第24話 俺だけのパッシブスキル

馬を走らせながらミーナから話を聞く。


「アサシンズクランにはいくつかの班があります。【呪術班】【武術班】など。正確な班の数は把握できていませんが」

「へー。それで今回はどこの班がいるかとかは分かるのか?」

「【夜の王】対策に【武術班】はくるでしょう。この班はとにかく物理戦闘を得意とした班です。私が出会ったのもこの班です」

「へー。まぁ武術班が来てもアクアがいるし、なんとかなりそうじゃない?」


「だといいんですが、向こうがこちらの出方を知っている場合は呪術班も来ると思います」

「呪術班ってのはどういう班なの?」

「呪いや精神干渉系魔法に特化した人たちです。どちらかといえば今の私たちにとって厄介なのはこの呪術班です」


「なぜ?」

「とにかく精神干渉魔法に特化しているので、精神面で潰しにくるのです。アクアさんがいると言っても内側から潰されては自慢の戦闘能力も発揮できないでしょう」

「わははは。私のメンタルは鋼鉄でできているぞ。犯罪者集団ごときの魔法じゃびくともせん!」

(ほんとにぃ?)


そんな会話をしながら考えをまとめた。

なるほど。


(とりあえず呪術班を引かなかったらなんとかなりそうか?とは言え俺は小数点以下の確率をたった今引いた男だ)


「黙り込んでどうしたんですか?」


うしろからミーナが聞いてきた。


「いや、自分の運の悪さを嘆いてただけさ」


そうして馬を走らせていると道の真ん中で人が倒れていた。


「大丈夫か?」


馬から飛び降りて直ぐに倒れてる人に駆け寄るアクアを止める。


(お人好しだよなこいつ)


そう思いながら声をかける。


「やめとけよ。こんなところで普通は人なんか倒れてないだろ。どう考えても罠だろ」

「し、しかし」


そう言って倒れてるやつに駆け寄ったアクア。


その瞬間だった。


アクアの目の色が変わった。


頭を抱える。


「や、やめてくれ。すいけん殿。な、なぜそんなことを言うんだ。味方だろ?な、なぜ『死ね』なんて言えるんだ?」

「はぁ?俺なんも言ってないけど」


その瞬間ミーナが口を開いた。


「精神干渉魔法を使われています。彼女はもう戦力外です」

「まじかよ。この一瞬で?役に立たないなぁ、あいつ」


アクアは泣きながらその場にうずくまった。


「や、やめてくれ母上。わ、私は努力した!!それを否定しないでくれ!褒めてくれたじゃないか!」


そんなアクアの奥で倒れてた奴が立ち上がった。


「これで【氷剣】は無効化できましたな。やはり呪術こそが最強。戦わずとも強敵を無効化できるのだから」


倒れていたのは男でそいつは被っていたフードを脱いでこう言った。


「アサシンズクラン【呪術班】のリーダーアシッドです」


俺も馬から降りてミーナに目をやる。


「前からあなたがたまに言ってるフラグ回収という言葉の意味がわかった気がします」

「だろ?」


そう返しながらアシッドに目を戻すとこう続けてきた。


「ここで我々【呪術班】と会うなんてかわいそうだ」


ミーナが口を開いた。


「囲まれてます。待ち伏せされていたようです」

「どうやらそのようだな。今までミーナの【気配察知】にかからなかったな。やはりこいつらはやり手ということらしいな」


ミーナと背中を合わせて立つ。


パチンと指を鳴らすアシッド。

すると周りの草むらからガサァッとローブにフードを被ったいかにもな姿の魔法使いが10人ほど姿を現した。


そいつらがいっせいに俺とミーナに向かって杖の先端を向けてきた。


ミーナはこう言ってきた。


「氷剣は見ての通り役に立ちません。私がなんとか魔法を防ぎますので、囲っている10人、まとめてお願いできますか?」

「あいよ」


そう答えて俺はポケットに素早くてを入れて石ころを掴めるだけ掴んだ。


【武装強化】


【ショットガン】


目の前にいた魔法使いに全部投げつける。


無数に放たれた弾丸は雨のように魔法使いたちに向かっていった。


下手な鉄砲でも数打てば当たる。


ブチュッ。


脳天を突き抜けてその場に倒れた5人の魔法使い。


(これだから魔法使いは弱いよな)


