第148話 ツバキたちのパーティー

 家に帰る前に豆腐屋に寄った。


 流石に朝早いので、無事豆腐を買うことに成功。いつも飲んだ後はビスケットと牛乳だが、今日は和布わかめと豆腐の味噌汁、ごはん、卵焼き、ソーセージ、佐々木さんにいただいた鉄砲漬け、キャベツを加熱して塩昆布とごま油を混ぜたもの。


 正統派朝飯なかんじである。


 食べたら家庭菜園と庭の手入れ、沢登りは省略して家の中で筋トレ。ほどよく疲れたところでシャワーを浴びて朝寝と洒落込む。


 家庭菜園の手入れと草に振り回されているが、自由気ままな生活である。


 自宅ダンジョンをぐるぐる回り、『強化』のカードを手に入れる。


 食材カードはすでに消費しきれんほどあるのだが、カードに記載された内包数がちょうどいいものを選び出すとぐっと減る。


 不要なカードは売りたいのだが、あまり放出しすぎてもダメな気がするので悩みどころ。価格維持の面でももちろん、あるならこっちにも回せと言われそうで。


 ダンジョンを失った時という不確定な理由ではなく、そろそろ100層以降にいくことになるので、浅い層のものは提供数が減ることが確定しているのである。


 さすがに魔物を倒して復活するまでの数日で回れる層の数ではなくなる。ダブつくカードが気になってしまうのだが、このままストックしておいて、回ることが減った時に売りに出す方向か。


 そうして生活していると、ツバキからメール。


 スメラギのダンジョン攻略は120層で終えたらしい。ツバキたちは道中の魔物だけでも101層からキツく、そこで止まったそうだ。


 100層からまた一段強くなるからな、ツツジさんアイラさんクラスの新しい装備を揃えんと無理だと思うぞ。


 私のように回避するのではなく、ツバキもカズマも受け流すことが多い。上手く魔物の攻撃を流していたが、100層を超えると技術だけでは足りない。


 あの様子では受けた途端力負けして、攻撃を流すどころではなくなる。攻撃を何割かはくらう羽目になるだろう。


 まあ、ツバキたちの行けた層――リトルコアと戦っていないので、『到達層』とは認められない――は本題ではない。帰ってきたので、消費した分の薬類を発注する話しである。


 とりあえず今日は装備のメンテナンスやら、反省会やらで市のダンジョンにいるらしい。装備のメンテナンス作業中の明後日まで休みにするそうだが、リトルコアが復活しないうちに99層までの殲滅に行きたいようだ。


 メンテナンス明けを待つのも面倒なので届けに行こう。


 今から届けに行く旨を返信し、ジャージからスラックスに着替え、シャツの上に夏用のジャケットを羽織る。


 一旦、自宅のダンジョンに降りて、薬の数の確認と行ったついでにするための補充用のカードの確認。


 『翠』の夜の予約は間に合うだろうか? 無理か。よし、夕食は『ODA』でパンを買って帰ってくる方向で。


 ツバキからの了承の返事を確認し、市のダンジョンに向かう。


 って、忘れていたがスメラギのせいで市のダンジョンは混んでいるんだった。時間貸しのブース付近にもそこそこ人がいたし、待ち合わせの会議室に向かうまでも無駄にうろついている人が多い。


 時間を確認して、会議室のドアをノックして返事を待ち、中に入る。


 待ち合わせと検品のために借りているのではなく、ツバキたちのパーティーの反省会の最中。話し合いと確認作業の休憩時間に納品である。


「こんにちは。今日もいい指先……」

「休み時間にすまんな」

 検品の係はスズカなのである。


「スズカ、丸出し」

 ジト目で言うのは、魔女クレハ。


 オレンジ色の髪の、小柄だがひょうたん体型の女性だ。黒いワンピースに黒い尖り帽子という、魔女らしい装備をしている。


「すまないな、オオツキ。スズカが絶対迷惑をかけてるだろう?」

 回復オヤジ。


 こちらは浅黒い肌に白髪、顎を縁取るように覆う白髯。回復職だが、肩幅も胸板もある上、顔と体に傷がある。


「触られなければ問題ない」


 あまり話すことはないのだが、パーティーメンバ―とも一応顔見知りである。


 ツバキたちの息抜きの配信に混ざるようになってから、こうして一言二言声をかけられるようになった。


「相変わらずぶっきらぼう〜」

 弓と付与のアオイ。


 こちらは茄子(なすび)体型の子供の姿。チューブトップにキュロット、ハーフブーツにいかつめのグローブ。


 私に話すことがないので、会話はすぐ終わる。


 納品を終えて、自分のブースへ戻る。売った分を作り足してから帰るつもりだ。


 そして何か見た顔が個人ブースの通路をうろついている。



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回復ジジイ→オヤジに変更しました

ジジイ呼びキャラが多いな?と!

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