【明編】

君の瞳

彼女はいつも真ん中の席に座って映画を見ていた。


僕はいつも、その少し後ろで映画を見る。


彼女は少し変なところで泣いたり笑ったりする。

エンドロールで泣いて、人が死んで笑う。

泣きどころも笑いどころも、微塵も理解できなかった。


でも、彼女の瞳はいつも真っ直ぐで、綺麗なことを、僕は知っている。


ある日、友達とホラー映画を見に行った。

彼女は通路を挟んで隣に座っていた。

初めて、泣いている彼女の顔を、瞳を、見た。

茶色の瞳の中に、エンドロールの文字が反射して凄く美しかった。


僕はその日から彼女の虜になった。



「怖かったなあの映画ー。」

「だなー。」

楽しそうに話す友達の話を右耳から左耳へ流し、僕は彼女を見ていた。


上下ジャージで顔はおそらくすっぴんだろうか、めがねをしている。

肌は白く透き通っていて腕も足も細い。

あまり元気そうには見えなかった。


僕は、このまま見ているだけでもいい。なんて思うほど、彼女に惹かれていた。

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