第115話 調整
ユキから強くなるためにはと相談メールがきていたが、攻略中の層からプラス30層、一部屋目に帰らず攻略してみろ、と返事をした。
イレイサーのダンジョンは、途中で一部屋目にもどることも、攻略地点からの再開も容易。
通常のダンジョン攻略の経験が少ない二人は、感覚が軽すぎる。攻略者というよりは、週末や仕事帰りにダンジョンに寄るライトユーザーのように見える。
詰まっているところからプラス30層は難易度が高いだろうが、その分真面目に準備を整えるだろう。たぶん。
整えきれなかったら最悪死に戻るだろうが、問題ない。イレイサーのダンジョンはそれが可能だ。
強制的に一部屋目行きになるわけだから、ミッションは失敗し、やり直し。
強くなればよし、やり直しを繰り返すなら、しばらくうるさくなくていい。
鮎やヤマメの礼に、私に被害が無い――彼らにとって有用なアドバイスを送った。
そして憂なく、土鍋で鮎飯。
少し変わり種で鰻のタレ的なものを混ぜている。出汁の味で上品に仕上げるのもいいのだが、おかずが鮎の塩焼きなので、少し甘辛い味を。野菜の天ぷら三種、豆腐の田楽、お漬物は沢庵、わかめと豆腐の味噌汁。
明日葉の天ぷらは衣薄く、枝豆は剥いた豆をいくつかまとめて小さなかき揚げに、ズッキーニはよく火を通してとろりと。
土鍋ご飯は正義である。
ただちょっと食いすぎるわけだが。ダンジョンに行く前に、生身で運動をするべきだろうか。
自宅のダンジョン攻略は1層から79層を繰り返している。黒猫の食欲のおかげで、主要な調味料と主食となるものが落ちるようになったので、ガツガツせずに余裕である。
まあ、79層のドロップとしては味がよろしくないというか、普通だったが。スライムが落とすドロップの種類も多いし、味まで望むのは高望みというものだろう。
さらに深い層で、おそらく同じものがドロップする気はする。そちらはきっと、層の深さなりの味のはずだ。
頼んでいた装備、最初に出来上がってきたのはツツジさんの革靴。どういう仕組みか、ダンジョン内であれば滑らない不思議。
滑るといえば、沢の中を歩く用の靴も用意せねばならんだろうか。今までの人生、サンダルという選択は子供の頃まで遡るのだが。後で他に何かあるのか検索してみよう、蓮や一馬を基準にするのは危険な気がする。
つらつら考え事をしつつ、79層まで終わらせる。もはや、ただの作業と化している。明日は80層以降に進むつもりだ。
すでにレベルは上がりづらく、79層までを10往復しても上がらんので進む頃合いだろう。レベルアップのカードの引きは全て良しとはいかんが、まあまあの結果だ。
属性のカードもそれなりに出たが、悪くない。基礎能力の上昇はわかりやすいのだが、属性によるさまざまな能力強化もある、はず。
そのへんは、はっきりした差が現れるまでレベルが上がった者が少ないため、信憑性にかけるデータなのだが、体感的に色々上がってそうではある。
『運命の選択』による【鑑定】持ちならば、どうなっているのかわかるのだろうが、見せるつもりはない。見られるのは属性値だけで、隠しステータスとも言われているので、見てもわからんのかもしれんが。
『強化』のカードも大分集めた。『苦無』と『刀』、『コート』に『腕輪』、そして『変転具』といくらあっても足らんのだが。
うちのダンジョン、『強化』カードのドロップ率は体感できるくらいに上がっているのだが、なにせ政府時代に定期的に配給があった上、割り当てられてあまった予算も全部突っ込んでたからな……。
一応、それよりは手に入れている枚数は多い。多いのだが、武器防具が一つずつ増えたので、強化したい対象も増えた。
しばらく強化せずともいいと思っていた『苦無』も、黒猫のダイニングのお陰で、俄然強化が必要になった。
ダンジョンで通常あのレベルの魔物に遭うのは遥か先――というか、前人未到。だからこそ、あの半分安全地帯のような場所でスキルを奪取するチャンスがあるのならば、ものにしておきたい。
300層の魔物のスキルが使えるようになれば、この先の攻略が楽になることは間違いないのだから。
それでも『強化』カードは、10枚に一枚はとっておくようにしてる。先に進んだ際、特に戻れないボス戦の最中に必要になる能力があるかもしれんので。ダンジョンのソロ攻略は安全第一だ。
79層を終えて、上に戻る。80層以降をクリアして戻る時、万全ではないかもしれんので、55層以降の敵は殲滅と末尾5層のボスは倒してある。
79層まで、予定より早く終えたので40層以前の敵もできるだけ倒しておこう。浅い層は通路だけ倒してある、明日の80層行き直前に復活するよう調整しているので、行きに殲滅予定。
85層のリトルコアの様子を見てだが、90層まで開けてしまいたい。
が。
テンコから、ダンジョン解放の連絡。
イレイサーがダンジョンに籠るそうで、テンコもちょうど生産で自宅ダンジョンに籠りがちになるため、行き来できる間はどうぞとのこと。
――滅多にない機会。
が、イレイサー!! 貴様ら準備早すぎではないか!?
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