第42話 習慣からくる思い込み
29層、全部一気に焼き払いたい気分になりながらアブラムシ退治。おいクソネコ、害虫をダンジョンに放り込むんじゃない。
いや、これはこれで外でのうっぷんを晴らすときか?
ダンジョンでアブラムシと呼ばれるこれは、小さめでそう強くはない。ただ、5匹で現れ、しかも残り1匹になると増える。最後は2匹をほぼ同時に倒さなくてはならない。
弱いとはいえ、ヘタをするとどんどん増えて集られる大変うざったい魔物だ。しかも増えた分も含めて1匹扱いなのか、倒し切らないとドロップカードが出ない。
ついでに暇なヤツが実験して、最初の5匹でも増えた後でもレベルアップのための経験値の入り具合も同じだそうだ。
2匹がそばに寄ったところで、被るように位置どりして、苦無を投げればそれで済む。刀の修練――は、後にしよう。それは50層に到達してからだ。
レベルも上がったし、『強化』カードも順調に出ているが、ダンジョンの魔物は単純に強いもの以外も出るので、面倒だ。
大抵、面倒な魔物は時間がかかるだけで、こっちに大きなダメージを与えてくるものは少ないので、出現を喜ぶ人種もいるのだが。
落としたのは『小麦』『大麦』『デュラム小麦』などの麦の類、そして『薄力粉』『デュラムセモリナ粉』などの粉の類。
スパゲティはトマトソースは乾麺、チーズソース系は生麺がいいです。小麦粉も米や塩と並んで政府が配達を頑張っているのであるのだが、『デュラムセモリナ粉』ってあれだろう? パスタ用だろう? 日本の気候じゃ栽培が難しい、ちょっと黄色いやつだろう?
生麺はともかく、乾麺はどうやって作るのだ? 干せばいいのか?
ダンジョン以前に書かれた本を読んでいると、色々食ってみたいものが積み上がる。読む本の傾向が、食事シーンが多いということも一因。
はっ! 目先の品物に惑わされるな。深い層のほうが同じ系統のものでも質がいいし、美味いはず。がんばれ私。
29層を階段を探し歩く。探している途中に出たアブラムシは倒すが、他は我慢。階段を見つけたらマップが埋まっていなくても大人しく降りる。
30層はリトルコア、扉の前で昼飯休憩。
焼き鮭のおにぎり、一つは細かく崩した鮭をご飯に混ぜた全体的にサーモンピンクのおにぎり、一つは鮭を大きめの具材にして中に入れたおにぎり。海苔が欲しい、海苔が。
飲み物は革の水筒から。何かの魔物の胃袋だという話もあるが、実際のところは知らん、見た目は革だ。2本のベルトで体にフィットさせるタイプが日帰りダンジョンには人気。
金属製のものは丈夫だし保温性もあるのだが、戦闘の時に体を捻ったりでピッタリくっつけていても当たることがある。一泊のダンジョンでは、両手が自由になるザックを背負っていくことが多く、その場合は金属の水筒を選ぶ者もいる。
選ぶ道具は好みもあるし、どんなダンジョン攻略をしているかにもよる。人それぞれだ。
私のダンジョン1部屋目には現在、バーナーとメスティン ――持ち手がついた四角い
とはいえ、【収納】枠をそれぞれ使うので、道具持ち込みより弁当一択だが。簡単に手に入るのでつい……。しばらくこれでいいかなと。
ガスの替えが高いのだが仕方がなし。ガスは外でも割高なので、田舎だと薪ストーブなどを設置する家が多い。柊さんちなんて離れにはかまどがある。
魔石で温まるコンロがあるので、台所はそっちが標準設備なのだが、煮込み料理やらをすると魔石があっという間になくなる。火力は高いものの、継続には向かない。
それに1部屋目に冷蔵庫を入れたいので、他に魔石を使う道具を入れるのは避けたい。
【収納】でまとめられるのは、同じ種類で
ドロップカードが1つの層で10種類以上、かつ数字違いが出るのだから当たり前だが。本当は捌いた食材の残りも【収納】しておきたいところなのだが、とてもそんな余裕はない。
3回に1回は【収納】に『強化』カードを回しているのだが、まだまだだ。弁当を作るたびに【開封】し、残った食材は外の冷蔵庫に詰めることになる。さすがに困るので、持ち出さずに済むよう冷蔵庫を入れたいのだ。
――いやまて。もしかして【収納】を持たない冒険者の真似をして、ドロップカード用のカバンを買えばいいのか? 別に昔のようにタイトな攻略の必要はないし、多少邪魔でも戦闘への影響はないような気も?
……。
おにぎりはかたすぎずゆるすぎず。手で持っても崩れないが、口の中ですぐに
弁当が美味くてなにより。うん。
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