高校1年2学期②
秋の文化祭は、高校生にとっては一番の楽しみの一つだろう。うちのクラスはハンドクラフト市なるものを開くことになり、男子は大分抵抗したが、女子の勢力に負けて賛同せざるを得なかった。
担任の立場もあるので、放課後女子に混ざり一緒にマスコットを作ったが、生徒に爆笑される出来栄えだった。裁縫自体が下手なわけではない。ただ、絵心がないらしい。一応犬のつもりで3体も作ったのに、生徒たちにはクマにしか見えないと言われたので、クマという体で養子に出す事にした。
「優月先生のクマ、ブサカワー!」
「大八木のカエルはリアルだな…」
大八木が作ったマスコットは妙に本物臭がするので、手に取るのも憚られる。苦い顔をしてそのマスコットを見つめていると、青木が教室に入ってきた。
「あー、翔部活終わった?」
「うん、オケ今日はもう終わりだから手伝うよ。何作ればいい?」
青木が手芸というのも、大分見た目とのギャップがあるが、それは俺も人のことが言えないのかもしれない。
「翔は犬作って。先生が作ったの、犬じゃなくてクマに変身しちゃったから」
俺の作ったマスコットを大八木が見せると、青木が俺の顔とマスコットを交互に見て笑った。
「先生は一生懸命作ったんだよ。笑うな。この可愛い我三つ子、文化祭で引取先絶対見つけてやる」
ブサイクでも、きっと誰かが買ってくれる。文化祭なのだから、そこまでシビアに品定めはしないだろうと高を括ると、青木が堂々と言った。
「先生、世の中甘く見ちゃダメだよ、大人のくせに。この三体、買う人が現れたら俺は先生に学食でA定奢ってもいい」
A定。学食の中では一番豪華な450円の定食。完全に青木になめられているのが分かり、大人気ないながらそれに反論した。
「先生は生徒に奢って貰うという賭けはしません。でも!売れたらお前、2学期の期末、英語で満点取れよ?分かった?」
「売れなかったら何してくれますか?A定奢ってくれますか?」
「…あんぱん一個買ってやる」
「大人の癖にケチですね」
「…じゃあ2個」
俺の返事に青木が爆笑すると、クラスの女子が一緒に盛り上がった。教室内が騒がしくなる中、日和が教室に入ってきた。日和は俺の顔を見るなり、わかりやすく赤面をした。忘れてくださいと言っておきながら、自分はそういう感じなのかと少し苛立ちを覚えた。
「日和もなんか作れよ、先生も3つもマスコット作ったんだから」
平静を装って日和に声をかけると、青木が俺の顔を見てから、日和を見て言った。
「日和、先生が失敗した犬作ってやれば?俺、へびやるから」
「あー、じゃあ日和君、先生に型紙もらってよ。先生、日和君にちゃんと教えてあげてね」
教室の一番窓際の二つ席をつけた場所に、日和と座り型の取り方、縫い付けかた棉の詰め方を説明した。外は大分暗くなってきているが、風はまだ少しだけ生暖かい。
「なー、日和は犬とクマ、どうやって作ったら大きく違いが出ると思う?」
俺が作った犬はどうしてクマになったのか納得が行かずに聞くと、日和が笑った。
「先生、これは鼻と耳に特徴があるから、そこが先生のはどうやってもクマに見えるんだと思います」
日和の指摘通り、確かに鼻と耳は完全にクマだと思った。
「じゃー、日和は先生の二の舞を踏まないように、しっかり犬に仕上げろよ」
日和ははいと返事をし、せっせと型を取り始めた。
教室は生徒達の笑い声が響き渡り、教員らしい一日の終わりに少し満足していると、日和が小さな声で、イタッと呟いた。
「What happened?指刺したか?」
日和が右手で左の指を抑えていると、少しだけ血が出ているのが目に入った。思わずその手を取って、口に持って行こうとした瞬間に我に返り、慌ててそのまま水道に日和を連れて行った。
