第43話 30層通過
リトルコアはスライム。
形状は粘度の高い液体。床に広く伸びてゆっくりと動く。時々表面が、後ろからボールをぶつけているかのようにぼこぼこと沸き立つ。
相変わらず赤黒いが、たぶん他のダンジョンでも戦ったことのあるスライムだな?
中にある5つの核を壊せば終了。時間を置くと核は復活、間違えたものを叩くと、スライムの体積が増える――たしかそんな感じだ。
色のせいで見分けが難儀するが、確かハズレの核よりアタリは大きかったはずなので、大きいぼこを叩けばいいはず。
というわけで、スライムに囚われないよう足元だけ注意して、苦無を飛ばす。こういう場合、飛び道具は便利だ。
で、ドロップは質の良い薬草シリーズと鉱石類を中心に、いつもの。
この調子で行くと、道中のスライムをスルーしても、リトルコアでイレイサーの依頼品の素材は足りる。落とさないものももちろんあるので、今のところは、だが。
さて、31層からは能力を使ってくる魔物が出始める。アタリの魔物がいれば嬉しいが。世の中には自身への肉体強化系で、物理オンリーのダンジョンもあるからな。
床に張り付くもの再び。
貝より薄いし、ゴツゴツはしていない。苦無を投げると、床から動いて身をひるがえし、こちらに砂と水の刃のようなものが飛んできた。
能力に注意はしていたので当たるようなこともないのだが、不完全ながら砂の幕の目隠しと、水の刃を避けることに気が行って対象を見失う――のが普通なのだろうが、なにせ赤黒いので。
ストックするにはちょっと微妙な能力だな。砂はいらんから、もう少し速いやつか、ダメージがデカそうなスキルが嬉しいんだが。本来は身を隠している場所に、近づいて来た相手に食らわせる能力なのだろう、効果範囲も狭い。
だが、次の層のスライム相手に使い切るという手もあるし、一応採取しておこうか。
近づくか触れるかしないと発動しない相手は、発動させる手間がかかって少し面倒だ。
苦無を投げて、相手が能力を使う予備動作――身をひるがえした瞬間を狙って、
『運命の選択』で与えられた苦無は1本。優先した強化先は、『貫通』、小さくとも必ず魔物に傷をつけること。これは傷をつけることが、私が対象から能力を奪う条件になっているから。次に選んだのは手数を増やすこと。対象が1体とは限らないから。
今、実体を持って私の手に現れる苦無は5本。実態を持たずに、ダメージだけ与える幻影ならもっと出せるが、貫通やら与えるダメージやら、効果は落ちる。
発動しようとした能力を奪うということは、攻撃を封じることにもなるので、とても便利だ。ただ、もともと大きなダメージを与える武器の系統ではない上、強化の方向性が偏ってるので、苦無だけでダンジョンを進むことは難易度が高かったんだが。
政府に返還したサブ武器、かっぱらってくればよかったかな? 癖のある武器だから、おそらく使える人間がいない。もしかしたら、ただ保管しておくよりはと、強化を条件に貸し出し許可が降りたかもしれない。
いや、たぶん恩着せがましく他の条件もつけられたな。面倒この上ないし、私の田舎暮らしに前職の名残はいらん。
今は刀もあるし。強化カードを頑張って集めねば。
ところでコイツ、ヒラメか? オヒョウとかいうデカいのが外にもいるが、ヒラメのデカいのに見える。
ドロップは『マガレイ』『マコガレイ』。……カレイだったか。
せっせと能力を奪いつつ、倒していく。だいたい3回ほど奪えるようだ。
『ヒラメ』『アカシタビラメ』。魔物はヒラメとカレイだろうか? 見分けつかんぞ! 口と目の位置を見ればいいのか?
他にも『ナメタガレイ』『ホシガレイ』やら、『ガンゾウビラメ』『イシビラメ』やらがドロップ。
あんまり種類が多いと、私の理解が追いつかなくて困る。でも一緒に出る名前が一部被る魚は、だいたいどれも似た料理法でいける気はしている。一応調べるがな。
刺身と煮付けは美味しいはず。刺身といえば今日の夕食は鮭の刺身と、イクラ丼の予定なので、さっさと攻略を進めたい。成果を得たあとの飯はより美味かろう。
32層のスライム。こちらも自分の体を一部飛ばしてくる能力を使って来た。毒か、溶解液かだと思うのだが、本体の見分けがつかんので、どっちだかわからん。試しに受けてみる趣味は私にはない。
これもとりあえず集めておいて、魔物相手に使ってなんだったのか判断しよう。生命が多い魔物に最初に毒を入れておくと勝手に削れるし、毒は戦闘の時短になって使い勝手がいい。
いかん、つい溜め込む習性がある。さっさと倒して先に進もう。あと、能力カードの溜め込みは、カード用の鞄を買ってからにしよう。いっぱいになったら一時的にコートのポケットに入れてもいいのだが、ちょっと気になる。
敵から奪った能力カードを使う時など、コートも戦闘に使ってるせいで微妙にポケットが重いのに違和感が。
33層の敵はもぐら。ドロップは大根類とカブ類。刺身のツマだな?
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