7話 師の教え
作業をしていたら空腹がのせいで腹が鳴り、あきれて見かねた少年が食事をごちそうしてくれた。洞窟は迷路のように見えるが、直ぐ傍に生活スペースらしきものがあり、そこで奇妙な食事をした。
「なあ、少年、確か子の傍に村があっただろう、あーなんていうんだ?その村」
「お兄さん、そんなにぼんやりした知識でここまできたの?」
「っせーなーちょっと天然ボケ入ってるだけだよ」
「……ニニ村だよ」
「で?なんでお前はこんなところに一人で……」
「……」
少年はずいぶん長く黙り込んでしまった。
「……すまねえなあ、いいたくないならいいんだ」
「父さんと母さんが死んでから、すべてが変わったんだ」
「ん?」
少年いわく、むかし英雄の手伝いをしていたという優秀な冒険者の両親がいたそうだが、事故でその両親を失って以来、身よりもなく、独りぼっちになった。それでも最初は村の人たちも優しかったが、あまりに少年がわんぱくで冒険者や英雄になりたいだのいいだしてから、あきれて構わなくなったのだという。少年は10代前半に見える、この年の子供を放っておく理由は、別の何かがあるとセーゲルは考えた。
「おし、食った食った、しょうがねーから最終手段といこう」
「何?」
セーゲルは立ち上がると、先ほどの魔導守衛の傍へ向かった。
「少年、離れてろ」
「エドだよ」
セーゲルは、静かにつぶやく。
「魔導誓約・火の魔弾!」
すると彼の手から火がほどばしり、守衛にむかった。一瞬、驚いてたじろいだ少年だったが、すぐジト目で彼をみつめた。
「……小さな火の玉だったね」
「いやいや!!手加減しただけだから!!」
焦りながら、守衛の様子を見に近づくセーゲル。
「それに……ホラ、何の変化もない、本当に試したいのはいくつかの回復魔法だ、時間に関する逆行回復魔法が一番だが……しかしものはためしだ」
セーゲルはまた距離をおいて片手で後ろにエドをおいはらう。
「魔導誓約・自然精霊の治癒!」
すると、みるみる損傷した箇所―傷やかすれた文字や、すり減った箇所が修復していく、だがそこで予想外の事がおきた。魔導守衛はたちあがり……、傍らにあった柄の長い斧をとりだし、それを前に突き出したかと思うと、ふりかぶり、セーゲルの前の地面につきさしたのだった。
「ウォオオオオ」
魔導守衛は、地響きにもにた雄たけびをあげた。
「まずい!!まさかこの呪文で復活するとは……」
「どうしよう……僕のせいで……」
慌てて動揺するエドの手をとり、セーゲルはいった。
「んな事は今はどうでもいい、ひとまず引くぞ!!」
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