今の衝動はおかしい。日和にもしかしたら指を口に入れようとしたこと、気がつかれたかもしれない。日和だけなら良いが、他の生徒にどう思われたか分からない。暫く自分の迂闊さに早なる心臓を落ち着けようとしていると、青木が廊下に出てきた。
「大丈夫?」
青木と目があうと、なぜかそらさずにいられなかった。思わせぶりな態度は取らないと言った側から、大分間違った事をしようとしてしまった手前、後ろめたい。
「ちょっと刺しただけだから、全然大丈夫。先生、すみません。もう大丈夫です」
日和に言われ、まだ手を掴んでいた事に気が付いた。
「あ、ごめん。先生、もう帰るな。仕事終わってないから。お前らも、あまり遅くまで残ってるなよ」
逃げるように職員室に走り込み、荷物をガタガタと鞄にしまっていると、メールが届いたのが携帯のスクリーンに現れた。
<さっきは有難うございました。>
返事の仕方が分からず、返信はしなかった。
文化祭初日、クラスのハンドクラフト作品の中に、見事に御祖母らしい俺の作ったクマ三体と、そのすぐ横に日和が作った結構なまでに完璧な犬5体、その他多くのマスコットやエプロンなどが並んでいた。
会計係は男子、女子は売り子として小さなカゴに幾ばくか商品を入れて、校内をウロウロしていた。俺は、写真部の出し物が完成したところを見ていなかったので、写真部の作品が展示されている校舎へ移動していた。
「Eight!」
校内で下の名前で呼ぶのはジョーぐらいなので、誰かと思い振り返ると、マイアが居た。あれから数回食事をした時、学校で文化祭がある話はしていたが、来るとは思わなかったので驚いた。
「Maia! Why the hell did you come here?? (マイア、なんで来てんだよ?)連絡も無しに来んなよ、恥ずかしいだろ!」
「Oh, come on! ちゃんと先生してるのか、見たくなっちゃったのよ。ちょっとぐらい良いでしょ?学祭なんて懐かしいわね?」
マイアとは大学の学祭がきっかけで付き合いだした事を思い出し、懐かしさを覚えた。二人で立ち話をしていると、生徒が廊下で大きな声を上げた。
「優月せんせーーー!あーーー、彼女さんですか?居ないって言ってたの、やっぱ嘘だったんだーー!ちょーーーー美人!モデル??脚、なっが!!」
クラスの佐々木が大八木と嬉々として近づいて来て騒いだ。こういうのが面倒だから、知り合いとかに職場に来られるのは嫌だった。元々職場に来る程の仲の友人も、実際にはそうもいないのだが、マイアは特別だ。
「違う。先生のお友達です」
「えーーー、絶対違うでしょー?私達もう高校生だし、別にいいですよ、そういうの。あの、優月先生の彼女さんですか?」
マイアが俺を見て、楽しそうに笑ってその質問に答えた。
「残念、私優月先生には、もう随分前に振られちゃったの。先生は、いい先生してる?」
マイアの言葉に、佐々木と大八木が耳が痛くなるほどの悲鳴をあげた。
「先生、こんな美女ふるって、何者?勿体無い!有り得ない!」
その言葉に苦笑いをしていると、佐々木がマイアの質問に律儀に答えた。
「優月先生は、ドライですが良い先生ですよ。皆に好かれてます。英語がネイティヴ、しかも最高にカッコいい!」
生徒に目の前で褒められ、言いようもなく恥ずかしくなった。こんなこと言ってくれる純粋さ、教師していて良かったと顔が綻んだ。そのにやけた顔をマイアに若干弄られたが、マイアは佐々木と大八木に大人らしい笑顔で言った。
「そっかそっか、良かった。じゃ、その皆のかっこいい先生、私ちょっとだけお借りしていいかな?」
「どーぞどーぞ!先生、後でクラスにも連れてきてね!」
二人がパタパタと目の前から去ると、マイアが二人の後ろ姿を見送りながら言った。
「ドライ、ね。You haven't really changed, have you? (相変わらずなのか)」
