第140話 雑務
もう一度『米』のカードを開け、今度はちゃんと米なことを確認。研いで浸水させている間に、具材の用意。
出汁を取った後の鰹節を乾燥プレートにちょっと掛けて、その後炒って醤油と砂糖で味付け。白胡麻も少々。
同じく出汁を取った後の昆布も佃煮に。ご飯を炊く間に適当な大きさの魚を開いて、乾燥プレートで一夜干しのようなものを作る。
鮭とたらこも焼いて、おにぎりの大量生産。……これ、おにぎりでなくてもよかったか? 白米とおかずとして戸棚に突っ込めばよかったと思いつつ、にぎり始めたのでにぎる。
『化身』なので、熱いとは思うが火傷するほどではない。【火の属性】もそれなりに上がっている。生身でやっていたら大惨事だったが。
黒猫はどうも「普通の料理」を食べたことがないようなので、出汁ガラ再利用の具はともかく、定番の具材を選んだ。
途中、干物各種がいい具合になったので、焼き上げて戸棚に突っ込む。
これだけおにぎりと焼いた干物を作ればいいだろう。――パンを2、3斤平気で平らげる黒猫の胃袋を思い、もう少し作ることにする。
その前にワインを【開封】、出たのは赤。よし、私の昼は肉を焼こう。塩胡椒した市のダンジョン産の牛肉、ついでに舞茸と小蕪を一緒にオーブンに入れる。
私の肉を焼く間、大量の唐揚げを揚げを作る。唐揚げに使わない部位は私の明日の晩酌のアテ。
ダンジョンの聖獣も栄養バランスは考えるのだろうか? ダンジョン内でも食わないと耐久や体力が落ちるが、必要栄養素があるとは聞かない。
ダンジョン素材に栄養素はほぼなく、あるのは動くためのカロリーだけである。カロリーも外のものより少ないのだが、あるものはあるのである。
ちなみに、『化身』での運動も『生身』に少しだけ反映されるのだが、微々たるもの。微々たるものではあるが、『生身』に影響があるため、リハビリなどにダンジョンでの運動が取り入れられることもある。
が、リハビリはともかく、外で食い過ぎたら『生身』で運動するしかない。
一応、微々たるものではあるが黒猫に影響があるかもしれんので、大量のサラダを作る。私も確保したいが、【開封】するにはレタスやサニーレタスの一枚あたりの封入個数多かったとも言う。
本当は黒猫への食事は、食べきれない大きさの魚を料理しようと思っていた。
が、『翠』で綺麗に捌かれ、緑色の紙に包まれ、そのまま冷蔵庫で寝かせられる状態のものを沢山貰ったのだ。包み紙には食べごろの日にちまで書いてある親切仕様。しばらく魚を捌く必要がなくなった。
――よし、肉も焼き上がったし、黒猫は留守だがテラスで飯にしよう。危険はあるが、海と空、私の家の山の見晴らしとは違った開放感が素晴らしい。
料理とワインを運び、食べ始める。ワインは初心者なのでよくわからん、渋みを感じる赤は肉に合っているのではないかと思う。
日本酒も大変だが、ワインの仕分け作業も大変そうだ。名前からいって海外産ワインで大量に種類がある気がする。日本でも山梨や長野にワインがドロップするダンジョンがあるが、それよりものすごく多いような気が……。
ワインは鷹見さんに投げたものの一つである。他にブランデー、大量のキャベツ、カカオ。藤田さん経由でサンプルのドロップカードは鷹見さんに届いているはずだ。
丸ごとドロップした魔物の始末は、直接相談するつもりでメールには記載していない。
食べ終えた頃に魔物が一匹。
後ろに飛ぶ用意をしつつ距離を測り、『苦無』を飛ばす。予想通り弾かれる。
前回よりは強化したのだが、足らん。いっそ『苦無』だけ先に強化してしまうか悩みどころだ。
しばし間をおいて片付け、自分の一部屋目に戻る。放置していたカードの整理と、弾丸の作成をする。
カードはまず、おざなりに確認した食材以外の素材を何に使うかで分類するところから。80層以降のカードは正直扱いきれないので、売り払うか迷うところ。
弾丸用と薬用が多く、補修用なのか革と布が少々、その他。何に使うか不明なものは書き留めて、後で調べる。
今のところ椅子に座ったまま届く範囲の引き出しには生産用の素材、立ったまま取り出す位置の引き出しには食材を入れている。
カードの種類が多岐に渡るので、整理用の引き出しの仕切りを買い足そう。食材がはみ出してきた。
種類ごとに仕切っているため、場所によっては空きがあるのだが、足りない。
テンコのダンジョンで拾ったものは、まとめて入れておいていいか。そう拾える機会があるわけでなし、構わんだろう。
酒の引き出しの仕切りは、日本酒は土地ごとに並べていたが、大吟醸や純米酒など種類でも分けるべきだろう。『翠』で判明した辛口甘口などの味で分けるのも捨てがたい。
ビールは今のところ国ごとで問題ない。ワインとブランデー、その他の酒はどうするか。
使い勝手の悪い封入数が多いものはオークションへ、封入数の少ない【開封】しやすいものは保管。
嫌いな作業ではないが、時間を取られる。
……浸水したもち米は、頂き物の塩漬けの山菜を出して蒸しおこわにするつもりだったのだがなかった。
学習しない猫がうろついているらしい。
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