第12話 運命の再会
「歩太郎は、この学校にいる!」
真島という個性的な顔の女子高生と共に、歩太郎の顔に転生した元・イケメンこと、「池 免太郎」は、こんな顔にさせた張本人の「醜 歩太郎」を追って自分の母校にたどり着いた。
「でもさ、学校まで来たけど、結局どこへ行くの?あてはあるの?」
真島さんが、顔は歩太郎になっても、イケメンのころのプライドは忘れない免太郎に聞いた。
「・・・・・・ない」
「ないんかい!」
真島さんは、免太郎に突っ込んだ。
「でも、あいつはあそこにいる。3-Bの教室に」
「どうしてわかるの?」
「・・イケメンの勘・・というか・・わかるんだ・・・・俺たちは・・・惹かれあう運命なんだ・・だから・・・」
「・・・・・・・・・・」
真顔になる真島さんにすばやく気付く免太郎。
「・・なに・・・?」
「それって・・ギャクなの?本気なの・・?」
「・・・ん・・・・女の子に言っていたギャク・・のつもり・・だけど」
本当は女の子に告白するときに言っていた本気のセリフであることは、免太郎はついに言えなかった。
「・・・・あっ・・・そう・・・・」
「・・・・・・どういうことを言われると女の人って喜ぶのかな?」
免太郎が突然、聞いてくる。
「そんなことは一番あなたが知っているんじゃないの・・?」
「いやあ・・それがすべって・・すべって・・実は女の子と付き合ったこと・・今までないんだ・・」
ここにきて、なんと元イケメンからの爆弾発言。真島は目を丸くして、口を開けた。
「え?あなた元イケメンなのに?女の子と付き合ったこと・・ないの・・?」
「ハハッ・・やっぱり・・顔だけじゃ・・無理なんだよね・・・性格なのかなぁ~やっぱり・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・いやあ・・・ね・・・」
「まあ・・・いろいろと褒めてくれるなら・・素直に・・女の子はうれしいけど・・・?」
真島は免太郎に目を合わせずに言った。
「えっ?なに?」
免太郎は、空気を読めずに聞き返す
「だ・か・ら、優しくすればいいんだって!自分を見てくれれば!」
「えっと・・ちょっと待って・・今メモするから・・」
スマホを取り出す免太郎に慌てる真島さん。
「メモなんかしない!頭で覚えるの!それにさりげなくやれ!女の子に気づかれたら逆に冷めるから!」
「えっ・・?なんで・・?優しくされたいんでしょ?」
「そういうことを女に聞かない!逆に引くから!」
「・・・・・・・・・」
頭が明らかに混乱する免太郎。
「・・・・わかった?」
「うん。ありがとう。教えてくれて」
素直に真島に感謝を伝える元・免太郎。
「・・・・・・・・・」
「優しいんだね。真島さんは」
「・・・・・・・・・」
「ど・・どうしたの・・・?」
「そ・・それ・・・」
「えっ・・・なにが?」
よく分からない免太郎は、少し天然が入ってた。
「もういい!」
真島さんはそれ以上、何も言わなくなった。
「あっ・・」
何かを見つける真島さん。
「あ・・あれ・・?」
「ん?」
真島さんの視線の先に、見たことのある個性的な顔と仏のような顔が、2つ動いて学校の昇降口付近で何かをしているのが見えた。
「あっ・・・・・・ぶたろう!」
思わず、俺は叫ぶ。
「えっ・・・」
振り向くイケメン。いや、俺の顔がそこにあった。
「ばか!そこで呼んだら・・・歩太郎が逃げるでしょ!」
「だって・・イケメンだったから・・つい・・」
わけのわからない返事をする、元・免太郎。
「ったく・・」
真島はすでに、元免太郎を置いて階段を降り始めていた。
「先回りするわ!あなたは時間を稼いで!」
「えっ・・・えっ・・?」
「適当に奴を引き留めて!」
そういうと、すでに真島の姿はもう、なかった。
「えっと・・ぶたろう!もう、俺は怒ってないから、ちょっと話そう!」
3階の窓から手を振って元・免太郎は叫んだ。
「なんちゅう時間の稼ぎ方・・絶対にウソだろ・・」
真島は、呆れながらも、一階の階段を降りていた。
「あっ・・ちょ・・・逃げ・・」
「言わんこっちゃない!」
真島は、一階の廊下をダッシュし、『廊下は走るな』のポスターを一瞬にしてパスして、昇降口に向き合う。
「免太郎の顔をした歩太郎は・・・あそこか!」
男の手を引いて、校門から走って出ようとする元・歩太郎の背中が見えた。
「まさか・・顔を変えて男が好きになった・・・ってわけじゃ・・ないわよね・・」
真島はそんな声を上げた。しかし、今は呆れている場合じゃない。足止めをしなくちゃ。
「あー!イケメンの免太郎君が男と二人でBL(ボーイズラブ)をしながら下校している!みんな見て!」
真島はみんなにすぐに聞こえる声を上げて、そう、昇降口から叫ぶ。数秒後、
「どこ!どこ!」
「あっ・・あそこにイケメンの免太郎くんがいる!」
黄色の声を上げてどこからか女子高生の大群が、昇降口を出て、二人を追いかける。
「免太郎くん・・うしろ!」
元・歩太郎に手を引っ張られている性格良夫が、言う。
「えっ・・・なに!」
歩太郎は、背中にものすごい圧を感じて、振り返る。
「ぎゃあ!」
マグロの大群が海をかけるように、自分たちを追っかけてくる女子高生の大群が、黒い波のように追っかけてくるのが見えた。
「免太郎くん・・女子たちは何か僕たちに用があるみたいだよ・・待ってようよ」
性格良夫はそう言って立ち止まる。やっぱり性格がこういう時でも良いから
「早く・・行かないと」
「歩太郎!そこまでだ!」
「!?」
いつのまにか、どこからか、「醜 歩太郎」が目の前にいた。
「えっ・・おれ・・?いや・・・免太郎か!」
目の前に自分の過去がそこにある。歩太郎は免太郎の顔のまま、その場で石のように動けなくなっていた。
「ギャー!歩太郎よ!」
「なんでここにいるのよ!あっちにいきなさいよ!」
後ろから来た女子高生の大群が、目の前の歩太郎が現れたことにひいていた。
「・・・やあ・・みんな・・・今日もかわいいね・・・」
歩太郎こと、元イケメンの免太郎は、そう言った。
「・・・・・・・・・・・・キモッ・・・」
「あれ・・・?」
「さようなら免太郎君・・またね・・」
女子高生の大群が、潮の満ち引きのようにその場から一人残らず、消えていた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
そして、気が付くと、免太郎と歩太郎はついに目が合った
「俺は・・お前に会いたかったぜ・・・」
元・免太郎がつぶやく。
「俺は・・別に・・お前に会いたくない・・・・」
元・歩太郎は言う。
「俺のイケメンの顔・・・
そして・・俺の未来・・・全部、返してもらうからな!」
「俺は・・お前という過去を・・・全力で・・・消し去ってやる!」
未来と過去を背負った二人の男の運命の再会が、始まる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます