第120話 とりあえず確認してから
不安材料は、イレイサーの部屋を経由しないとこちらに来ることができないこと。黒猫便は回数に制限が……、このダンジョンでリトルコアの自身初討伐を果たせば、その分を回せばいいのか?
通常のダンジョンとは違うが、以前黒猫が自宅ダンジョンの攻略中に迎えに来てイレイサーのダンジョンに移動したので、持ち主の許可の有無は要確認であるが移動自体は可能なはず。
市のダンジョンなどは広すぎてリトルコアにたどり着くまで無駄に時間がかかる。だが、このダンジョンならば。行きと帰りの2回分必要になるが、何とかなりそうだ。
ひとつ問題をクリア。
あとは能力が戦闘向きだとばれたら、イレイサーの世話を投げられそうな問題だけである。面倒すぎる。
私は人に教えるのには向いていない、というか人付き合いに向いていないのである。
私がちょっと後輩の相手をすると、冒険者の育成というより、下僕の育成とか、トラウマ製造機とか言われたからな。そもそも私に他人の育成責務はないし、絡んでくるのが悪いと思うのだが。
延々と絡まれるのも鬱陶しいので、絡まれて即潰していたのがいけなかったのだろうとは思うが、絡まれ続けることを我慢する選択肢も譲歩して穏便に納める選択肢もないのである。外野に何を言われても特に支障がなかったしな。
今はご近所付き合いに支障が出るので、我慢して穏便に済ませるという選択肢が出現している。が、原因に関わらないことが一番だ。
まあいい。
とりあえず50層のリトルコアスライムが、どんな魔物か確かめておこう。偶数層のリトルコアを含むスライムが、うちのダンジョンと同一のスライムというのはほぼ確定だが、確定だからこそ何が出るかわからない。
他の魔物の姿と能力を写すスライム。同じ『火炎鹿』の姿を写しているのか、それとも別の何かか。
もし速い攻撃を仕掛けてくる魔物の姿をとっていたら、私自身はともかくテンコに危険が及ぶ。自慢ではないが私は他人を守ることには向いていない。能力的なことうんぬんは別にしても、そちら方面に全く意識がいかないのである。
せめてどんなリトルコアか確認してから悩もう。
そういえば、イレイサーが失敗した場合のことは聞いたが、協力者が『化身』を失った場合のことは確認しなかったなと思いながら、リトルコアへの扉を開く。
結果、『火炎鹿』でした。
ドロップもほぼ同じ。少し目新しいものは、私のダンジョンでは1度目に出たあと姿を見なかった、『オパール』がドロップしたくらいか。
黒猫、手抜きしすぎではないか? 時々、攻撃対象の増加で行動を変える魔物がいるが、『火炎鹿』は行動パターンに大きな変更はないはずだ。対処は簡単である。
さて昼。
曲げわっぱの弁当箱にごはん、大葉とサワラの西京焼き、きんぴら、卵焼き――【収納】の時間停止のおかげで、ごはんも炊き立て熱々である。
【時間停止】と【カードスタック】が選択に出た時、【時間停止】を選んで本当に良かった。おかげで熱々が食べられる。
【カードスタック】は、数字違いの同じ種類のドロップカードを1つのアイテムとして所持できる【収納】の能力。
今現在は同じ種類のドロップカードでも、カードに記載されている個数が違えば、別枠使用となり嵩張りまくっている。効率的に行くなら断然【カードスタック】を選ぶべきだったのだが、欲望を優先した。
【時間停止】と【カードスタック】が、もし対となる分岐であるならば、【時間停止】を選んだ時点で【カードスタック】が分岐に出現することはほぼない。
前回出た【収納】の分岐は、【収納増加】【排出距離】【回収距離】【物理防御力】【魔法防御力】【修復促進】。
【収納増加】など対がない分岐先もあるし、字面的にわかりやすい対もある。そしてあまり関係がないようなものが対であることも。
どちらにしても【収納】の分岐は遥か先であるし、【カードスタック】は諦めた方がいいだろう。
【収納】の強化で仕舞える枠はおそらくトップレベルに多いのだが、戦闘の都合上魔物の能力カードをストックしておかないとならないため、気軽に使える枠は半分まで圧迫されている。
それもダンジョンをもらったおかげで、一部屋目に余分なカードを置いておけるため、大分楽になった。
スープはこちらも温かいトマトスープ、酸味がある同士なせいかチーズサンドとよく合う。飯の温度というのも大切だ、私は選び直しができても【時間停止】の方を選ぶ。
選択といえば、テンコ。
テンコもこのダンジョンは失いたくないだろう。いざという時、テンコに対応するイレイサーの対象を消す方向で話を持っていってもいいが、そうするとテンコにイレイサー二人の面倒を見る理由がなくなりそうである。
どうやら3人は交流を持っているようだし、もう少しテンコにイレイサーに対しての情が出たところを狙おう。
テンコにはさっさと能力の底上げとレベル上げをしてほしい気持ちもあるが、柊さんのお孫さんであるし、多少の配慮は。押し付ける気満々だがな。
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