019年5月。ミハイルは、自身の研究所にて首を折られた状態で発見された。享年63歳。

 彼を殺したのは『生きる伝説』の暗殺者、モーガンと噂されている。




 何とか逃げおおせたミハイル・マッドは、魔王城で魔王ジェミーの前で正座をさせられていた。

 「何故逃げた?」

 黒いマントで身を隠しているものの、彼から放たれる威圧感に、ミハイルは汗を滝の如く流し、事を話すしかなかった。

 「そ、それは、私の最高傑作、ケンタウルスを勇者モーガンに倒されたからで…」

 「じゃあ何故逃がした?」

 「そそそ、それは、彼の威圧に負け…」

 「そうか。なら、異空間送りだな」

 「な、なな、魔王様ぁ!」

 何とか足掻こうとするミハイルの後ろにとある者が迫っていた。

 「ミハイル」

 「なっ、その声は…」

 その者は、薙刀を持った竜人、ドラゴンマン・ハーラーであった。

 「ハーラー!助けてくれ!」

 「何故ミスをした貴様を助けなければならない」

 「なっ…あの時各地を放浪していたお前を拾ったのはこの私だ!恩は無いのか恩は!」

 「かつて貴様は言っていた。『負けた人間に、利用価値は無いからな』と」

 「な、な、やめろぉぉぉ!」

 ハーラーが薙刀を薙ぐ。

 薙刀の先端の刃は、ミハイルの上半身と下半身を分裂させた。

 「か…は…」

 そして、ミハイルはそのまま息絶えた。

 「魔王様。このミハイルの最高傑作ですら倒せなかった勇者モーガンとその仲間達。実に興味があります」

 「ほほう。それで、自ら奴らと戦いたいと」

 「えぇ。どうやら透明人間のエジルが奴らを見かけたそうで、マックス港という所に向かっているそうです」

 「そうか。では、よろしく頼んだぞ。『竜武人』よ」

 「えぇ。私にお任せください」

 そして、ハーラーはその場を去った。

 「ククク」

  ジェミーの隣にいたコウモリが本来の姿である吸血鬼となった。

 「魔王様…」

 「どうした、ウィリアム32世?」

 「あのハーラーという者。各地を放浪していたとありましたが…」

 「お前は聞いたことなかったか?ハーラーの過去を」

 「えぇ」

 「フム、折角だ。聞かせてやろう。昔話とやらを」

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