マイアの言葉を、人間そうそう簡単には変われ無いと笑って流した。何度か生徒に足止めを喰らいながら、結局マイアと共に写真部の展示室に向かった。あの頃は、だらしのない生活をしていたから、何事にも適当だった。なのに、何故マイアは俺みたいな人間とあれだけ長く付き合ってくれたのか、今もそれは謎だ。
「英人、写真とか向いてそうよね、自分と向き合ういいキッカケになりそうじゃない?」
「自分探し的な?俺、そういうタイプじゃねーけどな?」
バックパッカーとか、世界中を自分探しの旅と称して飛び回るような部類の人間ではない。ただ過去に囚われたまま、適度にできる範囲で出来る事だけ、ダラダラしているだけだ。
母は二度と帰ることはなく、真実も決してわかることはないのに、呪縛霊になっているのは他界した二人ではなく、俺自身なのかもしれない。そんな事を考えながら適当な会話をして展示室に入ると、仁道が意気揚々と声を掛けてきた。
「優月先生!やっと来てくれましたね!どうですか、これ?」
写真部の展示は、教室中の壁と床を使って、L版サイズの写真を隙間なく並べるものだった。
「凄い量の写真だな、どこのが誰とか決めてんの?」
「一応担当箇所は決まってましたけど、先生どれが誰だったか分かります?」
これだけ多数の写真があって、どれが誰の作品かは流石に分からない。入り口から順序に見ていくが、余りの写真の量に目がチカチカして仕方がない。それをそっとマイアに伝えると、マイアも何処を見たらいいか分からないと笑った。暫く二人で写真を適当に眺めていると、窓際の壁にある一枚の写真が目に入った。
「Oh...my god... it's...(うーわ、これ…)」
これは、日和の写真だ。そして、この写真が俺だとわかるのは、恐らくこの中で俺だけの筈だ。一度自転車で日和を送った時に、写真撮っていた事を、その写真を見て初めて知った。携帯で撮影していたのだろうが、全く気が付かなかった。
俺の乗る自転車の車輪、それに少し俺の手が入ってた。こんな写真使って、他の生徒にもしこれが俺の腕だとバレたら、なんとなく気まずい。それは意識しすぎなのだろうか?その一枚の写真から目を離せずにいると、後ろに立っていたマイアが横から覗き込んできた。
「Hey, this is your arm, isn't it? (あ、これ英人の腕じゃない?)何ー、プライベート写真流出?問題じゃない、先生?」
「違うわ。第一これ男子生徒の撮った写真だし」
マイアを見ると、少し驚いた顔をして、またその壁の一番下にある写真を指差した。
「And this one as well? (これも?)同じ子?」
指差した先には、俺が渡り廊下で誰かと談笑している写真だった。フォーカスが俺にしか合っていない。急に身体から血の気が引けていくのを感じた。これは、日和の目線だ。
「What are you gonna do, Eight?(どうするの、英人。)これ、何かあるわね。本気だったり?」
生徒と教師は一過性の関係でしかない。生徒間では生まれても、生徒と教師間では本気は絶対に生まれない。住む世界が完全に違う、違う時間軸で生きている重なり合うことのない存在に、ファンタジーのような「本気」という言葉は似つかわしくない。マイアの揶揄う様な発言に、有り得ないと笑って誤魔化したが、マイアはいつも本心から納得いってない時にするように片眉をクイっと上げて俺を見た。
写真部の展示室を後にし、担当クラスに向かって歩いている間、頭の中では日和の言葉がグルグルと回っていた。好きという単純な一言。今まで誰からか言われたことがあっただろうか?付き合ってください、は何十回と言われたが、好きですと言われたことは、恐らく一度もない。いや、もしかしたら言われたのかもしれないが、記憶にはなかった。「私の事好き?」と聞かれたことは何十回とある。でも好きだと答えたことは、一度もない。
