霊の通り道
皆様は、霊道という言葉をご存じでしょうか?
霊道とは、読んで字の如く霊の通り道と言われています。
霊の通り道と言っても、成仏する為の通り道や、ただ立地や方角的に霊が好んで通る道、等とも言われており所説ありますが、霊が集まりやすく経由していく道だという解釈が一般的でしょう。
今回は私の知人が幼い頃に体験した、霊道にまつわる少し奇妙なお話です。
私の知人Aさんがまだ小学生の頃、父方の祖父の家に行く機会が度々あったそうです。
猟師を生業としていたAさんの祖父は田舎に住んでおり、祖父の家に行く道中は基本的に山道や田舎道ばかりだった。
父が運転する車で祖父の家に行く途中、変わり映えのしない景色にAさんは居眠りをした。
眠っていたAさんは、誰かが目の前を横切る気配を感じた。
意識が覚醒しているAさんは、自分が今父の運転している車に乗っている事を思い出し、誰かが目の前を横切る事などあり得ない事に気が付いた。
目を開き、横切ったものの正体を確認しようとした時、まるで金縛りにあったかのように目が開かない。
Aさんは意識はあるが目を瞑っている、そんな感覚に陥ってしまったのだ。
目が開けられず、確認は出来ないが確かに誰かがAさんの目の前を横切っている。
しかも、それは一人や二人ではなく、数え切れない程の大人数だった。
父の運転する車はその間も走り続けており、しばらくしてAさんは目を開く事が出来るようになったがそこはただの山中で、誰も居なかった。
現在でも霊の類を信じていないAさんだが、確かにAさんは大勢の人が目の前を横切ったのだと言う。
Aさんはその出来事を父に相談すると、Aさんの父は真剣な顔で答えた。
「……実は、あの道は戦時中に防空壕に繋がる道だった。きっと、横切ったのは防空壕に逃げ込んだ人達だったんだろう」
祖父の家に行く途中の山道、それは霊道だった。
Aさんは疲れている時や、眠い時には度々霊を見る事があると言う。
それは、人間が防衛本能として、本来見えないようにしているものが疲労によって霊のように見えるだけであって、今でもAさんは霊の存在を信じていない。
ただ、たまにAさんが見るその“霊のようなもの”は、創作に出てくる血まみれや青白い顔をした幽霊ではなく、私達と同じような顔をしていると言う。
もしかしたら、この話を読んでいる貴方も気が付いていないだけで、普通の人々に紛れいてる霊を見ているのかもしれませんよ。
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