第11話 好きな音楽

私が好きなアーティストの切り取りを挟む下敷きにしていたのを見ていたクラスメイトは

私は𓏸𓏸が好きという噂というか印象つけられたらしい

まあ私自身見られたらそう思われるのは当然だろうと思ったので構わなかった


ある日彼、西川が下敷き見せて、と言ってきたのでそのまま渡して見せた

あんま曲知らないんだよねーとブツブツ言いながらある程度見て納得したのか返してきた


そのしばらくあと西川の下敷きが私と同じように好きなアーティストの切り取りになっていた!

あ、参考にしようとしたのだろうと思い

「作ったんだ、いいね」

といったら

「いい曲いっぱいあるんだよ、聴く?」

と聞かれたのでCDを貸してくれるのかといいのかなと考えながらも彼の好意を無下にしたくなくて

うん、聞きたい

と素直に答えた


次の日にはCD持ってくるのかな?と思ったらなかなか持ってこない

あれ?気が変わっちゃったかな?

と思って催促するのも悪いので何も言わず日々を過ごしていた


そんなある日、やっぱり放課後帰りの支度をしてたら

「はい」

と何かを渡してきた

向かい側にいるのですぐ手はお互い届く

西川の渡してきたものを見てみたらカセットテープだった

「俺の好きなやつ厳選してきた、あげる」

とちょっと照れくさそうに


え!?すぐCD貸して貰えなかったのはカセットテープにダビングをしてたからなんだ!

と思って心の中で喜んだ


そうしたらそのやり取りをしてる私たちを班の他の男子が見て

「なにそれー、あげるのー?見せて見せてー」

とばっと私の手から奪ってしまった

曲のタイトルが書いてあるところを読んで

「ILoveYou」が1曲目なんて西川の気持ちなんじゃねーのꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)ヶラヶラ

と西川をはやし立て

「好きな順で入れただけだ!」

と必死に取り返そうとしてる姿の顔は赤かった


そのやり取りを見ている私の顔もきっと赤かった…まさかそんなって


曲のタイトルから分かるように

西川のくれたカセットテープは尾崎豊集だった


中学生の私たちには刺さるものがあるんだろう

西川ももれなく

歌番組位でしか彼の存在は知らず

家に帰って聴いてみて本当に知らない曲ばっかりだったんだと尾崎豊を好きになる人が多いのがなんとなくわかった

(私の好きなアーティストとは正反対ではあったが歌詞など難しいながら何回も聞いていた)


さて、問題は次の日から

クラス中の賑やか派の人達の格好のからかい相手になってしまった私たち

私は学校行ったり行かなかったりで避けることが出来たけど西川のほうはそうもいかなかった

どちらかと言うと賑やか派のほうにいたから余計にからかわれてしまっていたようだ


私が登校しても挨拶もなくなった

好きなアーティストについてのなんでもない会話もなくなった


きっと私が不登校気味じゃなく明るく可愛ければからかわれるといってもかわせていたのかもしれない

西川が悪いわけじゃない、好意で好きなアーティストのオススメを教えてくれたのだ

それなのに…話すことさえ出来ないなんて


はじめはからかいで話すことをやめているのかと思っていた

そう、思っていたのは私「だけ」であって

実際西川は私を避け始めた


なんでこんなことになったんだろう

私の何が悪かったんだろう

どうしたらまた話せるんだろう

ない頭でたくさん考えた

それでも現実は変わらず西川は楽しそうに男子と笑っていた


あ、もう終わった話なんだ

気にしてる私が馬鹿なんだ

嫌になって不登校、保健室登校が増えていった


暑さだか貧血だか何かで保健室で寝てて放課後まで寝てた

そうしたら起こされて保健室の先生かと思ったら西川だった気がする

1人で来たんだろうか

「大丈夫?」

久しぶりに私へ向けた声だった

世界がひっくり返ってしまった状況から少しだけ救われた気がする

「ありがとう」

多分カバンを持ってきてくれただけで西川は帰って行った

もしかしたらここら辺は夢なのかもしれない

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