贄の火

「何をしている?」

 かがり火の中に大の大人―5,6人ほどの衛兵たちと村長が集い、巨木の丸太で囲われた巨大な焚火を囲んでいる。

「何って?儀式じゃよ」

「何の儀式だ?」

 暗がりから、セーゲルが顔を出した。

「そういうお前は何をしておる?見たところ、追ってを倒したようじゃが……なぜ村にもどってきたのかのお?」

「俺は……」

 村長が、指をくわえ指笛をふく。ピーっと甲高い音がなると、周囲からぞろぞろと武装した村人たちが現れた。

「まあよい、すべて仕組んだ通りに物事がすすんでおる、なあ?エド」

「レドルーーッ!!!」

 エドが勢いよくかがり火の方へかけていく、近づくと近くづくだけ全容よくわかった。そのエドの襟首を、村長がつかんだ。

「動くな」

 同じくセーゲルの後ろの暗がりからあらわれたロベルに、村長が警告する。

「この村の“英雄”は怒っておる、英雄の怒りを沈ませるたった一つの方法がある〝贄〟だ、ワシは別にこの子を贄にしてもいい、だが、人々はそれを許すだろうか?お前が逃げる事を、なあ?エド?この村唯一の理解者であったレドルが死んでもいいのか?」

「どうすれば?」

エドの叫びに村長が答える。

「お前がいけにえになるんだ!!エド!!」

ロベルが叫んだ。

「村人たち!!こんな儀式を許すのか!!」

セーゲルも同じく立ち尽くして周囲の反応をみていた。だが人々は目をそらしたり反応が鈍い。

―何が起こったのか―

 まずかがり火の手前では、レドルがぼろぼろの体で丸太にしばりつけられており、その下に多くの薪がしきつめられており、暗闇の中、かがり火の向こう側で照らされている魔導守衛、その姿は紛れもなく、亡霊たちにとりかこまれ、黒い瘴気にとりかこまれていたのだった。

「ネクロマンス……その力で動いていたのか、こんな事を繰り返してきたのか?伝承を守るために」


「ああ、何もかも、このエドの両親のせいじゃ〝村守〟を、そしてレドルの不幸はそこから始まった」

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