奴隷の立場


 

 いつもと同じように朝、エリーよりも早く起きて朝食を作っているといつもより早くエリーが起きてきた。


「おはよう」


「おはよ。ユート」


「まだご飯できてないからちょっとだけ待っててくれる?」


「あぁわかった」


 


 他の物を用意し終えて、スープの入った鍋を温めていると後ろから声をかけられた。


「少し話があるんだがいいか?」


「いいけど……時間大丈夫なの?」


「そこは問題ない。別にそんな長い話でもないからな」


 温めたスープを器に注いで、テーブルの上に並べた朝ごはんを食べ始める。

 結婚するときに決めた『朝ごはんは一緒に』というルールはエリーが王都の外に出ているとき以外はずっと守り続けていた。


「それで、話なんだが。ユート、お前には今日から私の付き人をしてもらう」


「付き人?」


 突然、よくわからないことを言われてぽかんとした表情を浮かべてしまう。


「まあ、名目上は書類仕事の手伝いとかだな。本音は私が一緒にいたいだけだが」


 僕としては家にいても暇なだけ、養われているだけでは嫌だったからこの提案はうれしかったがこの国での『奴隷』がどういうものか知っているだけにそんなことをしたら迷惑をかけてしまうような気がした。


「それ大丈夫なの?」


「問題は……ない、とは言えない。知っているだろうがこの国では『奴隷』は基本的に『モノ』だからな」


 奴隷=モノ、というこの考え方は古くからのものだろうからこの国の中ではどこでも奴隷は嫌われている。それは大半が汚く、みすぼらしいものがほとんどで貴族のオモチャとして買われた者たちがきれいなだけだからだ。

 そして『モノ』であるから盗まれることだってある。


「昨日みたいなことがないとは限らないし、ユートみたいな華奢な体ではいつさらわれてもおかしくない」


「替えが聞くからとミスした奴隷をすぐ殺すやつだっている。もしそんな奴に盗まれでもしたら私は気が気でならない」


 それを聞いていると僕は一緒に行きたくなるがそれでエリーが陰口をたたかれるかもしれないと思ってしまうとうなずけないでいた。


「僕も一緒にいたい、けど……」


「私のことなら大丈夫だ。私の団員で陰口をたたくような奴はいない」


 僕のことを一番に考えてくれるエリーの言ったその言葉を信じて、僕は付き人をやってみることにした。


「…わかったよ。僕、どんな服着ていったらいい?」


 いざ外に出るとして考えてみると首輪はどうしても目立ってしまうし、一般的な奴隷の服とは違う服しかもっていないのでどうしよか迷ってしまった。


「そのままでいいだろう」


「え?」


「もし必要なら後日に買いに行こう。今日はとりあえず今のままで行くぞ」


 今着ているのは、昔お店で働いてた時のエプロンと普段着でとても騎士団の付き人としてふさわしいものではなかった。


「え?え?いや……」


「ごちそうさま」


 エリーはいつの間にか朝ごはんを食べ終わっていたのでご飯よりも服のことが気になるが僕も遅くなりすぎないようにさっさとご飯を食べ進めていった。



 






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