第121話 テンコのダンジョン51層〜
そういうわけで51層。
出現した魔物はアラクネと赤茶色をした蜘蛛。魔物本体はどうとでもなるのだが、通路に張られた巣が面倒だ。ユキのように槍持ちならば、穂先で絡め取って道をあけるのだが……。次回は棒を持ってくるべきだなこれ。
……。
さっさと進みたいのに面倒臭い。
投石系の魔物の能力カードを使用し、通路を塞ぐ蜘蛛の巣をいくつか破壊する。わらわらと集まってくる蜘蛛、流石に数が多い。
が、50層の柔らかな体の蜘蛛ならば、苦無で貫通するので余裕である。巣を作った本体を倒せば、巣もまた光の粒となって消え去る。時々消えないものもあるのだが、ここのものは無事消えた。
ここのドロップも糸やら布やらだが、『ルビー』が少しでた。50層を超えると宝石と呼んでいいレベルが出始める。
浅い層の宝石類は透明度が低かったり、肉眼で見える不純物が多かったりで、ダンジョンのドロップ的には宝石の分類だが、外ではそう呼ばれないものばかりだ。ドロップが少ないせいで、浅い層のものもコレクターがいたりはするが。
ああ、能力カードについてはテンコを連れてこなければどうにもならんが、『オパール』についてはうちの50層で出たものだと買取りを打診してもいいのか。
ギルドもテンコたちも私が単独でダンジョン攻略をしているとは思っていない節がある。テンコはともかく、レンとユキは私のダンジョンの攻略パーティーのメンバー、誰を想定しているのだろうか。
……そこまで具体的に考えてなさそうではある。
50層以降のドロップカードを出しているせいで、鷹見さんはそろそろ色々考えていそうだが。
真実に行きあたったとしても、おそらく気づかなかったふりをしてくれそうなのでいいとする。店で美味い物を食うためには、食材を外に流さねばならないのである。
さっさと60層まで進み、リトルコア。
色がついているとわかりやすいサラマンダースライム。サラマンダーのオレンジよりの赤い色に、スライムの半透明。纏う火を投げてくる。
色がついとるだけでやることは変わらない。自宅ダンジョンではスルーすることが多いが、一戦目でも苦労した覚えはない。
ドロップは『光の魔法石(大)』『闇の魔法石(大)』と『火衣』『火皮』あたりにいい値段がつく。魔法石はうちでも落ちたが、利用範囲が広いので同じものが落ちても不思議ではない。
『覚えの楔』を60層に打ち込み、休憩。茶を飲んで、フロランタンを食べる。私のつくる料理に付与効果はないが、一応外の料理を持ち込んだものより気力体力が回復する。
真面目に【生産】物として作れば付与効果もつくのだろうが、こう、明らかに食材以外のものが材料としてレシピに載っているのを見て諦めた。以来、行ったことのない深層でなければ付与効果のある弁当は食っていない。
ダンジョン用の飯については黒猫の気持ちがよくわかる。
休憩ののち、上に戻る。『帰還の翼』はいざという時のためにストックがいくつかあるが使う気はない。1つ4桁万円前後である、しかも1人用。
自分で拾った物と、仕事で支給された物を使わずに徒歩で帰ってためた物。後者は酒ダンジョンだったので、さっさと仕事を済ませて目当ての層の魔物を倒しながら帰っただけだが。
あの時は【収納】する物の取捨選択に悩んだ思い出。
帰りの道中は来た道をショートカットできるところはして、時々移動してきた魔物を倒す程度なので時間はそうかからない。往路も時間をかけた覚えはないのだが、やはり道がわからんというのは大きかったようだ。
とりあえずアリバイ工作に21層から29層の魔物を倒すこととして、30層で休憩。ずっと走っているので体力を消耗するのだ。
特務時代より体力も速さも増えた。しばらく前は装備も返却し、真面目にダンジョンに潜る気もなく、この期に及んでレベルが上がるとは思っていなかった。
まさか自分が装備を揃えてダンジョンに通うタイプだったとは。酒の力は偉大である。
スローライフにも向いていないようだし、単に自分自身のことがわかっていなかっただけかもしれんが。
休憩を切り上げ、浅い層の魔物を適当に倒す。これでとりあえずテンコのダンジョンは終了、昨日の夜から始めて今は22時ごろだろうか。
家に帰って寝て、朝一で行けば自宅ダンジョンの攻略にも間に合う。弁当に詰めるものはここ用と一緒に用意してあるし、問題ない。
ただし、イレイサーが1部屋目にいたらだが。テンコは夜型で、特に生産作業は夕食後から明け方までの時間帯にすることが多い、と言っていた。
なので、夜に合わせて帰ってきたのだが、イレイサーの方はどうだかわからん。同じ話を聞き、夜にいるようにするけれど2時が限界とか言っていたのだが、その前にユキはレンの攻略済みの層まで到達できたのかどうか。
30層分の攻略を始める前に、準備不足に気づいて1度戻るのではないかと踏んだのだが。
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