罪人

 その後、しばらくその場は騒がしかった。ロベルは子供に同情することも、その時も事情に深入りすることもしようとしなかった。……広場であの若者を見るまでは。

「はーなーせ、俺は人助けをしただけなんだ」

「静かにしろ!お前は村の重要な財産を壊した、その事実だけで十分罪がある、だがこの村はおおらかだ、お前のこれからの態度次第では……」

「うるせー、アホ!!!」

 その声に初めは何の興味もしめさなかった。ロベルの瞳は薄くにごり、首もとに手をかざす、そこには円環状に鎖の入れ墨がなされていた。ただのソレではなく、魔法陣めいていたのだが。

 ふと、声に耳をすます。すると自然に体が動いた、つい最近聞いた声、そんな気がしたのだ。

「はあ、はあ!!」

 柄にもなくかけだし、息を切らす。公衆が人込みをつくり、その男を輪を作るようにしてかこっていた。口々に文句や推測を語っている。

「最近の無鉄砲な若者冒険者だわね」

「本当は盗人なんじゃないか?」

「恥さらしめ、英雄がいたころには、魔王軍の仲間として賊刈りの対象になっただろうな」

 人込みをかきわけると、兵士のような格好をした男たちに5人がかりで縄でしばられ、押さえつけられ両膝をつくその青年がいた。その青年にこそ彼は見覚えがあった。

「セーゲル!!お前、こんな場所で何をしておるんだ」

「お前は……ロベル爺さん」

 人々の視線は一気に、ロベルに向けられた。ロベルはしまった。と思った、がその時背後から助け船が加わる。

「お知り合いかのう?」

 村長が、聡明そうな瞳を細めて、ロベルの横に歩いてきた。

「いや……つい最近ある村であったものだ、悪い人間であるはずがない……」

「ふむ」

「どうか、釈明と罪の償いの機会をあたえてやってほしい」

「……なるほどのう」

 直ぐ傍で、子供のかけてくる声がして、その子供はセーゲルの肩にとびついた。

「ごめん!!お兄さん!!俺のせいで、俺があの守衛を助けてくれといったから……」

「ふぬう!?」

 村長は、かけてきた子供―エドの前に後ろにたちはだかる。エドが落ち着いて後ろからかかる声にふりかえると、まるで巨大な壁のように、彼を見下ろしていた。

「エド……その話、詳しく聞かせてもらわねばならんのう」

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