「んなっ」


アサクラに動揺が広がる。


「い、今のは?」


これで残り5人まで減らすことができた。


「き、木に隠れるのです!障害物を挟むのです!」


そうして木に隠れたが


【ショットガン】


木すら粉砕しながら


またひとり、ふたり。


一気に残りの人数は3人になった。


「い、今の投擲は。こ、こいつ、すいけんか?!な、なんで伝説の剣聖がこんなところに?!」


次の石ころの準備に入るとそこでアシッド達が動き出した。


(魔法の準備に入った?)


「え、えぇい!すいけんだろうがなんだろうが、精神干渉魔法は通じる!氷剣同様ここで潰す!あの男にだけ魔法を使え!我々には【魔法無効貫通】スキルがある!すいけんを行動不能にしてしまえ」


幻覚魔法ビジョン


3人がいっせいに魔法を使ってきた。


ミーナがバリアを貼ろうとしてたけど、それを、貫通してきた。


「ご、ごめんなさい。シールドを破られました」


(速いな。そういえば精神干渉系魔法って言ってたな)


精神干渉系の魔法は他の系統の魔法よりも発動が速いことで有名だ。


「どうですかぁ?!アサシンズクランの魔法は!速いでしょう?!そして強力だ!スキル相性を無視してすべての敵に魔法を当てることができますよ?!」


(受けるしかないか。さいわいこの系統の魔法耐性はある)


トッ。


「えっ?」


ミーナの背中を押して魔法にぜったいに巻き込まれないようにしてやる。


「あとのことは任せるわ。そういうの得意だろ?」



次の瞬間。

俺の体はなにもない空間にあった。


そして目の前には


「あ、あれ?」


前世の母親が立っていた。

他には父親と兄貴も立っていた。


そしてそいつらが口を開いた。


「クズ」

「ほんとにクズだよな。こいつは」

「産むんじゃなかった、誰にも愛されないクズ」


そうして俺に向かって3人が歩いてきた。


その数は、どんどん増えていく。

3人のうしろには俺のクラスの同級生や、今まで関わってきた人間がどんどん増えていく。


「クズ」

「バカ」

「ゴミ」

「死ねば?」

「なんで生きてんの?www」

「早く死んだ方がお国のためだよ」

「お母さんがかわいそう」

「お兄ちゃんがかわいそー」

「お父さんもかわいそー」


口々にそんな暴言が飛んでくる。


「イカロス様?!くっ、なんて強い呪術。い、イカロス様!飲まれないでください!全部聞く価値のな」


誰か知らない人の声が聞こえた気がする。


誰の声か分からないけど。それも消えていった。


多勢に無勢ってやつなんだろう。

小さな声は大きな暴言の前じゃなんの意味も持たなかった。


「死ねよ」

「ごみくず」

「生まれてきた意味なかったよな」

「お前のこと好きなやついんの?」

「すいけん菌がついた!きったねー!」

「やーい!やーい!落ちこぼれー!」


その言葉を聞いて口を開く。


笑いながら。


「それで?もう聞き飽きたんだよねぇ、うるさいだけなんだよね」


クズなのもバカなのもアホなのも社会のゴミなのも全部分かってる。


だから。


なに?


自覚してるんだよそんなことは。


「「「なっ?!」」」


俺の家族が驚いていた。


「き、効いていないのか?!」

「お、おかしい!」

「ば、ばかな!魔法は通ったはずだ!」

「じゃ、じゃあなんで魔法が効いてない?!」


おっと。口を滑らせたみたいだな。


それで思い出した。

あーそうか。そういえばアサシンズクランとかってやつらと戦ってたな俺は。


「これが君たちアサクラさんお得意の精神攻撃なわけ?」


ゲラゲラ笑ってやる。


「俺がの暴言何回吐かれてきたと思ってんの?かれこれ何十年も言われ続けて飽きてきたよ」


さてじゃあ次はこっちの番だな。


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