子供の好きほどあてにならないものはないが、日和の言葉は異常な吸引力があった。何故だろうか?あの目のせいだろうか?綺麗な大きな瞳、儚げな雰囲気のある日和は、放って置けない感じで頭から離れない。
「英人?クラスのハンドクラフトってここ?」
マイアの言葉にハッとすると、二人で教室の前のドアまで来ていた。話しを全然聞いていなかった。どうやってここまで来たか、覚えてない。上の空だったことに対して、完全にそれに気がついているマイアは気がつかないふりでいてくれた。
「あー、先生!彼女さんと来たー!超美女ーーーー!」
マイアを連れて教室に入ると、すぐに女子達が騒ぎ出した。教室の中をぱっと見回すと、商品の並べてある机の奥に、会計で青木と日和が座っていた。日和はマイアを見るなり、分かりやすく顔色を変えて俯いた。
忘れてくださいと言う割には、分かりやすい態度にやはり苛立った。周りが騒ぐ中、二人の前に行くと、机に両腕を置いてしゃがみ、日和の顔を覗き込んだ。
「おーい、先生のクマは売れましたかー?」
顔をそらしたくなるのなら、そう出来ないようにしたいと思う俺の方が、この子供よりも今はよっぽど子供だ。日和は首を垂れたまま目線だけ俺に向け、その質問に答えた。
「一体、売れました」
「おー、ほら見ろ、青木!あと二つ売れたら、お前テスト頑張れよな?」
青木が日和を見て、俺を見て、マイアを見てからため息をついた。
「先生って、無神経ですよね。大人のくせに」
青木の言葉を聞いて、日和が青木を凄い睨みつけた。
「御機嫌斜めか、青木は?」
机に手をついたまま立ち上がると、その手を日和が掴んだ。日和を見ると、潤んだ瞳でただ一言すみません、と呟いた。日和に掴まれている手を退けられず、その場に立ち尽くすと、マイアがやってきた。
「英人、私そろそろ行くわ。余り先生のお邪魔しても悪いしね。あ、今日は」
この間日和に会っていたマイアは、日和に笑顔で挨拶をしたが、日和は目も合わせずに返事をした。マイアは俺の手の甲に手を載せる日和を見て、ひよりの耳元で囁いた。
「He's not gonna fall in love with anyone. Move on, sweetie. (先生は誰も好きにはならないわよ。諦めなさい)」
その言葉に、日和がやっと顔をあげた。マイアの口の動きで何を言ったかはっきり分かっていたのに、俺はそれを否定しなかった。
文化祭二日目は、夕方の体育館でのパーティの準備があり、朝からDJブースやバルーンの飾り付けに駆り出されていた。ALTのジョーがやけにDJブースに拘っていた。日本で遊んでいるのが明確な、分かりやすい奴だ。
飾り付けが終わった頃に教室に行くと、殆どの商品が売れていて、生徒たちも不要なものを片付け始めていた。商品の置いてある机を見ると、残念ながら俺のクマはポツーンと1つ残っていた。俺の負けだ。
青木を見ると、青木は日和と何か話し込んでいた。日和は、ただ頷いたり、首を横に振ったりしていて、何の話をしているのかは聞こえなかった。
「せーんせ!今日は彼女さん来なかったんですか?」
クラスの女子が声を掛けてくると、つい苦笑いしてしまった。
「だから、あれは大学の友達。先生、貧乏暇なしなんだよ。可哀想だろ?」
俺の返事にそれでも食い付いてくる女子達に、青木が横から文句を言った。
「お前達、どーしょもないこと聞いてないで片付けしろよ」
女子達がそれに対して不平を漏らしたが、青木の指示通りそれぞれの持ち場に戻っていった。日和を見ると、俯いていても目が充血しているのがよく見えた。寝不足だろうか?また泣いたのだろうか?泣いた原因は俺なのだろうか?思わず日和に近づこうとすると、青木が目の前に立ちはだかった。
「今、そういうの、いらないんで。そっとしておいてやれば?て言うか、先生、アンパン2個ね。売れ残ったから」
