第2話 告白・・・そして・・・伝説へ

「池 免太郎くん・・さっきから・・なんで黙って僕を見るんだい?」


「歩太郎くん・・君の顔・・・なんていうか・・・個性的な顔してるから・・

つい・・」


醜 歩太郎(しゅう ぶたろう)が、ご飯粒を口につけながら、まっすぐイケメンである俺を見ている。「池 免太郎」こと、自他ともに認めるイケメンである俺は、なぜか、お昼も一緒に歩太郎と食べているのだ。


なんだろう・・この奇跡・・・


ここは教室で、俺たちはお互いに弁当を食べている。やけに周りの視線が痛い・・いや・・・熱い・・美男(上級イケメン)である俺と、なんというか個性的な顔をしている歩太郎君との、美と醜のハーモニー・・うまく言えないが、今、人生の伴侶を見つけたような気分に、俺はなった。

『すごい!これでは・・俺のイケメン度をみんなに無意識にアピールできるではないか!』

俺はほくそ笑みながら、歩太郎とのランチに自然と気分が上がった。

「ねえ・・ちょっと・・真剣な話をして・・いいかな・・?」

「えっ」

歩太郎君は、俺をじっと見つめてきた。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

これは・・恋の予感・・ぢゃない。俺がこんなにも舞い上がって歩太郎君を出しに自分のイケメンぶりを周りアピールしていることが、ついに歩太郎君にバレた・・?

やばい。彼の機嫌を直さないと、彼にどんな目に合うかわからない。彼は頭が切れる。頭が超良いのだ。でも、ちょっと顔が個性的なだけだ。

「・・な・・なんだい・・・歩太郎・・くん」

俺は、動揺を隠すまいとして冷静を装う。だが語尾が上ずっていた。

「・・・・・・・・ちょっと・・気づいたんだ・・」

「なにを・・?」

「今まで黙っていたけど・・・」

確信めいたことを口にする歩太郎。ついに俺のイケメンを暴いてくる?それとも自分の醜さをアピールしてくるのか?俺の心臓は、リズムを急速に奏でる、すごいビートだ!そんじょそこらのユーチューバーなんか、めぢゃない。そんな音楽を体内で心臓が奏でている。

「・・・・やっぱ・・・言わない方が・・・」

口に手を当てて、俺を何度も見る歩太郎。すごく・・・気まずそう。

『・・なんだ・・・歩太郎のくせに・・』

俺の心の声が、そう無意識に言う。おっと。駄目だ。俺は性格もイケメンなんだ。こんなすぐに自分の初期設定を壊すようなことを、してはいけない。彼は歩太郎君だ。何を言われても動じてはいけない。そうなんだ。


俺は・・性格も『イケメン』であらねば・・ならないんだ・・


「なんだい?大丈夫さ・・・歩太郎君・・なんでも言ってごらん」

俺は、さわやかに、そう言った。まわりも俺のイケメンぶりにため息をつく。

「免太郎くん・・・さすがだわ・・」

なにがさすがなのか、だれも突っ込まない。まあ・・それはいい。

「ありがと、池くん・・・でもね・・言わずには言われないんだい・・・・・・言ってもいいかい・・・」

「ん・・・どんなことだい・・?さ・・いってごらん・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「池くん・・・その・・・・」

「歩太郎君・・・」

「池・・免太郎君・・の顔って・・・ブサイクだよね・・」

「はっ・・?」

俺の顔は、そのとき、歩太郎の衝撃の言葉で止まった。いや、世界の時間、すべてが今、止まった。


歩太郎は、ついに言い放った。


俺のすべてを・・俺の存在意義を否定する言葉を


「ぶ・・・歩太郎・・・」

「池・・くん・・・」


俺たちの衝撃の美と醜の出会いは、このあと、とんでもない方向へ転がりだしていく


つづく

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