エド

 翌朝

「どうして黙っているんだ?」

「……」

 今朝早く、セーゲルの前の牢に顔がはれてぼろぼろの状態のエドが連れてこられて監禁された。

「ムチでぶたれたわけじゃないだろ?なんだその傷……」

 エドはそれでも何も話さないので、かばうようにしてセーゲルは口にする。

「この村、どうにもうさんくせえなあ」

「村を悪くいうな」

「ああ?」

「俺はお前の為を思って」

「余計な世話だ!……流浪者の冒険者には、村で生きる事の意味がわからない」

「は?そいつは、どういう意味だ、俺だって望んで旅してるわけじゃねーぞ」

 ふと、彼がエドの顔を覗き込もうとするとエドはその瞬間察して振り向いて背中をむけた。顔から涙がこぼれているのが分かった。セーゲルは察する。

(身体的な苦痛でないてるんじゃないな……?)

 エドが続ける。

「村付の冒険者こそが英雄だ、俺の両親はそういっていた」

「ふん、さぞ立派な両親だろうな」

「ああ、そうさ、何でも知っていた、村長よりも賢くて」

「へえ、でも、お前この村に義理があるのか?」

「……」

 背中を見せたまましばらくすすり泣く声が聞こえたあと、ふと思い出したように、ふりかえり涙か殴られたあとかわからぬほど晴らした顔でこちらをむいていった。

「俺にはレドルがいる、兄貴分だ」

「レドル?そういや、なんか初めてあったときに聞いた名だな」

「俺が“村守りの剣”を抜けないのは理由があるからだって、レドルだけは信じてくれている、いつか俺がそれをぬいて、両親の汚名を晴らしてみせる」

「汚名?」

「両親は……死んだ子供を使ってネクロマンスをしてたっていわれてるんだ、俺はそんな訳ないのを知っている、だって……」

 エドはまた一層泣きそうな顔をしたので、セーゲルはめんどくさそうに頭をかいて素早く話題をそらした。

「で、〝村守りの剣〟って何だ」

「村の……奥深く村の原動力である〝ソーシャル・コア〟の後ろにあるものだ、伝説ではこの村のものにしか抜けないもので、そもそも外部のものは触れる事さえ許されない、触れれば即刻死刑だ、遺跡の一部に深くつきささっていてこの村のコアが〝英雄〟と認めた人間にだけ引き抜くことができる」

(どっかで聞いたような話だなあ)

 窓格子から外を見ながら、セーゲルはぼんやりと話を聞いていた。エドは続ける。

「そいつを引き抜くことで、英雄と認められた人間は、二つの道がある、この村付の英雄になるか、それとも自由な旅にでるか、でも俺の両親はいっていた、結局は一択なのだと、この村はいい村だ、厳しい掟もあるが誰もが支えあっている、だから受けた恩は返さなければ――」

 長旅の疲れで、セーゲルは彼の話を聞きながらうつらうつらして、途中から寝てしまったようだった。

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