第21話 ブサメンはイケメンを超えられるか
「愛は、帰っていませんよ。どこにいるかって?そりゃ・・学校ですけど」
美崎愛の豪邸についた元・免太郎と女狐りんこは、歩太郎と付き合っている美崎愛の居場所を探して、家のインターフォンを押していた。
「そうですか。愛ちゃんいないのか・・」
「それよりも・・・」
間をおいて、インターフォンの中の相手が、言ってくる。
「あなた達は、子供なのにこんな時間に何してるんです?今日は平日でしょ?」
「うっ・・」
いきなり痛いところを突かれた。
「・・実は休学していて・・」
「・・なんでです?」
「・・・・えっと・・」
まさか、自分の顔をブサメンにした相手を昼間から探すため・・・とは言えない元・免太郎。ここで母親らしき人の印象を悪くしたら、永遠に美崎愛とは接触できない、そんな予感があった。
「海外留学の準備です。そのための費用をどうにかしようって・・」
咄嗟に、横にいた女狐りんこが、そう、言ってくれた。
「ふ~ん」
「・・・・へへっ・・・そ・・そうなんです・・費用を貯めるためアルバイトしてて・・」
ウソをつきなれていない元・免太郎はそれに乗っかることにした。
「あなた方・・えらいわね。うちの愛も友達と遊びまわってそんな考えもないのよ」
「そうなんですか?大変ですね」
女狐りんこが、その話に相づちを打つ。こういう時は、男よりも女の人の方が、心を許して相手に警戒心を与えないのかもしれない。
「そうなのよ・・最近、帰りが遅くて、毎日、ケンカしてるの」
自分のプライベートな情報を喋ってくれる美崎愛の母。
「でも・・おかしいですね・・」
「えっ・・?どういうこと?」
「本当に・・友達なんですかね・・・?それ・・・」
「・・・・・・・・」
女狐りんこの言葉に無反応してくる母親らしき人物。
「もしかしたら・・」
「いや・・まさか・・・恋人?」
「そうです・・・お母様が思うとおり・・悪い虫がついてるのかも・・・」
「あなたも・・そう思う?・・」
「ええ・・わかりますよ」
「何か知ってるの?愛のこと・・」
「・・学校の噂レベル・・・ですけど・・」
すごい、一瞬で相手を自分のペースに持っていったさり気ない女狐りんこの話術に感動していた。
「あなた達に・・娘の様子を調べてほしいの・・その今、遊んでいる友達のこと・・」
「えっ・・・いいんですか?」
予想外の展開、まさか、母親公認で探偵みたいなことができるなんて・・・
「お金はあげられないけど、何でも言って。全力でサポートしてあげるから」
「・・・・・わかりました・・」
「うまく行けば・・アルバイト代・・だしてもいいわよ」
「ありがとうございます。」
2人は美崎愛の携帯番号や個人情報を、ある程度ぼかしながら、母親から教えてもらい、美崎愛の豪邸をあとにした。
「いやあ・・りんこちゃんがいてくれて・・本当助かったよ・・ありがとう・・」
元・免太郎は、素直に女狐りんこに感謝を述べた。彼はこういうとき、自分のプライドなど消し飛んで、他人に感謝を述べられる。そんな性格だった。
「・・・・・・・・・・・」
「どうしたの?」
「いや・・なんか・・」
顔を真っ赤にする女狐りんこ。
「あんた・・もしかしたら・・」
「ん?」
「性格・・イケメンかもね・・・」
「ほんと!?」
「調子に乗るな!」
「あいた!」
女狐りんこに思いっきり叩かれる元・免太郎。
「・・・・・・・・」
「どうしたの・・?」
「いや・・なんか歩太郎(元・免太郎の今の姿)・・ちょっとカッコよく見えてきたんだけど・・」
「へ?」
「・・・私の目が悪くなったのかな・・・なんか・・あんたのこと・・好きになりそう・・」
目を細めて自分をじっと見てくる女狐りんこに、自分も少しドキドキする免太郎。
『・・駄目だ・・恋しちゃだめだ・・逃げちゃだめだ・・このセリフはパクリだ・・』
「何、顔真っ赤にしてるの?馬鹿じゃない?本気にするな!」
「あいた!」
本日、二回目の突っ込み。その際、ポケットにしまってあった元・免太郎のスマホがいきなり着信音を鳴らし始める。
「なに?その着信音?HIASOBI?」
「昼をかける。よかったよね」
「意外。そういうのチェックしているんだ」
「あ・・もしもし・・あ・・・ありがとうございます」
「ねぇ・・美崎愛を探しに行こうよ。バイト先、教えてもらったんだからさ」
「・・ああ・・今から?・・わかりました・・すぐ行きます!」
元・免太郎は、スマホを耳に当てながら、誰もいない空間に、頭を下げていた。これは日本人のよくあるクセ?なのだろうか?女狐りんこはプッと笑いがこみあげてきた。
「あっ・・笑ったなぁ!」
「で、バイト?」
「そう。レンタルイケメンの依頼」
「あんた・・よくやるねぇ・・」
「言ったろ?俺は、性格・・イケメンだって!」
女狐りんことまた会う約束を交わし、街に消えていく元・免太郎。
『待ってろ・・白雪(みゆき)・・・・お金を貯めて・・歩太郎を探し出して・・・
そして・・・』
元・免太郎は、走り出す。
彼のお金を目標はただ一つ。
自分の顔を見つけ出す旅のために
つづく
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