1000字の怪談?
神原
第1話
とある創作論の方の処でお題が出ていたので1000字縛りで怪談を書いてみました。怖いかな? 出来るだけの事は書いたけど、よくある話になってしまった感もあったり。ストーリーが決められているので、自由になる部分をいじってみました。
時間も縛りのなかにあったので、1時間半以内での出来です。
一日経て、修正してもいいそうなので、ちょっと手直し。
______________________________
今日私は引っ越しをした。駅が近く賃金が安い優良物件だ。ほくほく顔でアパートの二階に駆け上がる。
そしてドアを開けた。
窓の外に夕日をのぞむ。お湯を浴槽にはる迄の時間でおにぎりを二つ食べ終えた。ここに来るまでは気にならなかったがなんだか部屋の空気が重い。ウキウキ気分が少しだけ引いていく気がした。蛍光灯の明かりがやや心もとない。
昼間に運んだ荷物をそのままに私はお風呂へと入った。
ぴちゃん。
天井から落ちた雫が逆に静けさを強調している様だった。暖かい湯の中にいるのに急に鳥肌が立った。異様な気配を感じて私は入口を眺めた。
ガラス戸の上部から赤い雫が流れ落ちる。それはどんどん広がって、戸を赤く染めた。息を飲み思わずお風呂から立ち上がる。抜け落ちた長い髪の毛が体にいっぱい付着していた。
「きゃあああっ」
両手で顔を覆って瞳を閉じる。恐る恐る手を外すと赤かった戸は脱衣所の暗い色に戻っていて、髪の毛は消えていた。急いでお風呂からあがる。体を拭いて、服を着た。
暖かいお湯に入っていたのに体の芯から冷えている。気のせいだと自分に言い聞かせる。心臓がばくばくしている。
落ち着く為に水を飲んだ。
「もう寝よう」
こう言う時は寝てしまうに限る。布団を段ボールから出して床に敷いた。
電気は怖いから付けたまま。布団をひっかぶって目を瞑る。
いつの間にか眠っていた様で暗闇の中目を覚ました。電気付けていたはずなのに。
押し入れに向けていた足がその時、がっと掴まれた。全身の血の気が引く。再び心臓が早鐘を打った。
「いや、助けてっ」
足をじたばたさせもがいた。見えない手は両足を引っ張り、押し入れの方へと引きずられる。
足に力を込めてこれでもかと言うくらいに暴れると見えない力は消えていたのだった。布団から出て急いでここに来た時の荷物だけを持ち部屋を後にする。
ホテルで一泊して電話で大家に問い詰めた。事故物件じゃないのかと。
「ごめんなさい。あの部屋は実は」
「ふざけないで!」
思わず怒鳴ってしまった。生きた心地がしない。あのままあそこに居たらと思うと背筋がぞっとした。
女の人があの部屋で殺されたらしい。押し入れに入れられてその身が腐るまで誰にも見つからなかったそうだ。
安い部屋にはもう飛びつかない様にしようとこの出来事を私は胸の奥にしまう。
あの時掴まれた時ついた足首の赤い手形がいつまでも消えなかった。
1000字の怪談? 神原 @kannbara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます