第77話 現物ドロップ
私怨混じりで蟻のリトルコアを倒した後、66層はスライム。
出したのは紙。『本美濃紙』『石州半紙』『細川紙』『越前和紙』『中性紙』『新聞紙』に酒のように番号が入っているもの。『新聞紙』はなんだ? また語呂合わせか?
番号は紙の大きさか使用用途か――まあいい。本の形ならともかく、紙に興味はない。いや、紙はテンコに売りつければいいのか。
『加賀の絹』や『北陸のナイロン』とかにも番号はあった。これもアイラさんに丸投げ予定だったので気にしてなかったが。
地酒といい、和紙や布といい、種類が多いものをまとめにかかってるな? まあ、特に不都合はないのでいいんだが。ドロップの仕方がおかしいのは今更だし。
67層。カワハギ類、サツマイモ類。『モッツァレラ』『カマンベール』が出てるのと絵柄でおそらくチーズ類、『ポン・レヴェック』とか名前を書かれてもわからんわ。
カワハギを肝醤油、63層で出た日本酒でこう……。【開封】して飲んでみないと、辛口なのか甘口なのかどんな味がするか分からないのが辛いところ。いや、瓶にラベルがついてたりして。
一升瓶かな? 四合瓶かな? 一升瓶だと飲み切るのは大変そうだ。好みの味の日本酒を見つけるまで先が遠くなる。
一升瓶の時は『翠』に持ち込んで、少しづつ飲み比べをさせてもらおう。関前さんだって、客に出すのに酒の味がわからんことにはどうしようもないだろう。うん、鷹見さんも誘おう。
68層、スライム。酒にテンションが上がって、うっかり魔物からスキルを奪取するのを忘れ、さっさと殲滅していたことに気づく。冷静になれ、私。
反省して武器を日本刀に替え、スライムのスキルを誘発しながら戦う。ここのスライムはトカゲの姿。
火を吹くトカゲ、酸を吐くトカゲ、雷を纏うトカゲ、尻尾がしなり物理もいける、そして素早い。スライムの能力なのか、移動した痕に足止めの粘液。
赤黒いがそれぞれスキルを放つ寸前、喉が膨らみ伸びて薄くなった皮から火の色や雷の色が透ける。
スキルを奪いやすいし、いいことだ。速さは私の方が速いので、特に問題にならない。100層以前で速さで負けることはないだろうが、偶数層ごとにスライムがいるので油断はできない。
こいつら相手を遅くする能力とか、捕獲系の能力を持っている確率が高い。今相手にしているスライムの、足止めの粘液くらいならばどうとでもなるが、広範囲に影響する能力もあるからな。
ドロップは『金の銃弾』『銀の銃弾』『鉄の銃弾』! えらいぞ、スライム。矢とダガーも出てるがそっちはどうでもいい。鉄は物理攻撃力が強く、銀は幽霊系の物理が効かない敵に強く、金は必中効果がある。
……『金のダガー』と『銀のダガー』はストックしとくか。
あとは銃弾をイレイサーの箱に突っ込めば、しばらく弾丸作りから解放される筈。68層のドロップだし、それなりに強いと思う。今イレイサーがどこをほっつき歩いているのか知らんが、少なくとも私が作った弾丸より平均的な効果は上だ。
あれか。
私の【生産】がもともと微妙なことを知ってる黒猫の配慮かこれ? ダンジョンでは時々このように素材ではない消耗品の現物が落ちることはある、あるんだが。
まあいい。進もう。
69層はカサゴ類、『数の子』を含むニシン類。『百合根』『蓮根』『ジュンサイ』『クワイ』、そして再びの牛丸ごとドロップ。『アンガス』とか『バザス』とか、名前からしても海外の牛だ。
『カサゴ』は煮付けがいいか、唐揚げがいいか。【開封】して大きさ次第だな。
そんなことを考えながら、ボス前の休憩。茶と弁当を取り出す。漬物、金平牛蒡、唐揚げ、白身魚のフライ、味付き煮卵。ご飯は海苔とおかか醤油。
鰹節と海苔が制限なく使えるようになったので、のり弁である。海苔は食いやすいように切れ込みを入れた。
ご飯の蒸気を吸ってぺったりした海苔、おかか醤油を吸ったご飯。海苔とおかかの層を増やしてもよかったか? いや、おかずが揚げ物だしこれくらいが丁度いいか。
ニンニクをきかせた唐揚げはやや固め、代わりに皮がぱりっとしているのでいいとする。ふわっとした白身魚のフライにはたっぷりのタルタルソース。
きゅうりの漬物とお茶を挟みつつ、揚げ物とご飯を綺麗に完食。ごちそうさまでした。
目標80層だったが、70層のリトルコアをやったら戻ろう。酒が出たんだし、よく考えたら急ぐ意味がない。
微妙に自分で自分をせかしていたことに気づいた。張り切って進むのは日本酒を飲んで、次の酒が飲みたくなってからでいい。
あとはだらだらいこうだらだら。
そういうわけで急ぐことはないので、リトルコアへの扉を前に寝椅子を出して仮眠。
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