ある丘の上でセーゲルとロベルが言い合いをしている。それを静かにエドが見守っていた。

「なぜ助けた?」

「……」

「答えないのか?」

「意味や訳などない、お前が“あの町”を助けた時なんといった?」

「……見返りなど必要ない、美徳や教訓は、称賛などなくとも己が内に宿るものだと」

「そっくりそのまま言葉を返そう、これからの事は、その少年と相談するがいい」

「俺の真似か」

「いや……恥ずかしい話だが、私がかつて所属したパーティでは……それを美徳にする誰からも敬愛するヒーラーがいたのだ」

(恋心か)

 セーゲルはロベルの目を見て勘づいたが口に出さなかった。ロベルは牢の鍵を魔法でぶち破り、セーゲルとエドを助けた。エドは、迷っていた。

「どうする?お前の信頼する男はお前を裏切った、ここにいる意味もないだろう」

「けど恩は……」

「恩ならいきていればいずれ返すチャンスもあるだろう、お前はまだ若い、焦る事なんてないじゃないか」

「……うん」


 やがて、三人が立ち去ろうとする。丘からは村がよく見えて二人が去ったあとにじっくりとエドだけがしたを見降ろした、そして何かに気づき、小さくいった。

「火?」

 次第に何かに気づいて、それは叫びに変わった。

「火事だ!!強い火だ!!」

「火事??」

 セーゲルが振り返る、すると、その直ぐ傍で声がする。


「あれは火事ではない〝贄の火〟だ」

 暗がりから、黒装束に顔を布で巻いて目と鼻だけだした男が現れた、それも3人も、小刀のような武器を両手に抱えている。

「!!こいつら、ただ者じゃない」

 セーゲルがそうつぶやくとすぐにロベルは小さな杖を取り出し魔法を唱えた。

「ゼド・ヘルフレイム!!」

 即座に二人の男を炎がつつみ、叫び声が聞こえる。だがそれを気にも留めないように、一人の男がセーゲルとロベルの直ぐ手前まで瞬間移動のような速さでかけこみ

、エドをつかまえ、喉に小刀をあてた。

「ついてこい、すべてを教えてやろう、まあその先にあるのは、死だがな」

 ロベルと、セーゲルは顔を見合わせた。そしてお互いにうなずき、覚悟をきめたようだった。

「もともとそのつもりだったが」

「そのガキを人質にとられたんじゃな」

「くっ……」

 黒装束の男は、容赦なくエドにナイフをつきさそうとかまえた。その瞬間だった。

「くっ!!」

 セーゲルが杖を取り出す、そして呪文を唱えようとした―。がそれよりも早く、それは起こった。

「ぐうおお!!」

 先程の、炎に焼かれた二人の死骸が起き上がり、まるで血肉に飢えたゾンビのようにエドを捉えた仲間をむさぼり、そして彼が息絶えると、その場に倒れたのだ。

 一部始終を見たエドは、セーゲルをみた。そして怯えたようにいった。

「お兄ちゃん、ネクロマンサーなの?ネクロマンサーは、絶対悪だって両親が……」

「いや、俺は……いや、その」

 セーゲルは唇をつよく絞った

「だって、お兄ちゃんの背後に、黒い渦が渦巻いているよ……」

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