第2話 ある男

 ガラガラ。


 学校のドアを開け、教室に入った。



 ここは、三階。



 二年B組の教室。



 さわさわと木々が風で揺れる音を聞きながら、私は机に教科書類を詰め込んでいく。



「おはよー。」



 友人二人のうち一人がやってきた。



「おはよー。」



 挨拶を返し、私は席につく。



 友人も、机に物を詰め込んでいく。



「今日寒いよね。」



「暖房欲しいくらい…。」



 なんて会話をしていると、ガラガラと、教室のドアが開いた。



「ねぇ、聖香せいか居る?」



 聖香とは友人の名前だ。



 聖香は、教室に来た男子のところに行った。



「どうしたの?」



「いや、教科書忘れちゃってさ、貸してくんね?」



「また?もー、しょうがないなぁ。」



 聖香は、教科書を取り出し、その男子に貸す。



 男子は、教科書を借り、自分のクラスへと帰って行った。



 そんなやり取りを見た私は、気分が悪かった。



 さっき来た男子は、この調子で聖香に会いに来ようとする。



 先生に怒られようが、聖香が困ろうがおかまいなしに。



 私と仲の良い男子、さくは、「絶対聖香の事狙ってるじゃん。」と話していた。



 毎日のように教室に来るので、ついに先生も切れた。



「あんまり、教室に来るな。コロナが、まだあるんだから。」



 ちょうど、コロナが流行っていたころに、頻繁に来ていたので、担任も迷惑だったのだろう。



 だが、俺が良ければ良いという考えで、先生の注意もスル―だった。



「え、いいじゃないですか。」



 心底ダサイ。何故、かっこつけて言えるのだろう。



 かっこいいと思っているんだろうなぁ……。なんて愬と話していた。



「冷めた目で皆見ている事に気がつかないんだな。」



「だねぇ。かっこつけてるのがダサイね。」



 そんな会話が愬と続いた。



 だが、その男子のせいで、私達の友情は壊れていく。



 それを私達は、まだ知らない。



 



 



 



 


 



 



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