第27話 なんかすいません

俺がフェルという新しい仲間を手にしてから1週間が経過した。


特に大きな問題もなくいつもよりものんびりとした時間を過ごしていた、のだが。


今日からまた忙しくなるかもしれない。

なぜならフロイスとの話があるからだ。


結果的に言えば俺は夜の王を討伐して、アサシンズクランにも大打撃を与えたことになっている。


そのことが評価されたそうなのだ。


(実感はないけどなぁ)


レーヴァテインを倒せたのもフェルがいたからだろうし、アシッドを倒せたのもほぼ相性勝ちみたいなもんだった。


そのとき。


コンコン。


部屋の扉がノックされた。


「フロイス様が来ておりますよ」


おっ。どうやらスズランが迎えに来たようだ。


「今行く」


外に出るとそこにはスズランがいて俺を応接間まで案内した。


応接間に入るとそこにはフロイスとその娘であるベアトリスがいた。


そしてベアトリスは俺を見るなり頭を下げた。


「イカロス様。お久しぶりです」

「様はいらないけど?」


そう言いながらソファに腰掛ける。

するとフロイスが手紙をスっと俺に渡してきた。


「中身の確認をお願いします」


そう言われて俺は手紙の中身を確認した。


そこには長々と文章が書かれてあって、そして最後の方に。

こうあった。



『イカロス殿』

『【夜の王】討伐と【暗殺集団】への大打撃の件を評価したいと思う』

『あなたに【伯爵】の爵位を授ける』



それを確認して俺は紙面から顔を上げた。


「まじかよ」


俺、貴族になっちゃったの?


ちょっと前までただの平民だったのに、いきなり貴族。

しかも伯爵になっちゃった?!


(伯爵と言えばちょうど真ん中の爵位じゃなかったっけ?)


とか思いながら俺は自分の実家のことを思い出す。


(実家は没落したけどひとりで貴族になっちゃってなんかサーセンwww)


騎士団やめて1ヶ月くらいで俺は実家を超えてしまった。


はぁ……


(今すぐ実家に戻って父親煽りてぇwww)


とか思うけど。

今戻ったらどうなるか分からんので思うだけにしておく。


(あー、でも爵位が通用するのってこの国限定か)


ってことはこの国を出たら俺ただの平民なのか。


そんなことを思い出して少しだけネガティブになったが、フロイスに目を戻すと、俺の目をまっすぐに見てこう言ってきた。


「イカロスさん。ベアトリスとの結婚はいかがでしょう?もちろん、他重婚してもらってもかまいません」


そう言ってくるフロイス。


他重婚でもいいのか。

日本にいた頃は結婚というと大それたものだという認識だったが。


「形だけでもかまいませんよ」


とフロイスが言ってくる。

どうやらこの世界においての結婚というのはそこまで重いものではないのかもしれない。


俺としてはフロイスとのパイプはたしかにあるといいと思う。


「だけど、ベアトリスの気持ちはどうなんだ?」


といちおう聞いてみる。


すると


「私はすでに気持ちは固まっておりますよ」


とのことらしい。


うん。なら結婚しちゃうか?


「うん。じゃあ結婚しよっか」


そんな軽い言葉で俺たちの結婚は決まった。


異世界というものはとんでもないよな。


こんなノリで結婚できるんだもん。


そうして話をまとめてフロイスとベアトリスは帰って行った。


(ぜんぜん結婚って感じはしないよな)


ほんとに形だけの結婚らしい。


俺もこの世界に来て長いから知ってるけどみんなこんな感じで形だけの結婚をしている。


だけど俺は日本人としてやっぱり特別な人と結婚したいよなという思いもあるわけである。


(やっぱり俺は異世界に染まりきれないんだな)


ずっと異世界に染まってると思ってたけど、俺はまだまだ日本人的思考から抜け出せてないようだ。

特にこういうことに関しては。



サイクロプスの工房を訪れた。


金に余裕ができたのでいい武器を作ってもらおうと思って少し前に頼んでおいたのだ。


それを受け取りに来たのだがその前にサイクロプスがこう言ってきた。


「おう、イカロス。ちょうどいいとこにきたな」

「ちょうどいいとこ?なにか用?」


そう聞いてみるとピラッと紙を見せてきた。


「お前、こういうの興味ねぇか?」


そう言って見せてきた紙にはこうあった。



【師匠募集】

・新たな剣聖候補を育成するのに騎士経験や剣士経験のある方を募集します

・若い剣士や騎士などの稽古をお願いします。

・勤務時間ですが都合のいい時間だけでかまいません。

・実務経験がある方を対象としています。


勤務地:グレンマルド帝国


給与について:

出来高制ですが保証があります。

弟子が特別な称号をもらえなくても月に200万ゼルお支払いいたします。

気軽にご応募ください。



(200万?!!!ん、まじで?!実務経験ならあるし応募してみようかな!応募するだけならただだしなぁ)


「へぇ、師匠か」

「国外に行くことになるんだが受けちゃくれねぇか?お前を見込んで依頼してるんだ。氷剣との手合わせを見てお前ならいい仕事をしそうだって思ってな。ちなみに推薦制でな。俺以外からは受けられないから注意してくれ」


そう言ってくるサイクロプス。


(俺を推薦してるってことなのか。ふむ)


推薦枠って制限があると思うんだけど、それを俺に使ってくれてるっていうことなんだろうな。

そのことにちょっと嬉しくなる。


それと


(ちょっとゲスいかもしれんけど、女弟子とあんなことやこんなことできたりする?)


男って若い女の子が好きだからな。ふはは、俺も例には漏れん。


「ぐへへ」


(なるほどな。受けてみよっかな?)


そう思ったので俺は答えた。


「いいよ、受ける」


「お前ならそう言ってくれると思ってた。一週間後に迎えがくる。」


ピラッ。

用紙を受け取った。


改めて師匠募集の文字を見て俺はプルプルと手をふるわせた。


(俺も先生って呼ばれるわけ?くぅぅぅぅ!!!)


ずっとうらやましかったんだよな。

団長が。


団長!リーダー!って呼ばれてて。


俺も尊敬されたいって前から思ってたのだ。


んで、それからサイクロプスに目をやった。


「ところで頼んでた武器はできてる?新生活はお前の作った武器と一緒に送るよ」




​───────​───────​───────

飲んだくれの剣聖編がこれで終わりです。


次からは弟子育成してたら俺が剣帝になったんだが?


みたいな感じで進むと思います。


あともう1話【幕間】を差し込みますがストーリーが大きく進むことはありませんので読みたい人だけ、どうぞ。





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