第79話 念願の
上機嫌で戻った一部屋目で、カードの整理。顔がニヤつくのは仕方がない、誰も見ておらんのだから良しとする。
アイラさん行き、ツツジさん行き――は少ないな。本来、部位単位で落ちるはずが丸ごと出ているせいで、皮の類の出が悪い。いや、丸ごとなので出てはいるのだが、ダンジョン内での生産素材に向いていないというか。
イレイサーも布系の服なので、そのせいかもしれんが。薬と弾丸以外イレイサーに言われていないのでスルーしているが、黒猫には装備を直すことも提示されていたはずだ。
布系はテンコも扱えるから、私に依頼が回ってこないのだろう。正しい判断である。
イレイサーへのアイテム受け渡しの箱に弾丸系のカードを突っ込む。
「……」
少々考えて『加賀の絹』『丹後ちりめん』、和紙系のカードを1枚ずつ詰める。そのうち付与を頼んでみるつもりでいるので、イレイサーを経由したテンコへの様子見カードともいう。
ダガーのカードはとりあえず道中で出たカードを【開封】して、九十九本を【収納】する。【収納】が圧迫されるが、私はソロなので攻撃手段は色々あった方がいい。安全第一である。
リトルコアから出たものは、とりあえずカードのまま一部屋目の棚にストック。少しだけ出た半貴石と貴石は、これもカードのまま。
少しまともな宝石も混じるようになったが……。面倒なので弾丸の素材にするか? ものによってはコレクターに高く売れるのだが、相場を調べるのが面倒臭い。いっそ全部オークションに登録するか。
食材のカードは種類別、数字順に。今日の酒の肴は、カサゴの他、カワハギの刺身とクルマエビの塩焼きにしようか。
酒のカードは1枚はこれから呑むために【開封】するとして、『翠』に持ってゆくのは全種類、数字は1か2の物を選ぶ。呑み比べて、鷹見さんが気に入った物を鷹見さんに贈ろう。
種類が多いので、店に置いてもらって呑みに行く方が良さそうだが。家で全種類開けると流石にいつ空にできるかわからん。
ドロップした魚類と使えそうな野菜を選び、『翠』に行く準備は万端。その前に鷹見さんの予定を聞いて、『翠』の方にも問い合わせねばならんのだが。流石に客のいる時間帯に日本酒を開けまくるというわけにもいかん。
さて、今から呑む酒はどれがいいか。数字が1のものを抜き出し、裏返してアイテム名が見えないようにして、1枚選ぶ。
『福井の地酒・1』。
【開封】すると、出てきたのは黒い瓶。ラベルは無し。少しひんやりしている瓶を一旦【収納】し、カード整理を続ける。呑むのが楽しみだ。
カードの整理を終え、少々迷う。
風呂と予定を確認するメールをどのタイミングで済ますか。早く呑みたいのだが、呑んでからは絶対面倒になる。やることはやってしまおう。
ダンジョンから出て、メールを二通。私からの誘いではあるが、私の予定はどうとでもなるので、忙しい鷹見さんと『翠』で予定を決めてもらう内容。もちろん日本酒が出たことも申し添える。
シャワーだけ済ませて、再びダンジョンへ。
『カサゴ』の【開封】、小さい。
よし、唐揚げ! 下処理をし、バットに乗せる。カワハギの薄造りはダンジョンで終わらせ、生ゴミは所定の行き止まりの通路に捨てに行く。
臭わないゴミ処理素晴らしい!
家の台所で油を用意して『カサゴ』を唐揚げにしつつ、塩をふったクルマエビを焼く。それぞれ皿に盛り付け、カサゴの唐揚げとクルマエビにはレモンを添える。
準備万端、いざ封切り。爽やかな香り、少し梅の香に似た甘さも。そっと器に注ぎ、もう一度香りをかいで一口。雑味がなくどこまでもクリア、ドライ。
カワハギの薄造りには肝醤油、紅葉おろしと小口ネギの薬味も。淡白なカワハギの身に濃厚な肝、気分で紅葉おろしとネギの量を変え、口に運ぶ。
手乗りサイズのカサゴの唐揚げは、腹を開き、背に中骨に届くまで切れ込みを入れてある。2度揚げで骨までサクサク。白い身はふんわりやわらかく、厳ついカサゴの顔とは反対の味。
焼いたクルマエビは匂いが香ばしく、これもまた美味い。
そして合間に呑む酒が美味い。だいぶ幸せなんだがどうしたらいい? うん、とりあえず酒用の冷蔵庫だな。注文しよう。
ダンジョンをもう少し進む気だったので、現在真昼間だ。太陽が燦々とそそぐ中、昼酒の背徳感。
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