第14話 さようなら愛するブサメンたち・・

「ウマレ・カワールは、薬を飲むことで、皮膚の細胞を変化させて24時間以内に一番見た人間の顔に近づけること。それをあなたは歩太郎に飲まされたのよ」

女子高生の真島は、そう免太郎に説明した。

「・・でも顔は変化しても俺たちの骨格とか違うけど・・それは平気なんだろうか?」

元・免太郎は自分の歩太郎になった顎をさすった。

「・・・そういうことはフィクション(ウソ)だから考えなくていい」

真島は、雑な言い方をする。

「えっ、そこは小説だけどちゃんと説明しなくちゃ・・・」

元・免太郎はよくわからない言葉を誰に向かって言っているのか、よくわからない。

「・・・とにかく、ウマレカワールを歩太郎たちは私たちで実験して商品化しようとしていたわ。それをするためには、元に戻る薬もあるはず」

「なるほど」

「・・・・・・・・」

歩太郎は黙っていた。もしかして図星なんだろうか?このままイケメンの顔に戻れなくてどうしようと泣いていた俺の人生に、一筋の希望の光が差し込んだ。そんなきがした

「もしかして・・?」

「ん?」

元・免太郎は気づいた。

「真島って・・・その・・・元・可愛い子ちゃん?」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「歩太郎、あなたの計画は終わりよ。たとえ良い性格を手に入れたとしても、


はっきり言うわ。


あなたは・・女の子にモテない」


「!?」

はっきり、真島は言った。

「女の子は、そこだけを見ているわけじゃないのよ。そりゃ顔や性格がいいのは素敵だけど・・・優しさとか、気づかいとか、頼りがいとか・・そういうのも大事。


それに私は、別にあなたの容姿だけで付き合ったり、別れたりしていない。


それは本当よ!」


「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「それに・・・ちゃんと・・気づいて・・よ・・」

真島の最後の言葉は、すこし、涙声になっていた。

「何度も・・・」

元・歩太郎は、おもむろに口を開く。


「何度も、何度も、なんども・・同じ話を聞いた。


何度も同じ<説教>を聞かされた。


親や教師、友達や先輩、そして女の子に・・・


もう、そんな正論はウンザリなんだよ!


お前からも!」


元・歩太郎は、地の底から吐き出す、鬼のような憎しみを声に乗せて吐き出した。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

その圧倒的な凄みの声に、何も言えなくなる3人。付け加える元・歩太郎


「人間・・顔じゃないよ・・・でも・・まずは顔で・・好き嫌い・・あるじゃん!」

「歩太郎・・・くん・・」

「俺がお前を好き『だった』のも・・まずは外見だった!」

「・・・・・・・・」

やはり、真島は可愛い子ちゃんだ、と元・免太郎は思った。

『バカ・・シリアスな場面になんて不謹慎なんだ、俺は』

ちょっと天然が入っている、元・免太郎は二人の真剣な議論の中に入っていけそうになかった。さっきまで俺のターンだったのに・・・と思いながら。

「もう、お前らにも止められない。俺という人間の業を・・・」

「!歩太郎!」

ニヤリと悪魔のような顔になる元・歩太郎は何かを見ていた。

「どうやら、俺の勝ち・・みたいだな!」

「なに?」

ハッタリだ。この状況で、逃げられるわけはない。いや、逃がさない。俺たちの勝利だ。

「歩太郎!」

女の声がする。歩太郎を呼ぶ声が、後ろから聞こえる。味方だ。歩太郎を包囲する人間が、助っ人が現れたんだ。元・免太郎は振り向く。

「歩太郎!あんたのせいで免太郎君とケンカしたじゃない!」

そこには、女狐りんこが怒りの顔で自分の前に立ちはだかった。

「えっ・・・えっ・・・?何のこと?」

身に覚えのない怒りを女狐りんこから吹っ掛けられる元・免太郎は歩太郎の顔のまま

困惑していた。

「あんた・・・免太郎君と、どういう関係なのよ!あんたこと・・私が何も知らないからって・・ケンカして・・あんた・・・私と免太郎くんの仲裁・・しなさいよ」

「はっ?なにをいって・・」

「ちょっと・・・話に入ってこないでくれる!?いま、いそがしいのよ!」

真島が俺と詰め寄ってきた女狐りんこを引きはがす。

「なんなのあんた!?」

「そっちこそ、誰よ!」

「うるさい!このブス!」

「なんですって!あんたこそ!」

いつも冷静な真島さんと女狐りんこが、ケンカを始めた。

「イケメンの俺のためにケンカをするのはやめて!」

2人のケンカを止めようと、元・イケメンの免太郎が割って入る。

「はぁ!?お前のためしてねーし。なめんじゃねーよ」

「ブサメンは引っ込んでな!」

「ちょ・・・言いすぎだょ・・」

2人に言われて涙目になる免太郎はあることに気が付いた。

「・・・・・・・ぶ・・・」

「ぶ?」

「ぶたろう・・・たちは・・・どこ・・・?」

「はっ・・・」

気が付くと、元・歩太郎や性格良夫の姿が、なくなっているのに気が付いた。

「・・・・遅かった・・・・」


あと一歩まで元・歩太郎を追いつめて、元・免太郎たちは取り逃がす。


そして元・歩太郎絶対的な計画は、最終段階に入る。


この世界は、イケメンの究極・生命体を誕生させるのだった・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る