第14話 約束を果たす
ギルドに向かって俺はクエストを選んでた。
あの
準備のためにも資金が必要なのである。
日本と同じでこの世界もなにをするのにもカネが必要なのである。
「んー、どれにしよう」
はれてCランクに昇格することができた。
だからこれからはCランクのクエストを受けることができるのだが。
Cランクのクエストくらいから数がかなり多くなっているようだった。
理由は単純だ。
Cランクくらいからは誰でもできる、ってわけじゃなくてある程度経験を積んだ人間しかできないような依頼内容に変わっていく。
そのせいで依頼の回転率が落ちるそうだ。
Bランクから上はさらに回転率が落ちるらしい。
ちなみにSランクの依頼だがほとんどない。
Sランク向けの依頼は直接冒険者に頼む人が多いらしい。
(そんな背景があるから商会の依頼だけでもけっこう数が多いんだな)
商会の依頼を中心に見ていたのだが、かなり多い。
ほとんどが昇格クエストみたいな護衛の依頼なんだけど。
その中に、俺の気を引く依頼があった。
【物資の運搬】
クエスト名:追加物資の運搬の依頼
クエスト内容:アステラルの塔24階層へ物資を届ける
クリア判定:依頼主からの使い魔が届くか、サイン付きのクエスト用紙の提出で成功とみなします
報酬金:10万ゼル
人数制限:5人まで
「ダンジョンかぁ、それにしても一気に報酬金あがってきたな」
俺は元日本人だからとうぜんゲームもやったことある。
ダンジョンには金銀財宝がザックザクって話を聞いたことある。
そんなダンジョンに行けるのかぁ。ギミックとか罠とかはストレスだけどな。
(ワクワクするよなぁ、ダンジョン)
モンスターが出てきたり、女の子といい感じになったり、いや女の子とはいい感じになれないか。
俺おっさんだもんな。
そういうのもあと10年くらい早ければなぁ。
いや、早くても無理か。
非モテの俺だもん。
日本にいたときも女の子と手をつないだことすらないからな。
「とりあえずこれにしてみるか」
選んだクエストを手に持ってカウンターに向かってみた。
するとそこにはアンリがいた。
どうやらギルドは世界的な規模の組織らしくて手続きをすればどこの国のギルドでも働けるようになっているらしい。
(すごいよなぁ、ギルドって)
見知らぬ街で見知った人に依頼を渡した。
手続きをしてくれたアンリからクエストを受け取った。
それからミーナに目をやった。
「この前の食事の話だが流れたまんまになってたし、このまま食べて行くか?」
Dランク昇格クエストのときにした約束だ。
あれから騎士団長の粘着がウザかったから、のんびり食えなかったのだが。
「い、いいのですか?約束を覚えててくださったんですか?」
そう聞いてくるミーナにうなずいた。
「当たり前だろ。そういう約束をしたんだし」
俺は約束は守るよ。
たとえ、それが奴隷相手にした口約束だとしても。
その会話を聞いてたアンリが口をはさんできた。
「酒場ならこのとなりにありますよ」
「助かる」
そう言って酒場に向かった。
適当に料理を頼んで待ってるとミーナが話しかけてきた。
「お金は大丈夫なんですか?」
「なんだかんだ3万ゼルくらい溜まったし、しばらくは問題はないかな」
この数日でそれだけの額を貰えたことを考えると騎士団の月9って数字のやばさはよく分かるようになってきた。
「そ、そのごめんなさい。私なんかのためにお金を使わせてしまって」
と謝ってくるミーナに首を横に振る。
「俺が言い出したことだ。気にするなよ」
前から思ってたことだけどミーナってそういうとこ気にするよなぁ。
ほんとうに気にする必要なんてないのに。
「俺くらいの歳の男ならそろそろ子供も生まれて同じことしてるしな?」
周りを見てると特にそう思う。
俺と似たような歳の奴は子供連れて同じように食事をしてる。
「え?」
そう言って俺を見てくるミーナ。
「なに?」
なんかめっちゃ驚いてるらしい。
「イカロス様っておいくつなんですか?」
「言ってなかったっけ?」
まぁ別に大事なことでもないし言ってなかったかもしれない。
「俺もう30超えてるよ?」
30超えたとこまでは覚えてるんだけど細かい年齢まで覚えてない。
この世界での年齢は重要な要素ではない。
だから正確に年齢言える奴のほうが珍しい。
ポカーンと口を開けて俺を見ていたミーナ。
「なにさ」
「ま、まだ10代かと思ってました」
「なに?お世辞ってわけ?でもさすがに10代はきついだろ」
そんな会話をしているときだった。
給仕が食事を持ってきた。
俺の目の前にはジュージューと音を立ててるステーキ。
久しぶりにマトモな食事をする気がする。
ミーナの前にも似たような食事が運ばれてた。
ちなみにそんなに高いものじゃない。
4千ゼルくらいかな?
日本基準だと高く感じるが、日本の外食が安すぎるらしいんだよなぁ。
この世界でもっといい店に行くとこの倍の値段とかするし。
「い、いいんですか?こんなもの」
そう言って俺を見てくるミーナ。
「いいっていいって。好きに食えよ。景気づけなんだからよ」
俺がそう言ってると隣から声が聞こえてきた。
チラッと隣を見てみると7歳くらいの子供と俺くらいの年齢の父親?が座ってた。
どちらもきれいな身なりで金持ちに見える。
「パパ。いつもみたいにもっといいの食べたーい。ぶーぶー」
「これで我慢しなさい。2万ゼルの食べ物だぞ」
めっちゃ高そうな肉に文句言ってる。
(わがままなガキだな、こいつは)
ミーナに目を戻すと
「い、いただきますっ」
涙を流しながら安物のステーキを食べ始めた。
(こんな安いもので満足できるなんてな。うちの子は天使だなっ?!)
そんなことを思いながら俺は食事を進めていくのだった。
食べ終わってミーナのことを待っていたときだった。
コツコツコツ。
小さく足音が聞こえてきた。
ウェイトレスかなにかの足音かと思ってたが、その足音は俺の横で止まった。
誰かに見おろされてるような気がしてそっちに目をやると、黒髪の女が立ってた。
「あなたがイカロスさんですか?」
そう聞いてくる女。
「そうだけど、なんで名前を?」
「クエストに同行させてほしいのですが」
以前にアンリから聞いた【同伴システム】について思い出していた。
(これからも冒険者を続けるなら、ミーナとふたりじゃ厳しい場面もあるよな、誰かと行動するのに慣れるっていう意味でもありか?)
とくに夜の王の捕獲をするときにも捜索するためにも人手が欲しいしな。
話を聞くにあいつは広範囲を移動してるらしいし。
ひとりじゃ探せない。
そう思いながら視線を女に戻した。
「分け前の話をしようか」
【同伴システム】
・クエスト受注段階で人数制限の上限に達していない場合は引き続きクエストボードにクエストが張られる。
・張り出されたクエストを見た他の人間が飛び入り参加できるようになっている。
・飛び入り参加をした冒険者は同伴者と呼ばれる
・同伴者を拒否するか連れていくかの決定権は本来の受注者にある。報酬の分配についての決定権もすべて本来の受注者にある。
・上記の決定権の問題でシステムの利用者は少なく廃れたシステムである。
・ただしランクポイントのみはクリア段階で本来の受注者と同じ分獲得できる
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