無責任な言葉だけど頑張れとしか言えない

パ・ラー・アブラハティ

無責任な言葉で唇を染めて

 頑張れ。これを傷ついてる君に無責任に投げかけてしまっていいのだろうか。他の言葉を探しても、思い浮かび上がってくるのは頑張れと責任を捨ててしまうことが出来る言葉のみで、上手く伝えれない。


 涙を頬から伝わらせて唇を噛み締めて、生きる気力を無くしてしまった君に僕はなんと言えばいいのだろう。気休めの言葉ならいくらでも吐ける。頑張れ、大丈夫だよ、前を向いていこう、これら全ては君の気持ちを軽くするものでは無い。分かった振りをする善人の皮をかぶった汚い言葉なんだ。


 でも、そう伝えることしか出来ないのが現実なのだから。気休めの言葉で世界は回っていて、救われる人も当然いる。ひねくれてしまった僕はそんな気休めの言葉すら吐けない最低な人間になってしまっていた。


 縋るように泣いている君をただ呆然と見ることしかできない僕は最低だ。ただ言い訳を並べて、言わなくていい理由を探して目の前の現実から目を逸らそうと必死で一番汚いのは僕じゃないか。


 無責任な言葉というリップを塗れないような人間に価値は無い。言葉を吐くことに価値があると言うのに、それすら出来ないのは逃げたいだけだ。


 なら、言おう。胸の奥にしまっていたリップを取り出して無責任な言葉に唇を染めて。


「頑張れ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無責任な言葉だけど頑張れとしか言えない パ・ラー・アブラハティ @ra-yu482

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