第102話 イレギュラースライム
本日は雨、家から出なければ雨もいいものである。昨日、掃除も洗濯もしたしな。
今の季節、晴れれば暑く、雨が降れば少し肌寒い。朝食はベビーリーフという名の間引いた野菜のサラダ、半熟目玉焼き、バナナとベリーが入ったヨーグルト。
フレンチ系の創作料理『ODA』にパンを分けてもらいに行った時に、ビーフシチューをもらったので、今日は洋食である。
パンは事前に電話をしておくと、店で出す分より多めに焼いてくれる。受け取りに行く時、こちらは何か食材を持ってゆく。で、パンのほかにビーフシチューやらパテやら色々持たされるのである。
おうちでプロの味。
店で出すもののついでなので、パンの種類は選べない。というか、選ばない。リクエストをすれば叶えてくれそうではあるが、それは負担になるだろう。長くお付き合いを続けたい。
それに癖があって合わせるものに迷うものも時々あるが、どれも美味しい。だいたい3、4種類でバゲットは必ずある。
今切ったパンは黒いのでライ麦パンか? ずっしりとして目が詰まっている。これにチーズを載せて、テーブルまで持ち出したオーブントースターで焼いて食べている。
南側の格子を開けて、雨にけぶる山を眺めながら優雅な朝食。ビーフシチューもパンも美味い。鷹見さんにもらったお高いコーヒーも入れた。
晴耕雨読。
朝食の後は読書、しばし平和な時間を過ごす。こうして英気を養った後、ダンジョンへ。
草や虫と戦うより遥かに楽である。
78層のスライムは薬草の類を落とした。おそらく火炎耐性薬や、毒耐性薬などの素材なのだが、私には扱えないのでしばらくカードのまま塩漬けだ。回復薬系統なら何とかなるが、他の薬は扱ってこなかったので難しい。
イレイサーが必要とする層に到達するまでには、多少作れるようになっておいた方がいいだろうか? 今のところ回復薬と弾丸しか求められておらんが。
市のダンジョンに通うようになって、消耗品の類はドロップを売った金で買っても変わらんと気付きそうなものだが、特に何も言われない。
弾丸の方は特殊なものもあるし、と思うのだが、むしろ回復薬を押される。レンが無茶なダンジョンの進み方をして、必要なのかとも思ったが、量を求められることもない。
イレイサー的に私に回復薬を作らせることに、何かあるのだろうか? 生産は本職ではないので、期待されても困るのだが。
79層、スライム。
おい。何故だ? 奇数層は食材だろう! 出る層を間違えているぞ、貴様! 市のダンジョンで浅い層でスライムが続くように、どこに出てもおかしくはないのだが、このダンジョンに限っては奇数層で出るのはおかしいだろうが!
約束を違えられた気分になり、少々腹を立ててスライムを倒す。ドロップ、『米・3』。
……。
黒猫……? お前、この層のドロップ、当初と変えたのか? 『麺・5』、『みりん・1』、『味噌・7』、『パン・4』。
主食と主な調味料をぶち込んできたな? 『じゃがいも・2』とか『まめ・3』は、黒猫的によく使う素材なのか。
くくりが大雑把すぎんか? 『味噌』を開けて、出てきたのが白味噌か赤味噌かでだいぶ違うんだが? ドロップカードの絵で見分けるのも限界があるぞ?
頭の中でそらっとぼける黒猫を思い浮かべつつ、スライムを倒す。――特殊能力を使って、無駄によく弾むスライムだ。
まあ、主要な調味料や油が揃うのは有り難いので、もやもやは胸に納めて文句を口にするつもりはない。ここは隅々まで回って、ドロップを回収し、鷹見さんに泣きつくコースだろう。
まだ酒の判別も全部終わっていないのだが、私一人では無理だ。味噌は見た目でわかりそうだし、米はおそらく若い番号のものがメジャーなのだろう。幸いなことに出しても保存が利くものだ。
パンと麺類はどうするか。素材や酒ならともかく、できているものを料理屋に持ち込むのもな……。麺類はいけるか? パンは黒猫に片っぱしから出していく方向で。
とりあえずの丸投げ方針を決め、スライムを倒してゆく。気分的に疲れたので、本日は79層で終了。
元々80層のボスは、もう少し自身と装備の強化をしてからのつもりでいたので、魔物の復活した浅い層を回ることを中止しただけなのだが。
1部屋目に戻り、とりあえず一番メジャーな米と思われる『米・1』を【開封】、30キロの米袋で出たらどうしようかと思ったが、2キロほどの可愛らしいサイズ。ほっとした――が、玄米である。
黒猫……。
とりあえず今回は玄米のまま炊く方向で。そのうち少量を精米する家庭用精米機買うか……?
食に詳しいのか詳しくないのか微妙だな、黒猫。素材は知っているが、料理の工程を知らん感じか? だからこのダンジョンのドロップが牛まるまる一頭だったり、カオスなのだな?
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