僕はその優しさにすがる
休憩後の三人とライオットさんの訓練が終わった後、僕はお腹の痛みを未だに感じながらエリーの部屋で一人帰る準備をして廊下を歩いているとソフィさんが僕の方に近づいてきた。
「あれ、もう帰るの?」
「はい、ここに泊まるのはだめっていう約束なので」
「へぇ~。じゃあさ私が送ってあげるよ」
「大丈夫ですよ。御者さんは僕たちのことを知っているので乱暴に扱ったりもしませんし」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに。ね?」
このまま行っても平行線になりそうだし、御者さんを待たせすぎるわけにもいかないのでソフィさんのお願いを受け入れることにした。
「良ければ、泊っていきますか?」
「え、いいの!?」
家に着くと、辺りはもうすでにだいぶ暗く街灯の明かりが目立つくらいになっていた。
ソフィさんの家はエリーから前に聞いた感じでは『そこまで距離はない』ということらしいけどさすがに女性一人では危ない気がするし、なぜかわからないけど僕はそうしたいと思ってしまった。
「はい、大丈夫ですよ。先にご飯にしますか?お風呂にしますか?」
「う~ん……悩みどころだけどご飯がいいな」
「わかりました」
そういって僕はキッチンに行って食材を魔道具の中から取り出し、料理を始めた。
「ふふ……」
ソフィさんの顔は見ていなかった。
「「いただきます」」
ソフィさんの好みはよく知らないけど、とりあえずエリーが好きなものを作ってみたけど表情から見て成功したみたいだった。
「おいし~!!」
「ありがとうございます。僕、もともとレストランで働いてたのでそういってもらえてすごくうれしいです」
結婚してから、エリー以外の人に料理をふるまうことはなくなってしまったけど僕はおいしそうにいっぱい食べてくれる人を見るのが好きだった。
「あ、そうだ。お風呂そろそろ準備してきますね」
「ありがと~」
お風呂場に行って、お湯を沸かし始めてリビングに戻るとソフィさんの皿は空になっていた。
「あ、おかわりいりますか?少ししかないんですけど……」
「あ~もらおっかな?」
お皿に盛りなおしてソフィさんに渡して、僕の分のご飯を食べていった。
「「ごちそうさまでした」」
「お風呂、多分沸いてると思うのでお先にどうぞ」
「わかった~」
片付けを終えて、リビングのソファーに座ってお腹のシャツをめくると青いあざがお腹にしっかりと残っていた。
「これ、大丈夫かな……?」
一番怖いのはエリーにこれが見られた時だけど、エリーが返ってくるまでの一か月で治るかは怪しいくらいに濃いあざだった。
「それに、こんなのソフィさんに見られたくない……」
あれ、僕なんでソフィさんのこと考えたんだろ……。
「私がどうかした?」
お風呂から出たソフィさんが頭の後ろから僕に抱き着くようにして腕を回してきた。
まだ暖かさの残る感触が肌から伝わってくる。
「いや、なんでも……」
「じゃあ、それは何かな?」
「……!!」
痣のある位置をなでるようにしてソフィさんが聞いてきた。
「これ……机の角で打っちゃって……」
嘘でもいいから『レティさんにされた』ということを隠したかったけど、それを見透かすようにソフィさんは口を開いた。
「レティでしょ?」
「……」
「まあ、いいや。というかそれ大丈夫?」
「……痛みはないです」
ソフィさんの心配が僕の心に響いて、目から涙が落ちてしまう。
すると、僕のことを自分の胸に抱きよせてぎゅっと抱きしめてくれた。
「……大丈夫。私が守ってあげるよ」
「このまま寝て、辛いことは全部忘れて。そしたらきっと大丈夫だから」
「……団長じゃなくて私を頼ってね」
その言葉を聞いて、僕はすっと眠りに落ちた。
ガタガタ、と揺れる振動に目が覚めて周りを見渡してみると僕はいつもの馬車の中で僕の枕は柔らかい何かだった。
「起きたね、ユート君」
「もうすぐ着くから、そのままでいなよ」
「はい」
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