罪悪

 その夜―セーゲルの捕らわれている地下の牢屋の前に一人の男の影が現れる。

「お前は……」

 そこにいたのは老人ロベルだった。あきれた顔をして、セーゲルをみている。

「また厄介ごとをおこしたな?なぜすぐに逃げない?お前の“技”ならすぐに出られるろうに」

「俺の運命だ、いつもこうなる、それに俺は……ある出来事に罪悪感があるんだ、こうなるのも運命かもしれない」

「……あの町でもお前はそうだったな」

 セーゲルは暗く影を下ろした瞳でうつむく。二人の間に、奇妙な沈黙が流れた。

「そういうおまえこそなんで、この牢なんかに、首を突っ込む、あらぬ疑いをかけられるぞ」

「勘違いするでない……私は許可を得てきている」

「ふうん、で?」

 老人は、遠い目をして牢の外、格子のつけられた窓の奥をみる。

「俺は、お前に出会あってから昔のことがきになって仕方がない、あの英雄たちの変化は、何だったのかと……それにお前は私によくにている」

「にてねえよ、俺は前を向いてる」

 ふいとそっぽを向くセーゲル。すねたように座り込む。

「それに、子供は前を向くべきだ、あんたみたいに後ろむきじゃしょうがない、俺は……」

 セーゲルは、ロベルのタトゥーの刻まれた首元に目をやった。

「大方あんたも、英雄にひどい目にあわされたんだろう、過去なんて捨て去るべきだ、そうすれば、あいつは立派な冒険者になる」

「……雑談はそうと、お前はこれからどうするつもりだ、また首を突っ込むのか?」

「スフィアネットワークを見る」

「無駄じゃろうて、お前が“過去”を避けている限り、お前の本当のちからおをつからんかぎり」

 そういって、ロベルは牢をあとにした。地面に盆にのせられたセーゲルの食事をおいて。

「ちっ、わかってんよ」

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