子供の青木にそう言われたことが、そしてそう言わせた大人になれていない自分自身が物凄く腹立たしく、何も言えず頷き職員室に戻った。
教え子に好きだと直接面と向かって言われたのは、初めてだった。それが、たまたま日和で、たまたま男子で、全部たまたまで。特にこの動揺や苛立ちに、意味はない。マイアが言った通り、俺は誰も好きにはならない。なれない。好きになるという意味が、25歳なのに分からない。多分、本当はそういう気持ちを誰かに抱いてみたいと思っているが、どうしたらそうなれるのか分からない。そういう意味では、日和の方が俺なんかよりずっと大人なのかもしれない。いつも教師面、大人面で子供達の前に立ってはいるが、本当は一番子供の時から変われてないのは、俺なのかもしれない。
文化祭の一般公開が終わり、体育館のダンスパーティに生徒たちが流れ始めると、アメリカのプロムを思い出した。クラスの女子と一緒に行き、翌朝まで馬鹿騒ぎをした。よく考えたら、この子達は今その時期にいる。そう思うと、俺とはやはり住む世界が違うと再認識させられた。
体育館に入ると、大音量でアップテンポなダンスナンバーを我が物顔でジョーが流して、壇上で乗りまくっていた。天井から下がっているカラフルな紙の飾りに、最後に落とす予定のバルーンが音に振動して揺れている。生徒達も文化祭が終わった開放感に、それぞれのグループで盛り上がっていた。
日本の生徒はアメリカとは違い、ノリが悪いと思っていたが、今年のダンスパーティは思ったよりも皆楽しそうにしている。壇上に行って、ジョーに何か飲むか聞くと、突然俺の手を取って踊るように促してきた。
それを見ていた壇上前の生徒たちが大騒ぎを始めて、仕方がないので適当に生徒の輪に入って踊ると、生徒が異常なほどに盛り上がってくれた。
「先生、めっちゃ踊りうまい!よ!遊び人!」
クラブ通いの遊び人ではない。そういうタイプに育っていたら、きっと人生もっと楽しく生きてたかもしれない。ただアメリカ育ちで音がなったら、踊らずにはいられない環境だっただけだ。こう言う時、自分がこの国で育っていないと妙に感じさせられた。
ジョーが壇上から俺にヤジを飛ばすと、生徒が笑い、盛り上がった。こういう高校生らしいノリの中にいると、自分が本当にただの教員になれている気がして、気がまぎれた。
アップテンポな曲が急にバラードに代わり、ジョーが男女の踊りを促すが、もちろんこれは日本人には馴染みがなさすぎて、皆どうしたらいいか分からない状況に陥った。これは完全に文化の差があるので、壇上に登りジョーにアップテンポな曲に戻すよう伝えると、ジョーが突然壇上から降りて、生徒の山から誰かを連れてきた。よりによって、連れて来たのは日和だった。そしてジョーがマイクで一人で盛り上がって叫んだ。
「They'll show you guys how to dance!(こいつらが踊り方教えるからねぇ!)」
訳のわからない顔をした日和と、笑い出してしまった俺は、ジョーに日本の生徒にこれは無理だと再度伝えたが、ジョーは酷い訛りのある日本語で言った。
「やり方わかればいいでしょ?これオトコのこどうし、セーフだよ?」
日和が戸惑っている姿が余りにおかしかったので、壇上の真ん中に連れて行き、腰を思いっきり抱き寄せた。
「先生のリードに乗ればいい」
日和の耳元で言うと、日和の耳からすごい熱気を感じた。俺と日和が壇上で踊っていると、生徒達が大騒ぎを始めて、体育館が拍手と口笛と笑い声で溢れた。
一曲踊っている間、日和は完全に固まっていて、密着した体から大音量の音楽に負けないぐらいの心音が、体に伝わってきた。華奢な体つき。こんな子供に動揺するなど、話になら無い。
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