その日ロベルが見た夢はひどいものだった。ロベルは英雄たちのグループの中にいて、雑用をやらされたり陰口をたたかれたり、いじめにもにも似た仕打ちばかりうけたり、実際、現実にはもっとひどい状態にもなったが。

 だがいい夢もみた。セーゲルという青年が、ある街で人々を救った夢だった。こちらのほうがリアルな夢で、事実とも近しかった。彼は自分の力を隠していた、それもそのはず、彼は人々が忌み嫌う力を使って人を助けた。英雄扱いはされなかったが、彼がいなければその街のソーシャルコアの一部は故障を起こし守衛が暴走していただろう。それこそ二人の初めての出会いだった。まさか二回目の出会いがこのような辺境の村で訪れるとは。彼は、過去をひどく恐れているらしい。


 別の場所では、深夜こっそりとレドルが持ち出した牢屋の鍵を使い解放されたエドとセーゲル、レドルの後をついていきながらセーゲルはこっそりエドに耳打ちする。

「なあ、なんでお前あの男を信用しているんだ?」

「?レドルは、僕を何度も助けてくれたから」

「だがあいつは……」

 一瞬口どもるが、セーゲルは決意してつげる。

「あいつはまともな人間じゃない」

「そんなの、僕も同じですよ」

「いや……」

 ものの数十分もしばらくすると、村の奥底のソーシャルコアの裏手に案内された。

「えらい不用心だな」

「守衛がいないからな、だが問題はない、俺がいる」

「??どういう意味だ」

「今までも何も問題がなかったって事さ、そんなことより早くこれを抜いてみろ」

 いわれた通りそれに目を向ける。それは、たしかに遺跡の装飾、飾り台の上に垂直につきささっている剣だった。しかし見てすぐに違和感にきづいた。だが、セーゲルはいう通りにぬきとろうとした。

「クッ……」

 無理やり抜こうとしたが、やはり抜けない。魔術鍵がかかっているのだろうか、セーゲルには、魔法陣が刀身を通っているのが見えた。

「ふっ、やはりだめか、期待はしていなかったが……まあいい、これがだめなら次の依頼を……」

 レドルがそう言いかけたときだった。

「動くな……」

 レドルが、続ける。

「足音は殺してきたはずなんだがなあ」

 その顔はなぜか得意げににやけていた。

「この、盗人どもめ!!」

 村長と、衛兵たちがそこにいた。

 

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