ネクロマンス

 村長は語る。―かねてから、先々代の先々代そのまた先々代から、この村の魔導守衛はネクロマンスの力で動いていた。だがその力はよわくなり、ひとつの魔導守衛の力が使えなくなったのだ。しかし、伝承の中で、魔導守衛はそれぞのものが〝英雄〟の威厳を保ってきておった。それが今更〝悪しき力〟で動いていると世間にばれようものなら、どんな仕打ちをされるか、5年に一度いけにえは必要だったが、この秘密を守る私こそ、いけにえその物ではないか!!―

 ふと、村長はエドをにらみつける。そして襟をもって人々に語る。

「このもの!!この小僧の両親は、この秘密を暴露するために魔導守衛をひとつ盗み、中央の冒険者ギルドへ突き出そうとした、私はそれが許せなかった、もうひとつの魔導守衛を使い―彼らを殺害した!!」

 エドが口をあけ、呆然となる。

「そんな!!」

「だが―その時しんだのは、彼らだけではない、私の甥である、レドルも死んだのだ!!」

「!!?」

 エドは、頭が混乱した。

「レドル……どういう事?」

 ふと、レドルがにやり、と笑った。縄がゆるゆるとほどけ、レドルが叫んだ。彼の体は服がぼろぼろになった間からそこら中に縫い傷があった。そして黒い瘴気が立ち込めていた。

「村人よ!!村長の言葉を聞け!この村が生き残るには、いくつもの〝掟〟があった、確かに〝ネクロマンス〟は忌避され、魔女のような迫害をうける〝悪魔の魔導術〟しかし、古い時代、苦しい飢饉や、戦争から生き延びるためにこの村は仕方なくそれを選んできたのだ、真実をしってなお、この村長だけが、我々アーシュヴァン一族だけが悪といえようか、古くは我々と肩を並べていたルーバルト一族、エドの両親たちは、同じくかつてその事を脅しに使い、われわれを滅ぼそうとした、だが結果は〝ネクロマンス〟の力に屈し、いまではこの小僧一人だ、そして“今”真実を知るのはこの小僧と、旅人のみ、村人たちよ、何を選ぶ!!隠ぺいか、くだらない正義か、どちらを選ぶのだ!!」

 村長が引き取り、続ける。

「もう外からの侵略に怯える必要もない、ネクロマンスの力は、〝モノ〟と化した“魂”に宿る長く使えば使うほど強固になる、魔導守衛が2体いるのは皆も周知の事実、我は〝さる人物〟の力をえて、この一体の魔導守衛を完全な状態に回復した、2体目の修理など必要ない!」

 セーゲルが、口をはさむ。

「村長さんよ、もう一つ隠していることがあるだろう?その〝魔導守衛〟宿っているもの、かつて英雄と呼ばれた男の魂が宿っているが、そしてその影に……多くの村長の亡霊たちが……だが問題はそこじゃない、その〝英雄〟お前をずいぶん毛嫌いしているように見えるぞ」

 村長は、セーゲルの言葉に背後をみて一瞬怖れを見せた。セーゲルは続けて村人たちに叫んだ。

「お前たちの英雄は、本当にこれを望んだのか?あるいは〝救世の英雄〟魔王を滅ぼしたものたちは〝犠牲〟の上に生きることを望んでいたか」

 村人たちは、たじろいだ。村長は、じっと考え次にはセーゲルをみてむしろしっぽを掴んだかのような顔をして微笑みかえす。

「なぜ、お前にそれがわかる?」

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