第61話 51層から53層

 本日は早朝から家のダンジョン。


 弁当を持って、51層から。背が筋肉で盛り上がった牛――たぶん――の魔物、ドロップは『阿知須の牛』『萩の牛』『土佐の赤牛』。相変わらず丸のまま出る。


 弾丸のような水を飛ばしてくる固定砲台のような貝の魔物、ドロップは『バイガイ』『アサリ』『小柱』『青柳』。


 待て。


 『小柱』『青柳』って『バイガイ』だろう!? 『小柱』はバカガイの貝柱だし、『青柳』は絵からしても食べる状態まで加工された軟体部位全体のことだろう!?


 何故……! ――いや、ハムやら干し柿は出ている。おかしいのは肉の方だ。もしやハムやソーセージ、チーズが加工品扱いか? 部位ごとにでてくれてもいいんだぞ!? 


 他は『キャベンディッシュバナナ』『グラネインバナナ』やらのバナナ。『高原バナナ』は生えている場所な気はする。


 『淡路のサワラ』『伊勢のサワラ』『山形のサワラ』『瀬戸内のサワラ』。


 今回、ドロップからだけでなく、魔物の見た目でも見分けがつきやすかった。だいたい出現する敵は4種類で落ち着いたのだと思う。他のダンジョンでも色違いも含めて、同じ層に出現する魔物は3から4種類が多い。


 相変わらずドロップが地域指定というかブランド指定というか、はっきり言っておかしいのだが、文句はない。むしろ感謝している。ドロップして、びっくりするしないは別だが。


 52層のスライム。


 ゴブリンの姿をとっている。だが偶数層なのでスライムなことは確定している。おそらく赤黒くなければゲル状なこともよくわかったのではないかと思うのだが。


 他の魔物の姿とるスライムは、その能力も使う。スライムの能力の溶解液などを吐く場合もある。そしてスライムの核を壊さないと倒せない。


 戦闘開始。


 ゴブリン程度なら能力が上乗せされていてもたいしたことはない。48層のスライムの方が強かったくらいだ。まあ、これからスライムがさらに厄介になりますよ、という前振り的な物だろう。


 苦無を投げて、【天地合一】の発動。


 投げた時点で発動していては遅いのだが、私が直接でも、握っている武器でも、触れれば周囲がなんとなく分かるのでスライムの核を探す練習的な意味で。というか、わかりやすくゴブリンの心臓の位置にあったな。


 気配を探る前に倒したぞ? なんとなくそうかなとは思ったので狙ったのだが、いいのかそれで。最初はモデルにした魔物の弱点の位置にあって、倒し損ねたら体内を移動する方式か? 


 庭の草もこれくらいあっさり片付くといいのだが。次に市のダンジョンに行ったら、ついでに草刈り機を見てこねば。おすすめのメーカーは聞き出したのだが、一馬とは体型が違うので私が使って使いやすいかは謎だ。


 スライムのドロップは『魔銅』『魔法銅』『精霊銅』同じく、鉄と銀三種。


 『魔○』は少し魔力を帯び、武器に使えば物理攻撃が効きづらい敵にも攻撃が通り、防具にすれば魔法攻撃への防御が上がる。


 『魔法○』は素材として使えば、生産者の任意の魔法を付与しやすくなる。火の魔法を付与して武器を作れば、火に弱い魔物にダメージを多く与えられる。防具に使えば、火属性の攻撃への防御が上がる。


 『精霊○』は金属製の生産をするさいに混ぜると、出来上がりが軽くなる。武器よりは防具に喜ばれるものだが、中には腕力が足らんのに大剣に憧れた結果、生産者に『精霊○』の使用を依頼する者もいる。


 赤黒い雷をまとって、鞭のように飛び出してきた赤黒いウツボ。いや、違ったアナゴ。ドロップが『播磨灘のマアナゴ』『東京湾のマアナゴ』『豊浜の干しアナゴ』だ。これでウツボだったら困る。


 確かにカードに書かれている絵と比べれば、形が違う。長いからと言って一緒にしてはいけない。ウナギやハモが出てきたら、シルエットで見分けがつく自信はないが、とりあえずウツボは違う。


 アナゴは捌ける気がしないので、干しアナゴが嬉しい気がする。白焼きか煮穴子の寿司が食いたいのだが、関前さんは捌けるかな? 


 赤黒い雷は能力なのだろうが、自身に纏うタイプは奪えんのでさっさと倒す。次に出てきたのは豚。顔の前に尖った石塊をいくつか出現させ、それと共に突進してくる。


 これは奪えた。奪えたが、自分の前に石塊を出すだけ。私が突進する予定もないし、盾になるようなものでもないし、使い所がない――いや、必中の能力や追尾能力を持つ攻撃に対して、囮にできる、か? とりあえず収集。


 ドロップは『ハモン・セラーノ』『ハモンイベリコ』『プロシュート・ディ・パルマ』。絶対食いきれん気がするのだが、いよいよ生ハム用のスライサーを買うか。


 アナゴ、豚の他の敵は、砂のようなモノ。苦無も日本刀も効果がない。見るからにそれは分かったが、一応攻撃は入れてみた。相手の攻撃手段は、広がって襲ってくること。


 おそらく付着したらどうにかなるのだろうが、避けたからわからん。この手の物理系が全くといっていいほど効かない魔物は、魔法の類に極端に弱いのが相場。


 47層で収集した『光弾』使用、思った通り簡単に倒せた。


 『上白糖』を始め、砂糖類が9種類。このドロップ量だと、砂っぽい魔物に色違いがいたのだな。


 50層を越えると、攻撃手段をいくつか持っておかねばキツくなる。パーティーで来るなら、魔法能力者を始め、物理系ではない能力持ちが必要になる。道中は逃げればいいが、ボス部屋で対抗手段がないと詰む。


 ギルドが管理するダンジョンは、誰かが到達済みならば大抵情報を買えるので、下調べに金を使えばなんとかなるのだが、深い層ほど情報は高い。そして、うちのダンジョンは私が進まない限り未知だ。


 基本、私は攻撃を受けて耐えるのではなく、避けてしまうから魔物の攻撃がどんなものかわからんままになるのがいる。


 一応、後で魔物のデーターベースでも確認するか。地方色豊かで亜種とかたくさんいるので、調べたところでうちのダンジョンの魔物の把握ができるかわからんのだが。


 よし、弁当を食おう。


 だいたい1層1時間程度だが、さすがに能力の収集をすると時間がかかる。昼だ、昼!

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