討伐依頼

 俺達が旅を続けて何日かが経った。

 メンバーは前世暗殺者、現在勇者の俺、モーガン・ヨシネム。最初の仲間、魔法使いのトロイト・シウバ。そして、ラックに全振りした狙撃手のアヤカ・カイニド。

 それぞれの個性をパズルのように合わせ、モンスターを倒し、時折村に泊まっていた。

 そして、旅を始めたアリグス国の首都、メリンボから南西数十キロメートルも離れた村、ジニアス町の食堂で俺達は休息をとっていた。

 「ふぅ…旅ってものは結構疲れるものだな」

 「僕は魔王討伐のためなら、疲れなど感じません!」

 「トロイトはすげぇな。お前の力を見習いたい」

 「いやいや、それほどでも」

 俺とトロイトがそう雑談していると、アヤカが周りを見渡す。

 「………」

 「どうした、アヤカ?」

 「ここにいる人、何か怯えてる気がして…」

 「怯えてる?」

 「うん」

 「もしかしたら、モンスター関係かもしれんな」

 「お皿下げますね」

 俺は丁度来た店員に試しに聞くことにした。

 「あの店員さん」

 「何でしょう」

 「なんか、ここのお客さんが何か怯えてるような気がして…何かあったんですか?」

 「えぇ。実は、ここから北西1キロメートルぐらい離れたところに洞窟があるんです。元々は採掘場だったんですが、数ヶ月前にバーサーカーゴブリンって奴らが採掘場を襲撃したんです」

 「採掘場を!?」

 「はい。そこから採掘場はそのゴブリン共の根城になってしまい、採掘場で働いている人たちが行けなくなり、怯えてるんです」

 「だから、皆が怯えているのか」

 「ん?そういえば、貴方達、例の勇者御一行じゃないですか!?」

 「まぁ、そうだが…」

 「少々お待ちください…」

 そして、店員がそこを離れた。

 それからして、その店員と一人の老人が現れた。

 「町長、このお方達が例の…」

 「そうか」

 「すいません。貴方は一体?」

 「私はこの町の町長。ノコウ・ケンヤ」

 「そんで、町長が何の用で」

 すると、ノコウが土下座をした。

 「どうか、お願いします!洞窟のゴブリン共を討伐してくれませんか!」

 討伐依頼。それは前世の暗殺依頼と似ていて、俺の口角が少し上がる。

 「分かりました。では、俺達があの忌々しいゴブリン共を討伐しましょう!」

 「おぉ…ありがとうございます…」

 すると、ある男が俺達に近付く。

 「では、俺も連れていってくれないか」

 その男は柔道着のような服を着ており、格闘家のような、いや、まさに格闘家な男であった。

 「トサマ…お前、いたのか」

 「えぇ。この人たちが村に入って食堂に来たのを見ましてね」

 「誰だ?」

 「コイツは私の友人の孫、ツミウ・トサマ。村一番の格闘家、ツミウ・ミツカの息子で、ツミウ流の使い手だ」

 「勇者様、どうかこの俺を連れていってください!」

 「トサマ、止めないか!」

 ノコウがトサマを叱る。

 「私はもう…知り合いを死なせたくないんだ…」

 その言葉には、涙がこもっていた。

 「何があったんですか?」

 トロイトがノコウに聞く。

 「実はな、コイツの父親、ミツカは、バーサーカーゴブリンのダハヤシに殺されたのだ」

 「えっ!?」

 「数日前、ミツカは『俺が奴を倒してくる』と例の洞窟に行ったんだ。しかし、ミツカは町に戻ることは無かった。そして一昨日、ミツカの骨だと思われるモノが帰ってきた。それに憤怒したのは息子のトサマだったんだ」

 「そんなことが」

 しかし、トサマは止まらなかった。

 「どうか、お願いします!親父の仇を取りたいんです…!」

 「ノコウ…」

 懇願するトサマに俺は条件を付けた。

 「それなら、俺と戦ってくれ」

 「戦う…?」

 「あぁ。俺を倒せたら、一緒に洞窟に行こうではないか」

 「正気か!?勇者殿!」

 「いいんですよ」

 俺はツミウ・トサマの名で、ある殺し屋を思い出していた。




 内海雅斗うつみまさと。殺し屋組織『ジェミー』の武闘派。コードネームは『カイル』。

 内海は武器を使わない、いわゆる『ステゴロ』使いの男だ。自分の純粋な力のみで、敵をぶっ倒し、肉弾戦なら俺にも勝るほど。

 内海も二階堂同様、生存しており、組織でこれからも活躍するだろう。

 俺は目の前のトサマを見つめる。

 「じゃあ、やろうか」

 「さぁ、いくぞ!」

 俺とトサマは攻撃の構えを取った。

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