ツミウ流の使い手

 トサマの構えから、闘気が見える。すると、トサマの口が開く。

 「俺の使うツミウ流は、岩や骨をも砕く。勇者モーガン・ヨシネム。アンタを倒してでもダハヤシ討伐に着いて行く!」

 「さぁ来い」

 「はぁっ!」

 トサマが右のジャブを繰り出す。

 「おっと、それは喰らわん」

 俺は体を背け、それを躱す。

 「くっ…」

 「次はこっちだ」

 左のストレートをトサマの顔面に決めようとする。

 「させるかぁ!」

 だが、トサマは腕のクロスでガード。それは決まらなかった。

 「おいおい、まだ二発目があるぞ」

 俺は右足でトサマの足を薙ぐ。

 「はぁっ!」

 「ほあっ!」

 しかし、トサマはウサギのように高くジャンプ。

 「何ッ!?」

 「この跳躍力。これがツミウ流の強みだ」

 そのままトサマはかかと落としを繰り出す。

 「くらえぃっ!」

 「ぐっ…!」

 それは俺の虚を突き、右肩に奴のかかとが落ちた。しかも攻撃を当てたにも拘わらず、トサマは後ろ回りをし、バランスを崩すことなく地面に足を付けた。

 「さぁ、右は使い物にならなくなった」

 「けっ、まだ諦めるかよ」

 「今度は左だぁ!」

 トサマが駆け、またも飛ぶ。そして繰り出すのはかかと落とし。

 「二度も同じ技に引っ掛かるか!」

 俺は奴の足首を掴む。

 「なっ!」

 そして、全力で握る。

 「ぐばあっ!」

 「後で直してやる」

 俺は根性で右手を上げ、両手で足首を掴んだ。

 「はぁぁぁぁ!」

 「なんだぁぁ!目が回るぅぅ!」

 俺はトサマを五周くらい回し、地面に叩きつけた。死なない程度には。

 「ぐばあっ!」

 「さて、これで終わりか」

 すると、トサマが口を開く。

 「くそっ、俺の負けだ」

 「トロイト、回復魔法を」

 「はい!」

 トロイトが俺とトサマに回復魔法をし、トサマが立つ。

 「仕方ない。俺は村に残る。どうかこの手で俺の親父の仇を…」

 「いや、アンタも着いてこい」

 「えっ!?」

 すると、ノコウが叫ぶ。

 「なっ、勇者様!なぜトサマに勝ったのに連れていくのですか!」

 「何故なら、俺の右肩に攻撃を当てたからだ」

 「そんな理由で…」

 「町長」

 怒りの暴発寸前のノコウにトサマが言う。

 「折角勇者様…いや、モーガンが連れていってくれるんだ。この頼みを無下にしたくない」

 「くっ…トサマ…」

 ノコウが数秒黙ると、口を開く。

 「分かった。じゃあ、魔王を倒すまで、ここに帰ってくるなよ」

 「分かりました。では、気を付けて行ってきます」

 「あぁ。じゃあ、行くぞ!皆!」

 「はい!」

 「はい!」

 トサマという新たなメンバーを加えた俺達は例の洞窟に向かった。

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