第84話 植える時期
配信の収録を終え、ダンジョンの一部屋目に戻る。
とてもカオスだった。そして、私が選ばれたのは、もしかして魔法での回復だと、タイミングによってはさらにカオスを呼ぶことになるからか?
薬をぶつけて回復する方法は、魔物にぶつけるようなことをしなければ、積極的に狙われることは少ない。時々より速く動くモノに飛びついてくるのもいるが。
「はぁ。手がいっぱい、編集楽しみ」
……手フェチのご指名だったな。考えすぎた。
戻る道中、レンはカズマに懇々と諭され、ツバキに一言二言厳しいことを言われ、ユキに頷かれていた。言葉ではなく、実戦で少し放し飼いにして痛みと共に覚えさせた方が早いと思うが。
あと多分、レンはグローブ主体で戦闘を考えている。イレイサーはグローブと銃、両方使えるはずだが、さっきの戦闘は
説教が響かないわけである。
接近して0距離射撃ではなく、銃を撃ちながら接近するか、グローブで殴った後距離をとる時に追撃で使うか考えろとメールして、ついでに距離によっては素手やナイフの方が早いとわかる動画でも添付しとこう。
撃つ前に無効化できるぞあれ。
私としては、レンの普通の『化身』でのダンジョン攻略がカオスでも、イレイサーの時に強ければいいのである。
ついでにカオスな方が、会話がなくて快適だ。呆れた顔をして一歩引いてればいいだけだし。コミュ障舐めるな。
なお、レンが飛び出してゆくことについては早く痛い目を見ろと思っている。回復薬が間に合うくらいの怪我で学習しておけばいい。あとは諦めてユキかカズマがリードを持つとか。
一部屋目に戻って解散。次回の収録日は、メールで相談予定。薬の確保があるだろうから早めに連絡する、とのこと。
揃えるのに手間がかかるというより、薬の類は時間経過と共に劣化するので、ストックしておくことが難しい。なので、普通は攻略日に合わせて薬の準備――なのだが、私は【収納】にストック可能。
収納可能な量も収納中の時間経過がないことも人に話していないし、今後も話す予定がないので、相手の思い込みをスルーしたまま放置。早めに連絡が来るのはいいことだしな。
市のダンジョンに来ているついでに薬の生産。本日減らした気力の回復薬を多めに、ついでにギルドへの追加で納品しておこう。個人ブースが快適なので、確実な契約更新のために貢献しておかんと。
……薬用の瓶が残っているので、消費したい。かといって、回復薬をあまり大量に売りにだすのも、日持ちがせんものだし価格が下がる。
兼ね合いが難しいなと思いつつ、ダンジョンを出る。外出のついでにホームセンターを覗く。
オクラ、トウモロコシ、大豆、ブロッコリー。その他この季節に植えるべき苗が並んでいる。種より確実な気がして、苗を購入する私だ。あと、買ったらすぐ植えればいいので、時期を考えなくていいことが大変楽。
自宅のダンジョンで色々出るようになったが、栄養面では外でできた野菜を摂ることは必須。育った立派な野菜も売っているが、自給自足にまだ未練があるのだ。
トウモロコシは背が伸びるだけあって、難易度が高そうなイメージ。大豆は少量では微妙ではなかろうか? ブロッコリーいってみよう、ブロッコリー。
葉ネギもあるな、ネギは虫がつきにくそうだし、確か植えておけばまた来年自然に生えるくらいだと柊さんが言っていた気がする。薬味にもなるし、葉ネギも購入。
柊家からもらってきた紫蘇は元気だ、あとは茗荷や山椒も欲しい。いかん、欲しいものが薬味だ。
キャベツもいっておくか? いや、柊さんが作ってるので、おそらくまた頂く。オクラにしとくか。野菜は少しずつ色々なものを育てる方向で。
そういうわけで苗を買ったんだが。
買ったからには、時間のかかる寄り道ができないので、外食して帰れないという現実に気づく。仕方がないので豆腐屋に寄って、油揚げを買って帰宅。豆腐は例によって売り切れ。
とりあえず苗を植えてしまい、食事の準備。
鳥の唐揚げ、ご飯と油揚げとネギの味噌汁、漬物。一応サラダ、チーズ入り。
揚げ物はいい。揚げれば大抵の物が食えるし、温度さえ間違えなければ美味しくなる。もちろんプロと比べたら雲泥の差があるが。
掃除は面倒この上ないのだが、廃油をダンジョンに捨てられるようになったので気が楽だ。鶏がドロップするので、鳥の唐揚げ率は増加した。
頂き物の野菜の大量消費や保存のために、越してくる前よりははるかに料理の腕が上がったのだが。メインは揚げるか焼くか捌くかしかしてない気がしてきた。
鳥の唐揚げは噛めば皮と肉の間の熱い汁が流れる。味付けに使ったニンニクと醤油の香り。ビールが欲しくなるのだが、今週は鷹見さんと痛飲することになると思うので、今は控えている。
サラダと漬物で口の中の熱さを緩和する、やっぱりビールが欲しいぞこれ。揚げ物は危険だ。
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