第18話 独眼の巨人

 ダンジョンを走って先に進んでいく。


 出てくる敵はすべてザコなので剣を振れば全て一撃で倒れていく。


 そうやって走ると、


「ここだな、24階層」


 俺たちは最後の階段をかけあがった。


 そしてその目の前には


「扉。この先はボスフロアかもしれせん」


 ミーナの言葉にうなずいた。


 この中から戦闘音が聞こえてくる。


「イカロス様どうしますか?」

「もちろん、突撃だ」


 普通に考えて依頼人が中にいるだろうし、依頼人の身になにかあってからではおそい。


 扉を開けてみるとその中では冒険者複数人が戦ってた。


 相手は


(なんだあれ、見たことないモンスターだな)


 空中を飛び回っている白い仮面のようなものが見える。


 ってかあれ、モンスターなのだろうか?

 

 そう思ってたら文字が視界に浮かんできた。



名前:ソウルイーター

レベル:358



(ソウルイーター?ぜんぜん知らないモンスターだな)


 そう思いながら俺は依頼人を探した。


 依頼にはモンスター退治まで含まれていないから早く物資届けて帰ろう。


「いた、あいつだ」


 クエスト用紙にあった写真と同じ容姿をしていた女の子を見つけた。


 どうやらけっこう長い時間戦っているようで冒険者たちは交代制で戦っているようだった。


 敵を攻撃する人間と回復をする人間で別れて戦っているらしい。


 で、依頼人は今さがって休んでた。


 歩いて近寄る。

 とケガの手当をしながら顔を上げた。


「あ、あなたは?」

「物資届けに来たけど」


 そう言って俺はミーナに目をやる。


 こくっと頷いて背負っていたリュックを依頼人に渡すミーナ。


「使い魔をよろしく」

「あ、あとでもいいか?今はソウルイーターが」


 チラッと空を飛ぶ白い仮面に目をやってから答えてくる彼女。


 そのときだった。


「がっ!」

「ぐはっ!」


 戦っていたふたりがソウルイーターのビームに攻撃されてこっちに転がってきた。


 それでもうソウルイーターの気をそらせるやつはいなくなってた。


「なんかやばそうだな」


 ギギギギギときしむような音を鳴らして俺を見てくるソウルイーター。


 どうやら俺達も敵として認識されたようだ。


 ならしかたない。


【武装強化】


 戦えるように剣を手に取る。


「剣を手に取ってどうするつもりなんだ?魔法じゃないとあの高さは届かないぞ」

「って思うじゃん?」


 ギギギギギ。


 ソウルイーターが口を開こうとする。


「気をつけろ。魔法を使うつもりだ」


 助言をくれたらしい依頼人。


「なら魔法を使わせる前に潰せばいい」


 そう言って槍投げをするみたいに剣を構えた。


「な、なにを?」

「投げるんだよ」


 地球には槍投げってもんがあったし。


 それの応用だ。


 まぁ、応用って言える程じゃないと思うけど。


 だって投げるものが槍から剣になっただけ。


 助走をつけて。


 軽く走ってから


「おらっ!」


 剣をぶん投げた。

 上空にふよふよと浮かんでいる仮面に向けて。


 剣はぐるぐる回転しながらソウルイーターまで飛んでいった。


 そして、ぶっささった。


「グギャァァァァァァアァア!!!!!!」


 そしてそのままソウルイーターは光となって消えていく。


 その過程で刺さっていた剣も外れて下に落ちてきた。


 カランカラン。


 剣が音を立てて床に落ちた。


「け、剣を投げた?!」

「剣を投げちゃいけないなんていう決まりはないからねぇ」


 そう答えて俺は使い魔っていうか。クエスト用紙を突き出した。


「サインよろしく」


 そう言ってみると俺からクエスト用紙を受け取ってサインをしてくれた。


 そこに書かれた名前はたしかに【ベアトリス】という名前だった。


 よし。これでサインはもらえた。


 ということはもう俺がここでやることはないわけだ。


 一応ダンジョン抜けのアイテムはギルドから支給されてるけど。


 安いものでもないからなぁ離脱アイテムは。

 つまり売れば金になる。


 なるべくアイテムを温存して帰れるなら、温存して帰りたいところだ。


「あとこのダンジョンはどれくらいあるんだ?」


 ベアトリスに聞いてみる。


「えーっと。とりあえず次で中継ポイントがあるはずだが。そこから帰れるはず」

「なるほどね。ならそれで帰るか」


 中継ポイントならワープアイテムがあると聞いたことがある。


 昔は俺も冒険者になるもんだと思ってたからこういうことは知ってるんだよな。


「では、私たちも一度帰る予定だったからいっしょにどうだ?思ったよりも消費が激しくてな」


 そう聞いてくるベアトリスの言葉に俺は頷いた。



 街に帰って俺はさっそくギルドに向かった。


 クエスト完了の報告だ。


 ベアトリスはやることがあると言ってギルドには来なかった。


「さすがはイカロスさんですね」


 そう言ってくるアンリに適当に答えながら俺はクエスト用紙を渡して報酬を受け取った。


 それから


「これもな」


 ダンジョンで拾った冒険者カードを提出。


「……」


 死亡者のカードを見てアンリはつらそうな顔をしていた。


「慣れないですよね。こういうことは」

「ま、でも。アンリのせいじゃないよ。気にすんなよ」


 そう言いながら話題を変える。


「あのさぁ。武器拾ったんだけど、これって研磨とかしてくれるとこある?」


 ダンジョン内で拾った傷だらけの武器を取り出して聞いてみた。

 ちなみにさび付いてたりしていてこのまま使うのは厳しいだろう。


「この近くだと独眼の巨人サイクロプスがいるみたいですよ」


 そう言って簡単な地図を書いてくれたアンリ。


 その紙を受け取った。


「サンキュー。行ってみることにするよ」

「はい。お気をつけて」


 アンリに見送られて俺はサイクロプスのいるところに向かうことにした。


 ココ最近激動の日々だったからな。

 おっさんそろそろ休みたいわけよ。


 んで、そうやって歩いてたら。


「ここか」


 居住区から少し離れた森の中に説明された建物があった。


 その建物の外の切り株にバカでかい巨人が座ってる。


 俺たちの足音に気付いたのか巨人がこっちに目を向けてきた。

 一つ目の巨人。


 こんなのもいるんだなぁ、狭い世界で生きてて知らなかった。

 さすが異世界だよ。


「客か?」

「あぁ」


 そう言いながら腰にさげてたサビまみれの剣を巨人に渡した。


「研磨か。10000ゼルってとこだな」


 そう言ってくるサイクロプスに金を払う。


 安くはないけどソシャゲのガチャ30連分と考えたら安く感じられる不思議。


「時間がかかる。できあがりは明日ってところか」


 うなずく。

 研磨なんてすぐに終わると思ってたけど日単位でかかるんだなぁ。


(もっとすぐに終わるんだと思ってたが、そこはゲームみたいにうまくいかないんだな)


 そう思いながら俺は街の方に向かうことにした。


 そういえばスズランが館は自由に使えと言っていたのを思い出して館の方に向かったのだが。


 館の庭で見覚えのある人間を見かけた。


「あれ、イカロスさんじゃありませんか」


 この前俺に食事をおごってくれた貴族のフロイスが庭に立っていた。


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