第33話 鮭
黒猫に16層に戻してもらい、攻略再開。
ダンジョン間の移動、そのうち酒の出るダンジョンへ連れて行ってもらおう。どこでどの銘柄が出るか、調べておかねば。
さっさと17層へ。スライムの核はどうしたのかって? 苦無の強化で出た能力使用で済ませた。気力は使ったが、全部回ることも省いたので問題ない。
ここで修行もどきをしているより、さっさと50層に行って能力カードを貰ったほうが効率がよさそうだ。能力によっては立ち回りも変わるし、無意味に修行する趣味はない。
ちなみに16層の魔物、もう1種類はドラスラだった。低層のスライムは大抵楕円というか饅頭型なのだが、頭頂部が少し尖っている。何故それでドラスラになるのかは調べていないが、昔からそう呼ばれている。
ドロップは『グルースライム』と合わせて、『強粘液』『
『強化』のカードが出たので喜びつつも、さっさと進む。
以降は魚だろうが肉だろうが、全部は回らず階段を見つけたら即降りて、50層を攻略した後からゆっくり回ろう。
うん。そうするつもりだった。
『白鮭』『新巻鮭』『秋鮭』『
テンション上がって、前言撤回する間もなく17層全部くまなく回りました。念願の鮭。鮭の
魔物の影はなんか背中が三角っぽいのとなだらかなのがいたので2種のはず。どちらも尻尾の攻撃が強力そうではあったが、当たっていないのでわからん。
最初の層よりだいぶ宙を泳いで攻撃してくる範囲が増えたが。
戻るのが面倒で、さっさと進むつもりでいたのに。いかん、今日はもうあがって捌き方の動画を見よう。いっそ明日、関前さんの店にサンプルとして持ち込んで、ついでに捌き方の指導をしてもらおうか。
確かサバより大きかった記憶があるので、台所で捌くのは無理そうな気配。まな板の大きさも足らんはず。
……保冷の出来るウォータージャグと、大きなまな板と、それなりの包丁と。ダンジョン内でせめて下ごしらえできるようにしたい。1部屋目は臭いの元がなければ、魚くささに関しては小一時間ほどで消えるし。
井戸端でやるよりはよくないか? 鱗を流す水もドロップ品を使えば、捌いた後も【収納】できるし。冷蔵庫問題が少し解決するのでは?
料理についてもっと調べないとダメだな。30層はさすがに日帰りはできないので、生産ブースでも使うしベッドを買うか。【収納】可能なベッド、生産ブースの設備、ここの料理設備。
――今のうちに防具一式もまた依頼しておかねばいかん気もする。アイラさんもツツジさんも、製作依頼は予約が詰まっているはずだ。
今のところ一番金になるのはリトルコアを繰り返して、リトルコアの魔石を売ることだろう。他の冒険者がいないプライベートダンジョンなら、可能だな。でも、リトルコアの魔石も階層が深いものほど高いのだが、20層ソロとか色々バレる。
ドロップを売っている過程で必ずバレることではあるが。もうその辺は覚悟して、オークションに出そう。
頭の中で皮算用を繰り広げつつ、来た道を帰る。
「!?」
戻りの15層、赤黒い巨大な鳥が正面から走ってくる。コカトリス? いや、出るには層が浅い。それに尻尾は蛇ではない。
「鶏か!」
魔物のいないはずの道で、しかもネギと枝以外に遭遇して、少々動揺しながら苦無を飛ばす。早いが直線的、足の鉤爪は凶悪だが避けるのは難しくない。避けざまに刀で首を落とすのが正解だった気がするが、つい使い慣れた武器に手が伸びた。
バサバサと翼をばたつかせ、暴れる手負いの巨大鶏。これはあれだ、リトルコア、だな?
末尾に5のつく層に、フィールドをうろつくタイプのリトルコアが出るダンジョンが時々ある。10の倍層のボス部屋以外にいてもそうおかしくはないが、私は全部回ったぞ? 一度目にでなかったのに――ああ。
『スライムじゃないリトルコアも出るように』か。入れ替えではなく、増える方向か! 面倒なことを。まさかクソネコと言ったこと、根に持ってるのではあるまいな?
そう思いながらトドメを刺す。
浮かぶカードは20枚と変わらず。5の倍の層に出るリトルコアは、その前のボス部屋のボスより少し弱い。かわりに同じ層にいる魔物を引き連れていることがあるので、油断ならない。復活はその層の魔物の復活日数の2倍。
もしかして5層にも出るのか? 考えると微妙にだるいな。そう思いながらドロップカードを回収する。
『比内地鶏』『名古屋コーチン』『さつま地鶏』『軍鶏』『烏骨鶏』『奥久慈しゃも』『烏骨鶏の卵』『比内地鶏の卵』……。よし! よくやった黒猫!
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