第12色 アノスの正体
「アノス君! 逃げて、君じゃ手に負えない相手なの!!」
「そんなこと、言ってられるわけないじゃないですか」
アノスは魔法を発動し続ける。
下手に魔法をやめたら色死獣がクリスティアに襲い掛かるからだ。
……やるしかない! と、強くアノスは決意した。
「シルト! フエゴ!!」
色死獣の盾はそのまま、伸びる炎は色死獣へと延びる。
体に巻き付くように火は色死獣の体に纏わりついた。
『ガァアアアアアアアア!!』
「アノス君! やめて!!」
「ダメです!! はやく色死獣を倒さないと!! はぁあああ!!」
アノスは再度濃度を上げ、魔法の威力を上げる。
色死獣は悲鳴を上げながら、液体となって消えた。
「あっはっはっは、流石傍若無人、悪逆非道の魔女であり魔王とは貴方のことだ! ノトリアスゴート!!」
「僕は、アノス・ファーゼンだ!」
なんで、魔王の名前を……? 今はそんなことを言っていられない。
「クリスティアさん、他の村人は?」
「だ、大丈夫。でも、」
「? どうしたんですか? クリスティアさん」
クリスティアさんは言葉を濁している。
どうしたんだろう、ずっと黙ったままで……お腹とか痛いのかな。
「あっはっはっは、お気づきでない? ここは色死獣の母体があった場所なのですよ?」
「母体?」
「そう、負の感情を抱いた人間がいた、場所なのです」
「……何を言って、お婆ちゃんは、おじさんと一緒に逃げたはずじゃ」
「いいえ? ではぁ、なぜ彼女は何も言わないのでしょう?」
「クリスティア、さん……?」
可憐である彼女がなぜか、今、顔を歪めている。
「クリスティアさん、何か、何か言ってくださいよ。母体を倒したなら、もうリアベート村に色死獣は現れないんですよね」
「……そう、ですよ」
「お婆ちゃんは、避難してるんですよね? ……クリスティアさん」
「……今、アノス君が倒したのは、色死獣になったお婆さんだよ」
「……え?」
「おやおやぁ、お鈍いんですねぇ今世のノトリアスゴート様は。私は貴方を迎えに来たのですよ? 魔王としての貴方を」
メフィストフェレスはアノスに跪いて、手にキスをする。
突発的な行動に、アノスは混乱したままだ。
「……僕が、殺したの?」
「はい、だって信頼するクリスティア嬢が、貴女に嘘をつくわけないでしょう?」
「……そんな、僕は、なんてことを」
クリスティアさんと関わったから?
そもそも俺が、王都に行くって、お婆ちゃんに話したから?
何が悪いの? 何が悪いの? 何が、何が悪いの?
全部、全部僕じゃないか。
人間だった人が色死獣になったのを見たんだ。その村人も、殺したんだ。
この手で、僕の手で。
「う、うあぁああああああああああああああああ!!」
一人の少年の悲鳴がリアベート村に響き渡った。
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